
マレーシア/きのこ栽培/2015年度3次隊・埼玉県出身
ボルネオ島の北東部、サバ州にある標高2,000m近い山間の村、マシラウで3年間活動しました。深い森の広がるこの地域は先住民族の人々が多く、独自の文化や生活スタイルが色濃く残っているのが特徴です。
とりわけ興味深かったのは狩猟採集の習慣で、山奥には狩りを専業とする人々もいるのですが、それだけでなく、配属先の地域開発公社で給料をもらって働いている同僚たちも、日常的に森へ分け入って獣や野鳥を仕留めていました。時には「リスがたくさん獲れたから」とおすそ分けをくれたことも。村はある程度の買い物ができるくらいに商業が浸透していたものの、現地の人の間では肉を狩って調達するという文化もまだまだ根強かったようです。
日本と大きく異なる生活には驚かされましたが、元々狩猟に興味を持っていた私はすぐ現地の暮らしに順応。狩りや罠の見回りに何度も同行させてもらったのはもちろん、リスやコウモリ、カメ、鳥などを、同僚に教えてもらいながら自らさばいて食べてみるなど、得難い体験をたくさんさせてもらいました。
獲物の扱いに限らず、現地の人々が持つ生活の知識や器用さには、しばしば感心させられたものです。何より、毎日帰りの遅い日本のサラリーマンと違って、夕方には家に帰って鶏の世話や野良仕事にいそしみ、毎日楽しそうに暮らしている様子は印象的でした。日本へ帰った今、そんなコミュニティで暮らした当時を振り返ってみると、私も彼らと一緒に、本当に楽しい気持ちで3年間の任期を過ごすことができたと思います。
Illustration=牧野良幸 Text=飯渕一樹(本誌)