JOCV BOOKs 協力隊経験者による本
OVが執筆、登場する本は、派遣中の体験談や、その後の人生のエピソードが詰まった貴重な情報源。2023年から24年にかけて出版された3冊をご紹介します。
OVが執筆、登場する本は、派遣中の体験談や、その後の人生のエピソードが詰まった貴重な情報源。2023年から24年にかけて出版された3冊をご紹介します。
JICA海外協力隊から社会起業家へ
共感で社会を変える
GLOCAL INNOVATORs
JICA青年海外協力隊事務局長
橘 秀治〈インドネシア/市場調査/1996(平成8)年度3次隊〉
大学卒業後、金融機関勤務を経て、1997年に青年海外協力隊に参加。市場調査の職種でインドネシアの南スラウェシ州バル県の5つの村の総合開発に取り組む。99年国際協力事業団(現JICA)入構。米国事務所次長、総務部審議役、企画部イノベーション・SDGs推進室長などを経て、2022年12月より現職。
JICA海外協力隊員として海外経験を積み、帰国後は地域の視点も持ちながら「グローバル」×「ローカル」で社会課題に挑む協力隊OVたちの取り組みを紹介する本書。1998年度から2017年度まで、派遣時期も職種もさまざまな7人が登場する。
テクノロジーを生かして開発途上国の課題に挑むケースや、日本で誰もが暮らしやすい社会づくりを目指すケース、農業と国際協力を結びつけて地域活性化に寄与するケースなど、各自の活動内容は多岐にわたる。派遣を経て取り組みを始めた経緯から、現在の活動の様子、共に活動する関係者のコメントといったリアルな実践ストーリーは、帰国後の社会還元のヒントを得たい人にも、これから協力隊参加を考えている人にも参考となるはずだ。
図書館員のための
「やさしい日本語」
[共著者の中のOV]
新居みどりさん〈ルーマニア/青少年活動/1998(平成10)年度3次隊・京都府出身〉
1999年4月、青年海外協力隊員としてルーマニアへ赴任。2001年4月の帰国後、早稲田大学・同大学院で多文化共生について学ぶ。東京外国語大学多言語・多文化教育研究センター(現多言語多文化共生センター)のコーディネーターを経て、11年にNPO法人国際活動市民中心(CINGA)に入職。各プロジェクトのコーディネーターを統括する立場で活躍している。
普段使っている日本語を、外国人にもわかりやすいよう文法や語彙などに配慮した「やさしい日本語」。近年は在留外国人の増加に伴って、公共機関などでも導入が進んできている。本書は図書館で働く人に向けた切り口で、「外国人住民の人口状況」や「外国人に対する図書館の役割」といった基本情報から、「外国人に向けた言葉選びの注意点」「やさしい日本語で物事を伝える流れ」といった内容まで、実際の図書館業務を例に出しながら簡潔に説明している。具体的なケーススタディなどがわかりやすいので、必ずしも図書館関係者ではなくとも、やさしい日本語や外国人向けサービスに興味のある人にはお役立ちの入門書だ。
国際協力
アクティブ・ラーニング
ワークでつかむグローバルキャリア
〈第2版〉
[共著者の中のOV]
徳永達己さん〈タンザニア/在庫管理/1985(昭和60)年度1次隊・神奈川県出身〉
拓殖大学国際学部長/国際学科教授、博士(工学)、技術士(建設部門・都市及び地域計画)。青年海外協力隊員としてタンザニアで活動し、(一社)国際建設技術協会、(株)エイト日本技術開発を経て現職。
拓殖大学国際学部の教授を務める2人の共著による本書は、国際協力分野を志す人に向けた“教材”であると同時に、さまざまな国際課題についての“読み物”としても役立つ一冊である。国際協力プロジェクトの発掘から実施、評価といった流れや、ロジカル・フレームワーク、PCM、PLAといったプロジェクト管理や参加型開発の手法についてもそれぞれ章立てして説明し、要所ごとに本書を見ながらグループワークを行える課題も掲載している。2016年の初版発行から、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻といった世界情勢の変動も踏まえた今回の第2版では、14章「国際協力の潮流」を中心に最新情報への加筆・修正が行われた。国際協力分野の最新状況を俯瞰するためにも、ぜひ手に取ってほしい。
Text = 林 志織、飯渕一樹(いずれも本誌)