
セネガル/コミュニティ開発/2014年度3次隊・愛媛県出身
就職先 | ヤマハ発動機株式会社 |
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事業概要 | 二輪車や電動アシスト自転車などのランドモビリティ事業、ボート・船外機などのマリン事業、ドローンなどのロボティクス事業など多軸に事業を展開。途上国・新興国向けに浄水装置を導入する事業も行っている。 |
略歴 | 1989年 | 愛媛県生まれ |
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2012年3月 | 大学卒業 | |
2012年4月~14年1月 | 株式会社伊予銀行に勤務 | |
2015年1月~17年1月 | 協力隊員としてセネガルに赴任 | |
2017年6月~20年9月 | 株式会社リクルートキャリア (現:株式会社リクルート)に勤務 |
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2020年10月~21年7月 | 株式会社レコフに勤務 | |
2021年8月 | ヤマハ発動機株式会社に入社 |
大学卒業後、地方銀行に勤務していた藤本顕充さんは、協力隊に参加した中学時代の先輩から「やりがいがあった」という話を聞いて興味を持ち、自らも参加を目指すようになった。「自分の人生から一番遠い場所へ行ってみたい」との考えからアフリカを希望し、第1希望のセネガルへの赴任が決まった。
水の防衛隊として派遣された藤本さんの配属先はセネガル西部、ファティック州の州都にある州水維持管理センター。州内の約80カ所に点在する給水施設の管理統括と、維持管理を行っている住民組合の運営支援が藤本さんへの要請だった。実際に各施設を巡回して組合の活動を見ると、維持管理はある程度のレベルで行われていた。現場でより気になったのは、給水施設の水に塩分が含まれていて、飲み水の確保には浅井戸を利用する住民が多いことだった。素掘りの井戸には家畜の糞尿が染み込んだり異物が紛れ込んだりすることもあり衛生的ではない。そこで給水施設の維持管理と並行し、井戸の改善と井戸水の浄化、さらに手洗いの普及のような衛生対策の啓発活動にも取り組んだ。
だが、任期が終わりに近づくと、藤本さんの中では「やり残した」という思いが強くなっていった。「現地の人にもっと形になるものを残したいが、自分にはそのための実力が足りない」と考え、帰国後には自らが成長できる企業で働きたいという気持ちを固めていった。
帰国後、まず株式会社リクルートキャリアを選んだのはそうした思いからだった。同社では中途採用に関わるアドバイザーを担当したが「大きかったのは、価値観が異なる人材をどう動かしていくのか、人、企業側の両方の視点を知ることができたこと。異文化の中で活動していたのでわかったつもりでいましたが、まだまだ分析が足りないと痛感しました」と振り返る。
その後、転職を経て勤務しているヤマハ発動機株式会社は、セネガルでの活動中、浄水装置について問い合わせたことがある会社でもある。今はまさに浄水装置を扱うクリーンウォーターグループに所属し、営業業務を中心に南アジアやアフリカの国々へ頻繁に出張する生活だ。協力隊の任期終了時、もう行く機会はないだろうと思っていたセネガルにも訪れている。
「途上国の村落に赴いてプロジェクトの立ち上げから取り組むのは協力隊の活動と似ていますが、当然ながら利益を上げることが求められます。その中で、グループが掲げる“水が変われば、暮らしが変わる”を実現していきたいです」と藤本さん。隊員時代にやり残した水の防衛隊としての活動の続きに、今も挑戦し続けている。
PARTNERのチェック、帰国隊員向けの企業説明会への参加のほか、転職エージェントに登録して就職活動を行いました。エージェントに伝えたのは、将来は途上国で活動したいこと、そのために自分が成長できる場で働きたいということ。すると紹介されたのが、株式会社リクルートキャリアでした。同社を経て起業や新たな取り組みを始める人が多いと聞いていて、実際に面接で感じた社員の熱量の高さや、同世代の社員が多いことも決め手となって入社しました。
入社して2年半ほどは、中途採用の求職者に企業を紹介する転職エージェントとして活動しました。企業側とどのような人材を採用するか相談すると共に、転職希望者へアドバイスを行うことが主な業務です。最後の半年は、元々法学部出身ということもあり、専門性を深めようと希望して法務部門に異動しました。
リクルートで「人」のことを学んだので、次は「金融・経営」のことを学びたいと考えてM&Aを仲介する会社に転職しましたが、コロナ禍の影響もあって想像していたような仕事ができませんでした。その頃、転職エージェントを通じてヤマハ発動機のクリーンウォーターシステム事業の求人情報を見つけました。隊員時代から、同社が小型浄水装置による水衛生の改善に取り組んでいると聞いていたこともあり、迷わずエントリーしました。
採用試験は履歴書と職務経歴書による書類審査と適性検査、所属部署のリーダー、部長との2回の面接です。最初に提出した職務経歴書では協力隊時代の活動について、アクションプランから実行までをPDCAサイクルに沿って整理して説明。面接では特に、協力隊経験とリクルートでのエージェント経験について多く質問されました。セネガルで大変だったことや、それにどう対処したのか、現地での経験を会社でどう生かしていけるかといったことを聞かれた記憶があります。
海外市場開拓事業部企画推進部クリーンウォーターグループで、途上国や新興国の安全な水へのアクセスに課題を持つ村落に、当社製の浄水装置を導入する事業に携わっています。私は、インドネシアを除くアジア全般とアフリカ、日本を対象に、主に営業を担当しています。国連機関などの公的資金やODAで導入するのが一般的で、営業先は現地政府やNGOが中心となるため、現地調査から情報提供、案件形成、フォローまで幅広く関わっていくことになります。現在は約10のプロジェクトに携わっています。この仕事で意識しているのは、浄水装置の導入が住民のニーズに沿っているのか、そして導入後は実際に役立っているか。人々の生活にどのようなインパクトを与えるかを含め、長く関わっていきたいと考えています。
協力隊経験は自分が思っているよりも困難で、価値がある経歴です。就職活動で難しいのは、その価値をどのように企業に伝えるかだと思います。中途採用のアドバイザーとしての経験も踏まえてこれから就職活動をする人に伝えたいのは、協力隊での活動を整理し、使った能力やスキルを分析、抽象化してほしいということ。例えばワークショップを開催したとすれば、そこで得た要素は企画、調整、行動などのスキルに抽象化できます。それを企業が求めている人材像と結びつけ、自身のスキルを生かして「こんなことができる」と具体的に示せば、よりわかりやすく自分を見せることができるはずです。
https://www.jica.go.jp/volunteer/obog/career_support/index.html
Text=油科真弓 写真提供=藤本顕允さん