※2024年5月現在
出典:外務省ホームページ
※2024年6月30日現在
出典:国際協力機構(JICA)
地域格差の解消からスポーツ強化まで、幅広い分野で協力隊員が活躍している。
お話を伺ったのは
PROFILE
ブータン/電話交換機/1991年度3次隊・福岡県出身
JICAボツワナ支所・企画調査員(ボランティア事業)。工業高校卒業後、通信会社に勤務。JICA海外協力隊に現職参加。復職後、大学に進学。2001年以降、JICAのネパール、ウズベキスタン、カンボジア、エチオピア、タンザニアの各事務所で企画調査員(ボランティア事業)として勤務。NPO九州海外協力協会事務局長を経て、21年より現職。
アフリカ大陸南部に位置するボツワナは、ナミビア、ジンバブエ、南アフリカ共和国に囲まれた内陸国で、中央部や西部の広い範囲が砂漠地帯になっている。
1966年、イギリスからの独立を果たした翌年にダイヤモンドが、後に銅、ニッケルといった鉱物資源が発見され、その収益を教育や医療、社会インフラなどの整備に活用して、成長を遂げてきた。JICAボツワナ支所の馬田英樹さんは、「アフリカの中でも経済的に発展した国で、高中所得国の仲間入りを果たしています」と話す。
首都ハボローネ中心部のビルから市街を望む。左側奥の低い山の向こう側は南アフリカ共和国
「国の資金が使われる公共事業が経済をけん引している印象ですが、一方で若い人を中心に失業率は高い水準にあります」
あまり雇用が広がらない資源産業に依存する経済から脱却することを目的に、産業の多角化を担う民間セクターや、そこで働く人材の育成に国は力を入れている。
そのため、協力隊への要請は、コンピュータ技術や自動車整備、木工などへのニーズが多い。生産性・品質向上を進める「カイゼン」についても、シニア案件の隊員が企業コンサルティングなどの活動を支援している。
「都市と地方の格差も問題です。都市では物があふれ、人々の生活が豊かな一方、一歩郊外に出ると、電気や水道が不安定なところもあります」
他にも、貧困削減に取り組むコミュニティ開発隊員や、各種の教育系隊員が活躍している。スポーツ分野では、柔道やソフトボールの派遣が継続されており、こうした種目ではアフリカ内で強豪の地位を保っている。
トゥリ動物保護区にはゾウのほか数多くの野生動物が生息しており、ボツワナ観光の人気エリア
「ボツワナの魅力の一つは、人々が穏やかなところです。シャイな面があり、少し日本人にも似ていると思います」と馬田さん。「この国に来て感心したのが車の運転です。信号機が壊れている交差点でも、譲り合って一台一台、順番に入っていく。他の国ではあまり見られない、素晴らしいマナーです」。
世界最大級の内陸湿地であるオカバンゴ・デルタやマカディカディ塩湖などの自然環境を有するほか、ゾウの生息数が世界一と野生動物の宝庫でもあり、観光分野のポテンシャルも高い。
ボツワナは降水量が非常に少なく、干ばつに見舞われることもあり、水がとても貴重だ。「国旗のブルーは命を支える雨と水を表し、通貨単位の『プーラ』は、現地のツワナ語で水を意味しています。隊員は人々が水を大切にする意識を理解しておいたほうがよいでしょう」。
「活動の上で大切なのが、挨拶です。会ったら、必ず挨拶の言葉をかけて握手、そして『最近はどう?家族は元気?』と話すなど、時間をかけて丁寧にやります。ポイントはツワナ語で話すこと。簡単な言葉だけでも、雰囲気が和らぎます。身近な人たちと挨拶を入り口にして信頼関係を築いてほしいと思います」
Text=三澤一孔 写真提供=馬田英樹さん