阪上英祐さん
阪上英祐さん

ルワンダ/コミュニティ開発/2019年度2次隊・東京都出身

就職先 一般財団法人 日本民間公益活動連携機構(JANPIA)
事業概要 休眠預金などを活用し、資金分配団体を通じて社会的弱者への支援や地域活性化に取り組む実行団体に資金の助成・出資を行っている。
略歴 1987年    東京都生まれ
2010年3月    大学卒業
2010年4月~11年9月    家業(和菓子店)の手伝い
2012年7月~17年3月    手帳メーカーに勤務
2017年9月~18年8月    アメリカに語学留学
2020年1月    協力隊員としてルワンダに赴任
2020年3月    コロナ禍のため一時帰国
2020年9月~21年3月    日本民間公益活動連携機構でアルバイト
2021年4月~22年2月    ルワンダに再赴任して活動
2022年4月    日本民間公益活動連携機構に入構

協力隊経験を生かしながら
社会課題の解決に取り組む団体を支援

就職ストーリー
手工芸品制作を行う協同組合で在庫管理に関するワークショップを実施した際の写真。内戦によって心身に障害を負った方も多く含まれているが、「子どもが何人もいるお母さんたちが頑張って制作に取り組んでいました」

   阪上英祐さんは大学生時代、サークル活動で国際協力を行うNPO法人に所属し、東ティモールで手工芸品の制作支援を行うプロジェクトに関わっていた。JICAの草の根技術協力事業の委託を受けた活動で、長期休暇には現地を訪れ住民にヒアリングを行うこともあった。卒業後は一般企業に就職したものの、もう一度国際協力に携わりたいという思いが次第に強くなり、協力隊に応募した。

   ルワンダでは、1990年代の内戦で障害を負った人たちへの自立支援が社会的な課題となっている。首都キガリから約100km離れたムサンゼ郡庁社会開発課に赴任した阪上さんへの要請は、手工芸品制作や農業などを行う障害者の協同組合が抱える課題を調査し、運営改善のための支援を行うことだった。郡内に30ある組合への巡回を始めたが、わずか2カ月後に新型コロナウイルス感染症拡大のため一斉帰国となった。

   再派遣は1年後で、再度、各組合を巡回することから始めた。しかし、1カ月半のロックダウンもあり、活動は思うように進められなかった。活動期間が短縮された状況だからこそ、阪上さんは一つひとつの機会を大事にするように心がけたという。

「配属先の職員と会える時には積極的に交流し、短時間でも一緒に仕事をしている意識を持ってもらいました。その結果、巡回先に車で送ってくれたり、活動にも良い影響があったと思います」

   任期終了後は、一時帰国中にアルバイトをしていた日本民間公益活動連携機構(JANPIA)に入構した。派遣中に正職員としての入職を打診されたという。

「国際協力の仕事に就きたい気持ちもあり、企画調査員[ボランティア事業](以下、VC)にJICA関連の仕事の紹介もいただきましたが、日本の社会課題解決の仕組み作りに携われるJANPIAに魅力を感じました」

   阪上さんは、JANPIAでの仕事は、協力隊活動との共通点もあるという。

「さまざまな地域や分野で活動する団体と一緒に仕事をしていますが、団体の目的やニーズを理解し、職員の方々とコミュニケーションを図り、アドバイスも行っていく今の仕事は、外国人として現場に入る協力隊の活動と似ていると感じています。協力隊の経験を生かしながら、社会課題の解決に取り組んでいきたいです」

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新型コロナウイルスによる一斉帰国2020年3月

再派遣まで待機することを選び、アルバイトをすることにしました。その際、再派遣後の活動に生かせるような仕事をJICAの「PARTNER」で探すとよい、というVCからのアドバイスで見つけたのがJANPIAです。国内で社会課題の解決に取り組む団体を対象に、休眠預金の活用を通じて支援していて、支援先には障害者支援団体もあることから、そうした事例を知ることで、再派遣後の活動に役立てられるのではないかと思いました。提出書類は履歴書のみで、オンライン面接で総務部長と話し、協力隊参加の理由や活動内容などを、画像も共有しながら説明しました。また、再派遣が決まったらルワンダに戻る意思も伝えました。

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日本民間公益活動連携機構でアルバイト2020年9月~21年3月

アルバイトとしての業務は、機構の資金管理のシステム構築や、資金の支援をしている団体向けの研修運営のサポートです。同機構にも、支援先の団体にも、協力隊OVがいて身近に感じました。上下関係がフラットな職場で、アルバイトですが社会課題に取り組む仲間として見てくれましたし、私から職員に提案することもあるなど、自発的に働けていた点は評価されていたのかと思います。

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ルワンダに再派遣2021年4月~22年2月

途中だった障害者協同組合の課題調査をやり直すところから始めました。感染者急増でロックダウンとなり約1カ月間、外出が禁止されるなど、なかなか思うようには活動ができませんでしたが、活動内容をなるべくデータとして残して、次の隊員や現地に託すことに専念しました。

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日本民間公益活動連携機構の面接2022年2月

JANPIAからルワンダでの活動中にも、帰国後に職員として復帰しないかと打診があり、その段階でほぼ気持ちは固まっていました。履歴書と職務経歴書を提出し、専務理事と総務部長と面接しました。再派遣後の隊員活動を中心に説明し、活動がコロナ禍によって困難続きだったことも話し、正職員として働きたい気持ちを伝えました。

入構2022年4月

現在の仕事

休眠預金の活用は、JANPIAが資金分配団体に資金を提供し、資金分配団体がさらに各実行団体に資金提供し支援する三層構造になっていて、私たちは資金分配団体の事業を伴走支援・監督しています。具体的には助成金の精算管理や実行団体の現場に同行して採択事業の進捗を視察したり、評価報告書に基づいて事業改善への助言をしたりしています。また、資金分配団体向けの研修も行っています。私は現在、地域の子ども・若者支援、外国ルーツの青少年支援、依存症患者など要保護者の更生支援などに取り組んでいるいくつかの資金分配団体を担当している他、研修の企画・運営などをしています。

就職ストーリー
阪上さんが担当している支援先の一つ、不登校の子どもたちへの学習支援などを行っている滋賀県内のフリースクール団体にて、団体職員と資金分配団体の方々との写真

後輩へメッセージ

現役隊員の皆さんには、今の時間を楽しんでほしいと思います。見るもの、触れるもの、話し合ったこと、出会った人すべてが、その後の人生で役に立つはずです。私は今、更生保護関係の団体とも仕事をしていますが、ルワンダで罪を犯して社会復帰を目指す人々と活動してきた経験が生きています。進路に悩んでいる人には、選択肢の幅を広く持ってほしいです。私自身、協力隊で経験を積み、国際協力分野で働くことを考えていましたが、国内の社会課題に取り組む中で、日本も世界の一地域であり、世界各国が抱える課題とのボーダーはなくなりつつあると感じています。どんな仕事も、どこかで世界とつながっているはずです。

JICA 海外協力隊ウェブサイト 「進路開拓支援のご案内」

https://www.jica.go.jp/volunteer/obog/career_support/index.html

JICA 海外協力隊ウェブサイト

Text=油科真弓 写真提供=阪上英祐さん