
落ちた果実を使って堆肥を作ろう!
農業指導のベテランである里見洋司さんから、現地ならではの堆肥の作り方を教わりました。農業系の隊員でなくても、家庭菜園や学校菜園作りに取り組む方がいると思います。堆肥は土を植物の育成に適した状態に改善する菜園作りに欠かせない素材です。ぜひ参考にしてください。
農業指導のベテランである里見洋司さんから、現地ならではの堆肥の作り方を教わりました。農業系の隊員でなくても、家庭菜園や学校菜園作りに取り組む方がいると思います。堆肥は土を植物の育成に適した状態に改善する菜園作りに欠かせない素材です。ぜひ参考にしてください。
タイ/家畜飼育/1985年度3次隊、SV/トルコ/野菜栽培/2014年度4次隊、セントルシア/野菜栽培/2023年度1次隊・埼玉県出身
東京農業大学を卒業し、農業改良普及員を34年間務めた。その間、自身の技術で途上国に貢献したいと休職し、協力隊に参加してタイで活動。帰国後は、埼玉県農業大学校において指導をした。また、放送大学大学院にて農業指導に関する論文を作成した。退職後、JICAシニア海外ボランティアとしてトルコで活動後、冷凍食品会社に勤務しベトナムで野菜生産を指導。現在はセントルシアの中等学校で農業コースの生徒を指導している。
土に堆肥を混ぜることで、植物の成長を助ける微生物を増やし、分解された繊維が土をやわらかくすると同時に酸素を保つ。効果は施用ごとに蓄積する。堆肥自体には肥料分は少ないため、一緒に牛ふんや化学肥料も混ぜるとよいが、化学肥料だけを与え続けると土が硬くなってしまうため、注意が必要。
※上記は参考分量。ただし、少量では発酵が進まない可能性があります。
3種類の材料に水をかけながらよく混ぜる。レーキ(鉄の歯がくし状に並んだ農具)とスコップを使うと混ぜやすい。堆肥を作る場所は屋根つきの堆肥舎が理想的だが、ない場合は暗い色の工事用シートなどをかぶせて雨と日差しよけにする。
最初の2 ~ 3日は毎日観察して堆肥の温度を温度計で測る。発酵が始まると温度が上がり50℃以上になる。発酵すると微生物の働きで雑草の繊維が分解され、植物の成長を助ける細菌が増える。一方で、雑草の種や病気の原因になる菌は高い温度で死滅する。
堆肥ができるまでは“湿度”に注意する。目安は、材料を手で握り締めると水が垂れずに固まり、塊を指で軽く押すと崩れるくらい。湿度が高い時は乾燥した雑草を加え、乾燥していたら水を加える。1週間に1回は外側の乾燥した部分と中心部を入れ替えるように混ぜて微生物に酸素を送る。
ここに注意! 水分が多過ぎたり、乾燥し過ぎたりすると、微生物の活動が止まってしまう。そのため大雨や長雨があったらすぐに堆肥の状態を確かめ、対処する。逆に空気が乾燥している地域では水分が無くならないように注意する。
家畜のふんなどの肥料分が残った状態で堆肥を使用するには、3カ月程度経った時点で使用するとよい。
小さな菜園を作る場合、見落としがちなのが、雑草駆除です。特に暑くて雨が多い国では、雑草を放っておくと、花が咲き種が落ちて、あっという間に畑が雑草に覆い尽くされてしまいます。たいへんですが、初めに徹底的に雑草を抜きましょう。それでもまた生えてくるので、除草を地道に繰り返して、雑草が少ない畑にしていくことが基本です。ちなみに、除草剤では根が残るため、根本的な解決にはなりません。
菜園の維持で失敗しがちなことが、排水不良により野菜が浸水してしまい、酸素不足や根腐れを起こすことです。暑い国では頻繁に水やりを行いますが、そこに大雨が降ると、あっという間に野菜が浸水してしまいます。そのため、畑には排水用の通路を造っておきましょう。排水路はきちんと造らないと、逆に水が畑にたまってしまうので、現地の傾斜などを利用して、確実に畑の外に排水するように設計することが大事です。
Text=阿部純一(本誌) 写真提供=里見洋司さん