菊地直樹さん

ボリビア/小学校教育/2014年度1次隊・福島県出身

イベント大好きなボリビアの学校現場
準備してくれていたのは…?

   私が赴任していたボリビアの首都ラパスは標高3,600mを超える高地で、住んでいる人たちは一般的な中南米の人々のイメージに比べておとなしい山の民といった雰囲気があります。とはいえ、やはりラテンの国だけあって、みんなイベントの類が大好き。私の配属先の小学校でも、劇やダンス発表会、美術展といった催しがしょっちゅう行われていました。

   ただ、私が不思議に思っていたのは、一体誰が準備しているのかということ。何しろ、授業中や休み時間に何かをしている様子はありませんし、イベント当日は定刻にさえ始まらず、先生の姿も見当たらなかったりします。それなのに、いつの間にか会場にそろっている垂れ幕、衣装、展示物など…。

   実はこれ、生徒の家族が自主的に集まり、直前に一生懸命準備してくれているのだと後にわかりました。わが子を思う保護者たちが学校のイベントを一緒になって支える熱意には驚かされます。

   保護者と先生の関係性も印象的で、例えば担任の先生の誕生日には、授業中の教室に保護者らが乱入(!)。サプライズケーキもあり、授業がたちまち誕生会になるのです。主役の先生もあらかじめ察しているようで、大げさに驚いたりするリアクションがあまりにわざとらしく、はたから見るとこっけいで笑ってしまいました。

   そのように誰もが先生や学校のことを気にかけ、協力と感謝を惜しまないのは、ボリビアの学校が、保護者や地域と共にある存在だからなのでしょう。昨今、日本では失われつつあるものを、派遣国の社会で見たような気がします。

あの日の、地球の、あの場所で。

Illustration=牧野良幸 Text=飯渕一樹(本誌)