山口 哲弘さん
山口 哲弘さん

ラオス/理科教育/
2014年度1次隊・神奈川県出身

就職先 株式会社BYD
事業概要 学校向け学習サポート事業として、中学校・高校への出張授業、オンライン授業などを通じて、総合探求学習やキャリア教育の出前授業を提供している。
略歴 1987年    神奈川県生まれ
2010年3月    大学卒業
2010年4月~13年3月    神奈川県内の私立高校で非常勤講師として勤務
2014年7月    協力隊員としてラオスに赴任
2016年6月    帰国
2016年12月~19年5月    株式会社栄光に勤務
2019年9月~21年3月    三重県内の公立中学校で講師(非常勤含む)として勤務
2021年4月~24年3月    三重県内の公立中学校で教員として勤務
2024年5月~    株式会社BYDに業務委託として勤務

協力隊で教材作りに興味を持ち
教員から教材デザイナーへ転身

配属先の教員養成短大の学生たちに理科実験の方法を指導する山口さん

   大学時代、社会の役に立ちながら自分の価値観を広げたいと、協力隊に応募した山口哲弘さん。塾講師で経験した理科教育を選んだが、結果は不合格。大学卒業後、理科の非常勤講師として経験を積み、2度目の応募で合格しラオスへ赴任した。

   配属先の教員養成短期大学では、主に化学の実験をサポートした。学生から計算が苦手だという相談を受けて数学教室を開いたり、教育実習先に理科実験の道具がそろっていないという話を聞き、身近なものを使った実験方法を紹介するために理科実験クラブを始めたりと、活動を模索していった。また、他の理科教育隊員と協力して実験動画を制作し配信すると、カウンターパートが興味を持ち、一緒に動画を作りアップする活動も始めた。

「授業で行った実験を、教員が動画にまとめて学生に見せることで、学生にとっては復習用のツールとして活用できる上、教員には指導スキルのアップにつながると評価してもらい嬉しかったです」

   帰国後は、教師以外の社会経験もしておきたいと、まずは一般企業への就職を決めた。その後、結婚を機に三重県に移住すると中学校の教師となった。

「協力隊時代から教材を考えるのが楽しくなり、勤務していた中学校でも理科新聞や動画を作りました。特に理科新聞の評判がよく、新聞の見せ方やデザインに興味を持ち、ウェブスクールでデザインの勉強も始めました。そのうち、デザインを仕事にしたい気持ちが強くなっていきました」

   そして生徒が卒業するタイミングで転職を決めたが、70社以上にエントリーしても半分以上は返事すら来なかった。正社員での採用は厳しいと考え、業務委託を募集している会社も探した。そこで見つけたのが、出張講座の教材のデザイナーを募集していた株式会社BYDだった。

「元教員で、かつデザインをしたい自分のための仕事だと思いました。業務委託で週2 ~3日勤務という条件でしたが、それでも構わないと応募したところ、結果的に週5日で働くことになりました」

   現在は東京に単身赴任中で、月1回、三重県に帰る生活をしている山口さん。

「将来は起業をしたいという夢があります。教育とデザインをかけ合わせて自分に何ができるのか考えながら、将来につなげていきたいと思っています」

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株式会社栄光2016年12月~19年5月

協力隊で多彩な経歴を持つ仲間に刺激を受け、帰国後は一般企業への就職を目指して転職エージェントに登録しました。幅広い業種の企業を紹介されましたが、私のキャリアを高く評価してくれたことから、株式会社栄光に入社しました。同社では小学生向け理科実験教室の室長として、運営を担当すると共に講師も務めました。

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公立中学校2019年9月~24年3月

臨時講師として三重県の公立中学校で働くことになりました。その後、三重県の教員採用試験に合格し、2021年4月からは別の公立中学校に正規教員として勤務。コロナ禍で対面授業が減った時は、協力隊の経験を生かして理科実験の動画を作って生徒に見せたり、授業で伝え切れないことを理科新聞にして配ったりしました。

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転職活動2023年10月~

転職活動で求人サイトの「Wantedly」を利用しました。特に力を入れたのはプロフィール欄の作成で、自分の実績をできるだけ数値化、具体化するように意識しました。当時36歳でデザインという未経験分野に転職するのは難しいと思っていました。しかもデザイン関係の求人は通勤圏内だと選択肢が少なく、東京などの都市部に多くの求人があったため、将来的には三重県に戻りリモートができる会社に、11月くらいからエントリーしていきました。

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面談2024年4月

株式会社BYDからエントリーの翌日に返事が届き、数日後に人事担当の方とオンラインでカジュアル面談、その1週間後に東京の事務所で社長面談を受けました。これまでのキャリアのほか、転職の経緯や理由について聞かれました。社長面談では、教材やチラシなどを例に、「こういうデザインはできるか」など、私ができることも確認されました。

採用決定2024年4月

現在の仕事

弊社では学校の要望に応じ、中学校・高校などに出前講座をしています。私の担当は、主に出前講座の教材作りです。どうしたら生徒が見やすく、楽しめるのかを考えながら、デザインやコンテンツを考えています。教材作りだけでなく、講師やアシスタントとして学校に行って教えることもあります。学校との打ち合わせもありますが、学校現場や教員の考え方を知っていることは、元教員の私の強みでもあると考えています。他に、CSRの一環として学校向けに授業を行いたい企業に対し、授業作りのコンサルティングも手がけています。

山口哲弘さん
東京で行われた教育分野の展示会にブースを出展した株式会社BYDのスタッフの方々

後輩へメッセージ

私自身がそうでしたが、協力隊でいろいろな出会いを経験すると自分の可能性が広がったように感じ、帰国後にやりたいことがたくさん出てきます。でも、実際は、自分が思い描いたとおりにいかないことが多々あります。そんな時は焦って決めるのではなく、いったん落ち着いて、自分を見つめ直す時間をつくるのも大切でしょう。就職してから〝違う〟と感じたら転職できる時代だと思いますが、ただ、そこでスキルや経験を自分のものにして、次につなげていくことが大切だと感じています。

JICA 海外協力隊ウェブサイト 「進路開拓支援のご案内」

https://www.jica.go.jp/volunteer/obog/career_support/index.html

JICA 海外協力隊ウェブサイト

Text=油科真弓 写真提供=山口哲弘さん