[特集]今に至るまでの道のりも聞きました!
第2回社会還元表彰受賞者の帰国後の活躍に学ぶ

地域活性化賞

浅野拳史さん
浅野拳史さん
ルワンダ/理科教育/2015年度1次隊・静岡県出身
株式会社マキノハラボ   代表取締役
YAMBI CONNECT LLC.CEO


外国人の子どもたちの学びの場から
ビジネス・遊びまで。廃校を楽しく利活用

初期支援教室に通う、小学校高学年~中学生の子どもたち

初期支援教室に通う、小学校高学年~中学生の子どもたち

   静岡県牧之原市で廃校になった旧片浜小学校を利活用する、「株式会社マキノハラボ」を経営しています。牧之原市と賃貸借契約を結び、施設活用事業、DX・スマート農業事業、宿泊・合宿・企業研修事業、教育事業(日本語・プログラミング)、まちづくり(イベント)事業を行っています。

   施設活用事業はシルバー人材センターや放課後等デイサービスの入居があり、ミーティングや習い事、社員研修などで年間約1万3,000人の利用があります。コロナ禍にコワーキングスペースや、トレーラーハウス(屋外サテライトオフィス)も造りました。

   DX・スマート農業事業では、地元の主力産業である緑茶の生産や輸出販売の際、衛星画像による生育診断やAIによるデータ統合分析、越境ECサイトでのオンライン商談といったスマート農業技術を導入し、作業の軽減、品質向上、輸出拡大につなげています。

スマート農業では、ドローンを使って画像を撮影し、緑茶の生育具合などを確認することも

スマート農業では、ドローンを使って画像を撮影し、緑茶の生育具合などを確認することも

   宿泊・合宿・企業研修事業では、教室を客室に、家庭科室や理科室を食事場所に改装することで、1グループ80人近くの団体でも対応可能です。グラウンドにはキャンプ場やプライベートサウナもあります。少年団や部活動の団体、大学サークル、コスプレイヤーグループ、家族連れなどの幅広いご利用があります。オリジナルコンテンツの企業研修は年間約5,500人の利用があります。

   教育事業では、市在住の外国にルーツを持つ小学生・中学生に向けた初期支援教室(小中学校に通う前に日本語や日本の文化を学ぶ最長半年間の教室)を行うほか、キャリアデザインスクールや、IoT指導者養成プログラムなどを開講。

   まちづくり事業では、音楽フェス、納涼祭、国際交流フットサルイベントなどを開催してきました。

   新卒で参加した協力隊ではルワンダ語を必死で学んで意思疎通を図りました。結果、友人ができ、「YAMBI CONNECT LLC.」の起業に至りました。ルワンダでのつながりがきっかけで、マキノハラボも手伝うようになりました。私は浜松市出身で、牧之原市とは縁もゆかりもありませんでした。どちらの会社も協力隊で学んだように、地域の方々と親しくなり、協力いただきながら事業を広げています。自然豊かな牧之原に遊びに、泊まりに来てください。心よりお待ちしております。

浅野さんの現在までの道のり

2015年7月~   新卒で協力隊に参加。ルワンダの小中学校で物理を教えることになったが、文系学部卒だったため苦労が多かった。

2017年   任期終了の約3カ月前、ルワンダ人の友人から「一緒に仕事をしよう」と誘われ、ルワンダでスタディーツアーやビジネスツアー、現地アテンドサポートなどを行うYAMBI CONNECT LLC.を起業。「もともと浪人したり大学を1年休学しアフリカを旅したりしていたので、協力隊後に普通に就職したくないという気持ちもありました」。その後、ルワンダで知り合った日本人研究者に誘われ、ルワンダで人工衛星打ち上げに関連するICT技術の実証にも並行して携わる。

2019年   先の研究者が18年2月に設立したマキノハラボに誘われ、スマート農業などの知見をルワンダに還元したいという思いもあり、YAMBI CONNECT LLC.を経営する傍ら参画。

2022年   マキノハラボ創業者から経営を引き継ぎ、2社の経営者に。また、東京農業大学大学院に進学し、スマート農業の研究に取り組む。


  

【浅野さんの仕事術に学ぶ】

株式会社マキノハラボに入社する前に、YAMBI CONNECT LLC.を立ち上げていた浅野さん。現在は二つの会社の経営者として、営利を求めながら多岐にわたる事業を行っています。浅野さんが仕事をする上で気をつけていることや経営のコツを聞きました。

株式会社マキノハラボ、AMBI CONNECT LLC.


Point1   事業は成功している他社をまねてアレンジ

マキノハラボでは複数事業があり、それぞれリーダーを立てています。スマート農業以外はどれもそこまで難しい事業ではないので、まずはその事業で成功している会社の一流のサービスを体験してみたりしながら、どのように行っているかを調べます。それを基に自分たちの現場にフィットする形を模索していきます。

Point2   社員間の人間関係はフラットに

仕事を進める上でのコミュニケーションコストは大きく、「あの人面倒くさいからどうやって相談しよう」などと周囲が気を使いながら仕事をする時間は無駄です。だから二つの会社の人間関係はフラットに、皆が自分の考えを言い合える環境づくりを心がけています。それによりPDCAサイクルがうまく回り、失敗してもすぐに再チャレンジができるようになりました。

Point3   2~3年で形にする

マキノハラボでは、「楽しく、かつビジネスになりそう」という視点で事業を展開しているので、新規事業を始める1年目はいろいろな方法を試します。1年やってみると何がダメでうまくいっていないかが大抵わかります。社員には2~3年目でその事業の専門業者になれるように目指そうと伝えています。

Point4   さまざまな方法でコスト削減

人件費を削減するためにも、マキノハラボでは専門業者に頼まずに、アルバイトやパートを雇って経費を抑えています。例えば、1日に80人近くのお客様を迎えることもある宿泊所の布団のシーツの取り換えや洗濯、客室の掃除など、ホテルなら専門業者に委託するところを、私たちは地元の方にアルバイトやパートで入ってもらいます。

また、電灯はすべて蛍光灯からLEDにしつつ、スマートスイッチを整備し、館内照明を一括管理できるようにする、入館者が来た時に受付に人がいなくても呼び出しができるようなセンサーをつける、宿泊客の夕食は食材だけ用意し、客側でバーベキューを自由にしてもらうことで対応する、キャンプ用品はテントなどは持参してもらい、足りないキャンプ用品の貸し出しは無人の有料貸し出しで対応するなど、IoTと原始的な方法の両方を導入しています。

Point5   会社の強みを生かして展開を広げる

スマート農業など、深堀りされていないテーマの事業にもマキノハラボでは力を入れて地域活性化していき、学んだ知識やノウハウや人脈を、ルワンダでYAMBI CONNECTの事業に加えたり、他の地域にも活用できたらと思っています。

マキノハラボは「非日常で元気になってもらう」をテーマにしています。まずはこの会社で働いている人たちが元気になって、我々が中心となり、深堀りされていないテーマのノウハウを蓄積して強みとし、世界に波及していくことを目指しています。


Edit&Text&Photo=ホシカワミナコ   Photo=阿部純一(本誌)   写真提供=浅野拳史さん

知られざるストーリー