※2023年10月現在
出典:外務省ホームページ
※2024年4月30日現在
出典:国際協力機構(JICA)
35年間に及ぶ派遣で累計約470人と順調に絆をつないでいる。
防災、環境、格差是正を重点的にコロナ禍前の派遣人数へ回復を目指す。
お話を伺ったのは
PROFILE
JICAジャマイカ支所長。1985年、国際協力事業団に入団。研修事業部、無償資金協力調査部、スリランカ事務所、調達部、バングラデシュ事務所、人事部などを経て、南アジア部次長。その後、ネパール事務所長、パキスタン事務所長、JICA沖縄所長を歴任。2022年6月より現職。
1494年、ヨーロッパ人として初めてコロンブスがジャマイカに足を踏み入れた。16世紀以降、この国を支配してきたスペインやイギリスは西アフリカの人々を奴隷として連行し、過酷な労働に従事させてきた。幾多の反乱や奴隷制度廃止を経て、ジャマイカが独立を果たしたのは1962年だった。
協力隊の派遣は89年から始まる。当時の活動分野は、コンピュータ関連を含む教育文化部門をはじめ、保健衛生部門、福祉部門で活動に当たった。
2015年の「日・ジャマイカ・パートナーシップ」の強化に関する共同声明では、防災や省エネルギー・再生可能エネルギーに関する協力が強調され、その前後から防災や環境の隊員派遣が増えている。
JICAジャマイカ支所からは、ジャマイカの豊かな大自然を象徴するブルーマウンテン山脈が望める
JICAジャマイカ支所の河崎充良支所長は、「首相や大臣、一般の人の協力隊への評価は非常に高いです。大臣たちの経験から、地域の隊員たちの草の根の活動を直接目にしていたことも大きいようです」と話す。
河崎支所長は、ジャマイカでの活動では、人々の心の傷を理解し、価値観を尊重することが大切だと言う。
「300年にわたる奴隷制度や、プランテーションでの過酷な労働の結果、ジャマイカの人々には『自分のやるべきことは、ここまで』と限定し、それを超えることはやらない、という傾向が見られます。また、自立心が強く精神的にタフで、自分の考えをしっかり主張します」
大切なことは、日本の価値観に縛られず、ジャマイカ流の仕事の流儀をよく観察して動くこと。「相手に伝えただけで、受け入れてくれると考えないほうがいいです。カウンターパートや同僚とはコミュニケーションをしっかり取り、一緒に行動することが大事です。それでも困った時は、私たちに相談してください」。
大きな課題の一つが、治安だ。ギャング集団が無数にあり、それぞれの集団に不利益がもたらされるようなことがあると、報復に出る。その背景には貧困問題もある。農産物に恵まれ、飢えはないが、現金収入が得られる仕事は限られているため、ギャング集団から勧誘され、お金目当てに仲間に入る若者も少なくない。
ジャマイカ支所では、安全対策を第一に据えている。現地で安全対策アドバイザーを雇い、常に情報を集め、対応や対策を隊員に即時に知らせるなど、きめ細かくサポートしている。
「危険な区域は特定できるため、そこに立ち入らなければ、過度に不安になる必要はありません。ジャマイカの人は、気持ちは温かく助け合いの精神にあふれています。自由を大切にし、力強く生きている姿に学ぶことも多いでしょう。隊員として、ジャマイカのパワーを体験してほしいと思います」
Text=三澤一孔 写真提供=JICAジャマイカ支所