浅井恵子さん

配属先の同僚と共に
ランチ後の体操を続けています

浅井恵子さん

フィジー/栄養士/2019年度1次隊、2023年度7次隊・山形県出身

JICA Volunteers’ Reports
郊外の村で簡単な運動を紹介する浅井さん。医療へのアクセスの悪い島しょ部も多く、医療チームが出向いて健診や啓発活動を行うこともある

   フィジー第2の都市ラウトカにある糖尿病ハブセンターに配属され、主として糖尿病の患者やⅡ型糖尿病予備軍の方に栄養指導を行っています。フィジーは糖尿病などの生活習慣病に起因する心疾患が死亡原因の第1位と高く、国を挙げて生活習慣病予防に取り組んでいるところです。

   私は4月から、職場で医師や看護師などの同僚たちとランチ後に2分間の体操を行っています。きっかけは、自分の血糖値が少し高めだと判明したこと。糖尿病家系のため気をつけて生活していたつもりでしたが、予備軍に入ってしまいました。しかし、予備軍ならば、生活習慣を変えることで改善を図れます。特に食後の運動は血糖値の急上昇を防いでインスリンの過剰分泌を抑える効果があり、予備軍からⅡ型糖尿病への移行や病状の進行の予防になるとされています。「もし私自身が血糖値を改善できれば、説得力を持って患者にも説明できる」とも思い、ランチ後に短時間の体操を始めようと決めたのです。

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ランチ後に体を動かす同僚たち。「看護師の制服はスカートタイプなので、スカートのままでもできる簡単な動きの体操を選んでいます」

   ただ、飽き性でめんどくさがりな私にとって、継続のためには「簡単」「準備なし」「きつくない」の3要素がとても重要。YouTubeで「2分間エクササイズ」などの言葉で検索し、いくつかの動画を選んで体操を始めました。この取り組みに職場の同僚たちも誘い、スマートフォンで動画を映しながら、途中に日本語の説明が入った時には私が簡単に英訳したりして体を動かしています。

   同僚たちは最初だけノリノリでも、そのうちに飽きてしまうのではないかと思っていたのですが、着替えなどをせずに短時間で簡単にできる手軽さがいいようで、気負いなく続けられています。時には同僚から「エクササイズやる?」と声をかけてくるようになり、研修で配属先に来た看護学生を誘ってくれることも。さらに、学生に食後の短い運動でも血糖値上昇を抑えられることを教えたり、患者に対して「食後すぐに寝ないで、家事でもいいからちょっと体を動かしてね」と以前より丁寧にアドバイスするようになったりと、嬉しい変化が起きています。

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浅井さんの配属先での主な活動は、糖尿病患者への健康・栄養指導。「生活習慣の改善は難しいですが、話を聞いて、一緒にできることを考えていくのは楽しいです」

   何よりも、自分自身がⅡ型糖尿病の予備軍だとはっきり意識したことで、より患者たちに寄り添えるようになった気がします。ランチ後の体操を始めてから2カ月後には私の血糖値は正常範囲内になりましたが、患者によっては食生活の見直し、運動、服薬調整をしても、なかなか血糖値が安定しないこともあります。そんな人たちが自暴自棄になったりせず、希望を持って生活をマネジメントしていくためにはどのようなサポートが大切なのか、目の前の患者の話にじっくりと耳を傾け、同僚の医師や看護師と相談しながら、柔軟に考えていきたいと思っています。

Text =工藤美和 写真提供=浅井恵子さん