
JICA海外協力隊に応募するにあたっての疑問や不安、心配事に、協力隊OB・OGでもある青年海外協力隊事務局の蔦木詩歩さん(モロッコ/卓球/2014年度2次隊)と、淡路侑太さん(ケニア/青少年活動/2019年度1次隊)がお答えします。
JICA海外協力隊は、「青年海外協力隊」「海外協力隊」「日系社会青年海外協力隊」「日系社会海外協力隊」「シニア海外協力隊」「日系社会シニア海外協力隊」の総称であり、開発途上国で現地の人々と共に生活し、同じ目線で課題解決に貢献する活動を行っています。独立行政法人国際協力機構(JICA)が派遣国からの要請内容に基づいて、それに見合った技術や経験を持つ人を選考し、派遣しています。JICA海外協力隊は、青年海外協力隊事業として1965年に発足し、2024年12月現在までの派遣実績国の累計は99カ国です。
▶派遣実績国は電子冊子版(PDF)のP2へ
訓練前には、自宅で受けていただく「語学事前学習」があり、語学教材(eラーニング)などを用意しています。また、二本松・駒ヶ根の両訓練所で行われる派遣前訓練の「語学授業」では、語学講師が現地で活動と生活をスムーズに始めるために必要な語学力を身につける授業を行います。派遣国に赴任してから配属先に着任するまでの間にも、数週間~約1カ月にわたって「現地語学訓練」があり、より実践的な力を養う目的で、派遣前訓練で学んだ言語や現地語を学びます。
▶「語学授業」についてのアドバイスは「青年海外協力隊訓練所に行ってきました! 語学講師インタビュー」へ
健康、安全、生活面のサポートもあります。派遣前には赴任にあたって必要な健康診断や、予防接種を案内・実施しています。予防接種は自己手配で接種いただくものと、訓練所で接種いただくものがあります(詳細は合格後にご案内します)。また、派遣前訓練中に、任地での活動と生活に必要な健康と安全の管理に関する意識を培うための講座を実施しています。
派遣中は、看護師免許取得者である「在外健康管理員」が現地の医療機関や医師と連携しながら、健康に関する相談、病気や医療に関する情報の提供、疾病発生時の対応などを行ってくれる国も多くあります。
加えて各国にあるJICAの在外拠点では、「安全対策の情報提供」を行っています。現地の治安状況、犯罪防止や交通安全対策に資する情報を提供するほか、通信連絡手段の確保、必要に応じて住居の防犯対策強化なども実施しています。
派遣前訓練の前に「1.講座事前学習」や「2.課題別派遣前プログラム」があり、派遣前訓練中も「3.各種講座」で知識や経験を増やしたり、同じ職種の隊員と情報交換することができます。派遣中は技術顧問や技術専門委員への「4.活動支援依頼」のほか、現役のJICA海外協力隊員に向けた実践ガイド「5.クロスロード」で情報を得ることもできます。
JICA海外協力隊公式LINEには、いくつかの質問に答えてもらうことで、
あなたにおすすめの職種を紹介する「シゴト診断」があります。ぜひ活用してください!
JICA海外協力隊員として活動を行うために必要な一般知識を、オンラインで学べるよう教材を用意しています。
派遣前訓練の前に、LMS(Learning Management System)を通じ、課題別オンデマンド動画教材を配信しています。派遣前訓練の後には、対象となる方に対し、オンライン型あるいは対面での集合型の課題別派遣前訓練を実施しています。これらを通じ、協力隊での活動において必要とされる、実務的な技術・技能および教授法などの向上、習得を図ります。
派遣前訓練では、JICA海外協力隊の基礎、活動管理手法など、現地での活動と生活に必要なさまざまな講座を実施しています。
JICA青年海外協力隊事務局は、隊員の分野・職種別に技術顧問や技術専門委員を配置しています。派遣中の隊員が活動上の技術的なアドバイスなどを希望する場合には、技術顧問や技術専門委員に支援を依頼することができます。
派遣中の隊員に向け、現地での活動と生活の参考となる実践的な情報などをまとめた「クロスロード」を毎月発行しています。JICA海外協力隊のウェブサイトから閲覧やダウンロードができます。
訓練所までの往復交通費、派遣国への赴任・帰任にかかる旅費はJICAが負担します。現地での住居は派遣国の政府またはJICAが用意します。国や地域によっては住居に警備員が配置される場合もあります。業務連絡用に携帯電話(SIM)などが貸与されます。「国内手当(※)」や「現地生活費」(派遣国での生活費で、派遣国の住民と同等程度の生活を営むに足る金額を、JICAが物価、為替変動などを勘案の上、定めています)などの支給もあります。
※国内手当は支給要件に合致する場合のみ。
あります。活動先により、勤務時間や休日・長期休暇の日数は違い、朝7時から昼過ぎまでで活動が終了する隊員もいれば、夕方くらいまで活動が続く隊員もいます。あらかじめ申請して現地のJICA事務所の承認があれば、私費で任国内旅行や任国外旅行をすることもできます。
所属先の制度と承認に基づきますが、退職せずに現在の身分を保持したままJICA海外協力隊に参加することもできます。待遇については現状、無給休職での参加が多くなっていますが、有給での参加が認められる場合もあります。ご自身の所属先の制度を確認し、よく相談するようにしてください。教員の場合は、一般公募に加えて、現職教員特別参加制度での応募の機会の可能性もあります。
▶現職参加については「JICA海外協力隊員ってどんな人? CASE2 現職参加」へ
青年海外協力隊事務局では、「1. 就職支援」「2.進学支援」「3.社会還元支援」を通じて帰国した隊員をサポート、および協力隊で得た経験を国内外の社会課題解決に生かしていただくため、社会還元の促進をしています。
国際協力分野のキャリア情報サイト「PARTNER」による求人情報の提供を行っています。また、進路相談カウンセラーによる個別相談や進路開拓メニューのご紹介、サポートや、教員・自治体職員の特別採用枠の案内のほか、JOCV枠UNV制度(国際協力分野でキャリアップを目指している青年層のJICA海外協力隊OB・OGを国連ボランティアとして主に国連機関に派遣する制度)も設けています。
帰国後3年以内の帰国隊員のうち、JICA海外協力隊への参加で得た知識および経験を、国内外で生かす社会還元を促進するために、国内外の大学院への進学を志望する方および進学している方を対象とした、帰国隊員奨学金事業があります。また、進路開拓に役立つ技術の取得、免許・資格の取得につながる学習に対して必要な経費を支援する「教育訓練手当」制度があります。その他、 JICA海外協力隊OB・OG向けの大学・大学院の特別入試制度や、国際協力人材を目指す人向けの研修制度などがあります。
帰国隊員を対象に、研修やセミナー、勉強会などを通じて協力隊経験の社会還元活動のサポートを行っています。「JICA海外協力隊相談役」を全国に配置し、社会還元活動に関する様々な相談を受け付けています。また、協力隊経験を生かし、起業することで社会へ貢献しようとする方を支援する起業支援プロジェクトBLUEもあります。
Text&Photo=阿部純一(本誌)