▶隊員時代から早めに就職活動している人もいて焦ります(コミュニティ開発/男性)
任期満了まで、残り1カ月を切りました。同期たちは3カ月くらい前から、帰国後に向けて転職エージェントに登録したり、企業にコンタクトを取ったりして、ほぼ就職が決まっている同期もいます。
自分はなんとなく国際協力の仕事かなと思ってはいるものの、実際何がしたいか、何ができるかわからず、動けていないため、心配です。
大学卒業後、大手生命保険会社に就職し、営業や人事を担当。2020年3月に協力隊活動を終え帰国。協力隊経験を生かしてタンザニアで仕事をしたいと、井﨑 奨さん(タンザニア/体育/2016年度3次隊)、三戸勇輝さん(タンザニア/コミュニティ開発/2016年度4次隊)と20年12月にWATATU株式会社を設立し、代表取締役に就任。タンザニアの農業事業のほか、日本の中小企業の海外進出支援や協力隊OVの就職支援などを展開する。
▶仕事を通じて自分が満たしたいことを考えてみましょう。
「国際協力の仕事かな」というのも周りの目を
気にした結果になっているかもしれません
「協力隊転職ナビ」へ頂く就職活動の相談事で多いのは、「何がしたいかわからない」「何ができるかわからない」「どういった業種の企業が自分を欲しいと思ってくれるかわからない」の三つです。
特に多いのが一つ目の「何がしたいかわからない」で、協力隊に新卒で参加した人からも、社会人経験を経て参加した人からも相談を受けます。
僕は「人生で唯一のやりたいことを見つけないといけないという幻想を捨てましょう。仕事という『手段』を通じて満たしたいニーズはなんなのか、『他人からの称賛』『同僚やお客さんとのつながり』『社会に貢献している感覚』など仕事を通じて得たいと思っているものはなんなのか、考えてみましょう」とアドバイスしています。
例えば、「途上国の女性の収入向上に貢献できる仕事をしたい」と考え、それをやっている団体にバックオフィス業務のポジションで入職したとします。組織としてはそれに取り組んでいても自分自身が「直接的な貢献感を得たい」というニーズを持っていると満たされないモヤモヤが続きます。「自分が仕事に何を求めているのか」「自分はどうすれば満たされるのか」を過去の経験などからできるだけ言語化することにより、より幅広い業界や職種の選択肢が見えてきます。
また漠然と「国際協力の仕事に就けたらいいかな」と思っているものの何も行動に移していない人には「待った!」と言いたい。本当にあなたは国際協力の仕事がしたいのでしょうか?
単純に「国際協力の世界に身を置くのはかっこいい」「同期もみんな国際協力の道に進むからなんとなく」「帰国後にまた一般企業に勤めるのは協力隊に行った意味がなかったような気がするから」などといった理由で具体的な行動に移していないのであれば、他人に言わされている状態と思っていいでしょう。
本当にやりたいと思っている人からは、「既にこれとこれを調べて動いてはいるんですが、この部分で詰まっています」といった具体的な相談が来ます。胸に手を当てて「他人を抜きにして、本当に国際協力がいいと思っているのか」を自問してみましょう。
SNSの中でも、インスタグラムやフェイスブックは自分のキラキラしたことを書く傾向が強いので、同期のやる気に満ちあふれた投稿や就職活動の様子を見て、気持ちが乱されたりすることもあるでしょう。『欲望の見つけ方 お金・恋愛・キャリア』(ルーク・バージス著、早川書房)には、自分が主体的に「これがしたい」と思うことの多くは人の影響を受けている、といった内容が書かれています。僕自身、自分を振り返る際に参考になりました。読書好きの人にはお薦めします。
本なんて読んでいる暇はない!という人も、「やりたいことを見つけないといけない」という幻想は捨てること。多くの人は、「唯一の」やりたいことなんてなくていいんです。「『現在の自分はこれに興味があるなとか、これやってるとちょっとハッピー』程度でいい」を、覚えておいてほしいと思います。
「何ができるか」「どんな業種に必要とされるか」に関しては、周囲に評価を聞いたほうが早いかもしれません。同期や先輩隊員といった日本人だけでなく、カウンターパートや同僚にも意見を聞いてみましょう。
「私にはこんなことできないけど、あなたはこれ得意よね」くらいで構わないので、言われたことのあるエピソードをなるべく挙げてみると、自分では意識していなかった強みが浮き出てきます。やりたいことは自分で完結しなければなりませんが、できることは比較論なので、自分ができると思っていないことでも、人にできると思われていれば「できる」としていいと思います。
最後に、協力隊経験者の「自分と圧倒的に違う考え方の人たちと生活を共にし、試行錯誤して活動を続けてきた点」「自分で考えて主体的に動ける点」が、帰国後の社会生活でも大きな強みになると僕は思っています。どのように働きたいか、何ができると思われているかを客観的に考えてみてください。
Edit・Text=ホシカワミナコ 写真提供=岡本龍太さん ※質問は現役隊員やOVから聞いた活動中の悩み