
エクアドル
エクアドル
マーケティング/2022年度7次隊・茨城県出身
首都から約180キロ離れたパタテ市役所に赴任して、主に農業生産者の市場競争力強化を目指して活動しています。パタテはミカンやモモ、トウモロコシなど、さまざまな果物や野菜の産地ですが、生産者たちは従来の栽培技術や販売方法にとどまっていて、厳しさを増す市場競争についていくことが難しくなってきています。今、私が力を入れているのが、「生産物のIDカード」の導入です。大きめのカードに、生産物の種類と生産者の名前・顔写真、農場名や栽培地域、収穫日を掲載し、さらに詳しい情報もQRコードから見ることができる仕組みです。これを商品の袋やパッケージに貼りつけることで、お客さんからの信用を得て、安心して食べてもらえるようにしたいのです。生産者にもIT活用を通じて商習慣を見直す機会にしてほしいと思っています。支援している方と町で会うと遠くからでも手を振ってくれたり、収穫した果物を分けてくれたりするので、自分の活動を喜んでくれているのだと嬉しく思います。
パタテはアンデス山脈を構成するトゥングラワ火山の麓で、年中温暖な気候です。半径500メートルほどの小さな町のため、ほとんどの住民同士が知り合いで、あちこちで挨拶が飛び交っています。私は交流を広げるため、知らない人でもなるべく挨拶するようにしていて、出歩くとたいてい何回かは「スズキ、元気かい?」と声をかけてくれます。農家の中庭に洗い場がある風景や、屋外のかまどで料理をしている様子は、私が幼かった頃の60年前の日本に似ているところもあると思います。
「エンセボジャード」というツナが入ったタマネギベースのスープや、「カルド・デ・31」という家畜の内臓を煮込んだスープが定番で、私も週に1、2回は食べています。実は現地の医師から昼食をきちんと取るように指導されたので、昼は職場近くのレストランで肉料理とスープのセットを食べています。自炊もしていて、最近は地元の料理をまねて牛や豚の骨つき肉と野菜を煮込んだスープなどを作っています。
建物は大家さんの家に隣接した平屋で、共有の中庭があります。間取りはワンルームで、キッチンとシャワー、トイレがあります。冷蔵庫は元々設置されていて、電子レンジとミキサーは購入しました。パタテは果物が豊富でジュースにして飲む習慣があり、私もミキサーでジュースを作っています。大家さんから畑で採れたミカンやアボカドのほか、トウモロコシやジャガイモ、軽食の差し入れを頂くことがあります。私もお礼に自分で作った豚の角煮などの料理をあげたりしています。
写真提供=鈴木善之さん Text=阿部純一(本誌)