鷲山恭子さん
鷲山恭子さん

幼児教育/ 2024年度7次隊・静岡県出身

短大の保育科を卒業後、幼稚園で4年間、託児所やスイミングインストラクターとして約2年の実務経験を積み、30代からはタイやベトナム、インドネシアの日本人幼稚園に勤務してきた。協力隊には2019年度3次隊で派遣予定だったが、派遣前訓練終了間近、コロナ禍により延期に。待機期間を経て、約5年越しでパラグアイへの赴任がかなった。

協力隊参加のきっかけ

子どもの頃、テレビや写真を通じて、野生動物の宝庫であるアフリカへの憧れを抱いたのをきっかけに、高校時代には、いつか必ず海外に出ようと心に決めていた。30代からアジア地域で働き海外生活を続けてきたが、自身の進む道を再考する中で、たまたま協力隊募集の広告に触れ、これまでの保育に関する実務経験を生かし、海外でさらなる経験を積むチャンスと考え、応募した。

公開!私の派遣国生活〈拡大版〉from パラグアイ
①イグアス市役所、同日本人会、農協などが主催している年に一度の大きな行事「イグアスEXPO」のパレードで着物を着て踊りを披露する女性たち ②イグアス移住地の象徴ともいえる赤い鳥居

住んでいるのはどんな町?

私が住んでいるイグアス移住地(※1)は、イグアス市の中でも特に日系人が集まって住んでいるところです。農協のスーパーでは現地の生鮮品に加え、みそや豆腐、納豆、梅干しなども現地で製造販売されています。カレールーやだしの素などの輸入品もそろっていますし、和食が食べられるレストランもあります。日本人会による運動会や各種スポーツ大会、敬老会、成人式、夏祭りなど、毎月のように行事があり、日系人の絆やパワーを感じます。園児たちのひいおばあちゃんとも交流する機会がありますが、とても元気。和太鼓や空手、野球、バレーボール、日本の踊りなど、習い事を活発に行っている人が多いです。日本の文化と共にイグアスを大切に思う気持ちや意識が高い方々ばかりです。

公開!私の派遣国生活〈拡大版〉from パラグアイ
イグアス日本人会の事務所
公開!私の派遣国生活〈拡大版〉from パラグアイ
任国外旅行で訪れた「イグアスの滝」はアルゼンチンとブラジルにまたがる南米の自然を代表する絶景で、イグアス移住地からは車で1時間半ほどで行ける
公開!私の派遣国生活〈拡大版〉from パラグアイ
鷲山さんが日本から持参した絵本の読み聞かせに園児たちは興味津々

どんな活動をしている?

配属先は日本人会が運営しているイグアス聖霊幼稚園です。日系人でも世代交代が進んで日本語を話す家庭が減り、非日系の園児が半数以上を占めるほど増えています。卒園後は、日本語学校(※2)に通う子が多いため、幼児のうちから日本語に親しんでもらうことが求められています。私は、日本から持参したたくさんの絵本やパネルシアター(※3)などを使って日本語のみを使用しての保育を行ったり、段ボールでキッチンセットを作って料理遊びができるようにしたり、五感を使って楽しく日本語を学べるように工夫しています。スペイン語が苦手な私とおしゃべりしたくて、覚えたての日本語で一生懸命に話しかけてくる子どもたちがとてもかわいくて、毎日楽しく活動しています。

平日のスケジュール例

6:00起床
朝食は野菜ジュースなど
7:00配属先に出勤
園児たちに日本語を教える
11:00家に帰って昼食を取り洗濯などの家事もする
13:30配属先で午後の活動
園児たちは別の幼稚園(スペイン語)に行くため、事務作業や日々の保育・行事の準備などをする
17:00活動終了・帰宅
夕食と入浴のほか、自由時間に充てる
24:00就寝
公開!私の派遣国生活〈拡大版〉from パラグアイ
配属先の先生たちと鷲山さん
公開!私の派遣国生活〈拡大版〉from パラグアイ
同期隊員とパラグアイの伝統的なダンスの練習をする鷲山さん
公開!私の派遣国生活〈拡大版〉from パラグアイ
農協スーパーに並ぶ日本の食材

どんな食べ物がある?

食生活は自炊中心ですが、近所の方々から頂いた野菜も活用しています。自宅の庭で作物を育てている家庭が多く、私も裏庭に菜園を作りました。レストランではかつ丼、から揚げ、焼きそば、エビフライなど日本の定番が食べられますし、味も遜色ありません。他の地域の同期隊員たちがイグアスに遊びに来ると、久しぶりの日本食に感動しています。南国の恩恵としてフルーツも豊富です。マンゴーやグアバが敷地内になっているので食べたい時に採れますし、日系人の農家の方が育てているメロンやスイカもとてもおいしいです。南米ならではの食べ物として「アサード」という薪でじっくり焼くバーベキューがあり、イベントなどの際によく振る舞われます。家庭によっては毎週1回は食べる定番の料理です。


公開!私の派遣国生活〈拡大版〉from パラグアイ
パラグアイの夏期は10月から3月で、その時期に出回るゴーヤで好物のゴーヤチャンプルーをよく作る
公開!私の派遣国生活〈拡大版〉from パラグアイ
同僚の先生の家で振る舞われた南米のバーベキュー「アサード」
公開!私の派遣国生活〈拡大版〉from パラグアイ
カフェで食べられるソフトクリーム。毎週味が変わるのが楽しみ
公開!私の派遣国生活〈拡大版〉from パラグアイ
裏庭で始めた家庭菜園

どんな家に住んでいる?

2軒つながりの戸建てに住んでいます。隣家には日本語学校の先生が、敷地内には他の隊員2人も住んでいて、よく話したり、みんなで食事に行ったりしています。家の設備は必要なものがそろっていて快適です。キッチンはガスコンロが4口あり、冷蔵庫、電子レンジもあり自炊に不自由しません。1日の寒暖差が激しい地域ですが、エアコンや電気ストーブがあるので問題ありません。日本人会の方々がとても親切で、家電が故障した際などにすぐに助けてくれて、本当に感謝しています。

公開!私の派遣国生活〈拡大版〉from パラグアイ
鷲山さんの住まいはイグアス移住地内にあり、配属先まで徒歩2 分と便利
公開!私の派遣国生活〈拡大版〉from パラグアイ
必要なものがそろっているキッチン
公開!私の派遣国生活〈拡大版〉from パラグアイ
毎日遊びに来る猫とも仲良し

※1 イグアス移住地…1961年に開設されたパラグアイで5番目となる日本人移住地。首都からブラジルへ通じる国道が開通したことを機に、国道沿いに造成された。他の地域の日本人移住地の次男・三男や日本からの移住者が、原生林を切り開き、山焼きして農地を開拓し、発展を続けてきた。1972年までに238家族が入植したとされている。

※2 日本語学校…日本語で授業を行い、日本の文化・習慣を教える小学校・中学校で、日系人・非日系人が共に学んでいる。生徒たちの多くは、パラグアイの学校(スペイン語で授業を行う)と日本語学校の両方に通っている。

※3 パネルシアター…毛羽立ちのある布を貼ったパネルをベースにして、付着力を利用して不織布に描いた絵や文字を貼ったり動かしたりしながら、芝居などを見せるもの。


写真提供=鷲山恭子さん Text=海原美帆