平田すみれさん
平田すみれさん

ボリビア/青少年活動/2021年度3次隊・富山県出身

大学で国際協力について学び、多くの留学生が住む寮での生活を経験。大学3年時には交換留学で1年間イギリスへ。卒業前に協力隊に合格するもコロナ禍の影響で派遣延期になり、2年の国内待機を経て2022年にボリビアへ赴任。任期満了を経て、現在はJICAボリビア事務所に勤務。

応募者へのMessage

隊員としてボリビアに初めて降り立った時、2年後に自分がどうなっているのかイメージもできていなかったのですが、結果的には昔の自分が想像もしていなかった進路に進んでいます。
協力隊に参加しなければ、ボリビアにもスペイン語にも無縁で生きていたでしょうし、人生が変わった感があります。周囲の勧めどおり、早いうちに参加してみてよかったです。

新卒参加

周囲の後押しを受けて新卒でチャレンジ
充実した現地生活を送り、任期満了後は派遣国に戻って就職

新卒で参加した平田すみれさんの場合

JICA海外協力隊員ってどんな人?
セブラグループと活動する平田さん。グループは元々、メンバーとなる低所得者層の青少年への支援とラパス市民に対する啓発を目的に組織された

   大学で国際協力学を専攻するなど海外に関心を持ってきた平田すみれさん。大学4年生になり海外の大学院への進学を考えていた時、「JICA海外協力隊は新卒でも参加できる」という話を先輩から聞く。

「1つの国で2年間活動して現地を知ることができる協力隊に魅力を感じました。専門的な知識や職歴が不可欠だと思っていたのですが、職種によっては新卒でも応募できると知って、がぜん興味が湧きました」

   協力隊OVでもあるゼミの担当教授にも「若いうちに海外を見てくるといい」と背中を押され、在学中に応募して合格。ただ、2020年春の卒業後にボリビアへと派遣される予定が、コロナ禍で延期となってしまった。

   2年間に及んだ待機期間中には、栃木県小山市の市民活動センターで4カ月にわたってコロナ禍の中での特別訓練としてOJTを経験し、コミュニティ開発の技術顧問からの講義も受けた。

「コミュニティへの入り方や課題分析手法、ファシリテーションの技術など、隊員としての活動に生かせることを学べて有意義でした」

JICA海外協力隊員ってどんな人?
市内の学校で実施した、日本の学校生活を疑似体験してもらうワークショップ

   その後のオンラインと駒ヶ根訓練所での語学訓練は、朝から夕方まで語学漬け。「スペイン語は初めてで、歌など好きなものに関連づけて学ぶ工夫をしました。最初はしんどさも感じましたが、しゃべれるようになると授業も楽しくなっていき、前向きな気持ちで訓練を終えることができました」

   22年2月に赴任したボリビアでの任地は首都ラパスで、配属先は市役所の市民啓発課だった。市民のよりよい環境づくりを担う職員10人ほどの部署で、16~ 22歳の青少年ボランティア約60人から成る団体「セブラグループ」(以下、セブラ。スペイン語でシマウマの意味)の運営も行っていた。これはシマウマの着ぐるみを着て交通マナーの指導・啓発活動などを行う、設立されて20年以上になる組織。平田さんには、その活動内容を拡充するための提案が要請されていた。

JICA海外協力隊員ってどんな人?
趣味のダンスを生かし、カーニバルやパレードにもよく参加した。「歓声を浴びながら身をもってボリビアの文化を体験するのは素晴らしい経験でした」

   社会人経験のない平田さんにとって、市役所の一員としての業務は不慣れなことばかりだった。特に苦労したのは、セブラの活動を実施するための企画書作成や、配属先内での決裁手続きだった。

「役所なので思いついたことをすぐ実現できるわけではありません。ただでさえ未熟なスペイン語での書類作成などは大変でしたが、おかげで語学力と、自分のやりたいことを実現する力が鍛えられました」

   周囲は平田さんを温かく受け入れてくれる環境で、決裁を待って活動実施に進めず行き詰まっていた時などは、同僚が相談に乗ってくれた。「すみれは仲間なんだから助けるのは当然だよ」と上司に一緒に話をしてくれる人もいて、また、年代の近いセブラの青少年たちからはより親しまれやすく、趣味のダンスを通じてすぐ打ち解けることができたという。

JICA海外協力隊員ってどんな人?
ボリビアへ戻ってJICA事務所に勤務している平田さん。「今はオフィス業務が中心ですが、ノンフォーマル教育に一番関心があるので、将来的にはまたアクター側に立って途上国の教育に関わっていきたいとも思います」

   任期中に平田さんが実施したのは、一般市民向けのセブラ1日体験やセブラと他ボランティア団体の交流など。また、市内の学校を対象にした日本の学校体験ワークショップを企画し、習字や箸の使い方、整理整頓の考え方についてまず平田さんがセブラのボランティアに指導した後、彼らから一般の学生たちに教える形を取った。「活動の過程で、セブラの子たちが日本に興味を持ってくれたのが嬉しかったです。『あの時、日本人と一緒にこんなことしたな』と後に思い出してくれたらいいと思って活動していました」。

   平田さんは伝統舞踊をはじめとする現地の多様な文化や、仕事一辺倒ではないワークライフバランスの在り方に魅了された。将来も中南米圏で働くことを視野に、スペイン語資格の勉強をしつつ、ボリビア在住の日本人がどんな仕事
をしているのかと積極的に話を聞きに行ったりもした。「現地に残るための選
                                                                                   択肢は赴任後半年くらいから探っていましたが、その思いを日頃から口に出し
ていたのがよかったと思います。私のことを気に留めて人に紹介してくれる方も現れて、新たなつながりに結びつきました」。

   帰国後、JICAボリビア事務所の現地採用職員のポストが空いたことを知って応募。24年8月からボリビア事務所でボランティア事業を担当し、隊員の活動や生活を支える立場で働いている。

「以前から海外志向はあったものの、英語圏をイメージしていて、ボリビアに住むことなど想像もしていませんでした。そんな私が今こうして中南米を気に入って働いています。協力隊で人生が変わりましたね」

任地メモ

持って行ってよかったもの

【筆ペン】現地の人たちの名前を漢字で書くと喜ばれるので習字道具があるといいのですが、持ち運びが面倒!私は筆ペンを持参していて、いつでもどこでもすぐ書けるので重宝しました。

お気に入りの食べ物

刻んだ肉・野菜のスープを小麦粉の生地で包み込んて焼いたサルテーニャや、ブニュエロという大きな揚げパンなど、路上で安く売られているローカル食が好きです。日常の食文化の多様さもボリビアの魅力で、やっぱりおいしいんですよね(笑)。

職種ガイド

【青少年活動】

子どもや若者の健全な育成と自立を支援する活動のうち、家庭・学校教育では対応が難しいことに取り組む職種。活動場所は児童養護施設、学校、図書館、青少年活動団体、難民キャンプ、少年鑑別所などさまざまで、具体的な活動内容も音楽・美術といった情操教育、課外活動、語学教育、キャリア支援など多岐にわたる。平田さんは市役所に配属され、市役所が管轄する青少年ボランティア組織の活動に携わった。

Text=工藤美和 写真提供=平田すみれさん