※2023年3月現在
出典:外務省ホームページ
※2024年3月31日現在
出典:国際協力機構(JICA)
コメを主食とするところが日本と共通しているほか、マダガスカル人の性格や行動には日本人に似たところが多いという。派遣の歴史は長くないが、その存在感はすでに大きい。
お話を伺ったのは
PROFILE
マダガスカルアナラマンガ県出身。社会学部で地域開発学を学んだ後、教育支援NGOに参加。ボランティア教師として、英語やクリティカルシンキング(批判的思考)を教える。その後、同NGOにてプロジェクトマネージャーとして基礎教育事業に関わる。日本への興味などから、JICAプロジェクトで5年間、会計を担当。2022年から現職。
マダガスカルはアフリカ大陸の南東に位置し、世界で4番目に大きな島だ。8000万年以上前に他の大陸と切り離されたことから、独自の進化を遂げた生物が非常に多く、同国の動植物の80パーセントが、世界でここにしか生息していない「固有種」といわれる。
15世紀以降、ヨーロッパとの交易で栄えたが、1885年にフランスの植民地となり、1960年に独立した。協力隊の派遣開始は2002年と比較的新しく、現在は、「農業・農村開発」「保健」「教育」「青少年・人材育成」の4分野が中心だ。JICAマダガスカル事務所でボランティア事業を担当するアンドゥ・ラランブさんは「マダガスカルで協力隊のことはよく知られています。中でも教育と農村開発への期待と評価が高いです」と話す。
マダガスカルでは、教員が足りないこともあり、小学校では1クラスに60人から80人の児童がいる。資格がなくても研修だけで教員になることができるため、特に地方では教員が「最後の就職口」となっている。ひたすら覚えさせるだけの授業も多いという。
20メートルを超える高さになるほど大きなバオバブの木
「隊員たちは、ただ『2+2=4』と書くのではなく、最初に2つのリンゴの絵を見せて、続いてもう2つを見せて、合わせると4つになる、などと教えます。紙芝居や積み木で遊びながら学ぶこともあります。だから、子どもも理解しやすいのです」
隊員の活用した教材や実践の記録は、現地の教員たちの間でもしっかり引き継がれるという。
農村開発では、日本の戦後の経験も生かした「生活改善」が人気だ。石を並べただけのかまどの代わりに、内部に火と熱を閉じ込める「改良かまど」や、泥や草、木炭の粉などから作る「泥炭」の普及が進められている。「環境保護につながる上、農家の負担も減ります。泥炭を売れば収入も増えます」。
保健分野では、協力隊員が発案し、有名歌手との協力から生まれた「手洗いソング」が広く知られている。近年は、栄養分野の取り組みにも力が入れられている。
主食がコメという共通点に加え、「マダガスカル人と日本人は似ている」との声もある。「ものを配る時や部屋に入る時は、他人を優先し、自分は最後にします。控えめで、まじめですが、時間はあまり守りません(笑)」。
「他国に比べ発展が50年遅れている」といわれることもあるというが、成長の可能性は高い。自然に加え、石油やガス、鉱物資源もある。「若い人が多く、人口が増えている。農業ができる土地も多く、人材を育てられればきっと発展できます」。
アンドゥさんは、共通点が多いからこそ、隊員が日本の経験を伝えることも、日本人が現地で新しい生き方を体験することも貴重と言う。「お互いに尊敬の気持ちさえあれば、理解し合えると思います。片言でもマダガスカル語を話せば、きっと仲良くなれます」。
Text=三澤一孔 Edit=ホシカワミナコ 写真提供=JICAマダガスカル事務所、竹村祐哉さん アンドゥさん通訳=JICAマダガスカル事務所企画調査員(ボランティア事業) 小林ひろみさん