就職ストーリー
石川栄貴さん

短期/ラオス/コミュニティ開発/
2012年度9次隊、
ネパール/野菜栽培/
2018年度3次隊・東京都出身

就職先 AKKODiSコンサルティング株式会社
事業概要 顧客の課題発見と解決のためのコンサルティング、ITインフラ構築やソフトウェア開発、IT技術分野の人材の提供などを行う。
略歴 1992年    東京都大島町生まれ
2015年3月    大学卒業
2015年4月~16年3月    IT企業に勤務
2016年4月~18年12月    伊豆大島で就農
2019年1月    協力隊員としてネパールに赴任
2020年3月    コロナ禍による一斉帰国
2020年3月~21年1月    日本からリモートで配属先の支援活動
2021年2月    AKKODiSコンサルティング株式会社に入社

故郷の振興にいずれ貢献するため
マネジメント能力とIT技術を身につける

就職ストーリー
多くの農家を回り、現地の人たちと共に有機野菜の普及に貢献した

   10代の頃から国際協力に携わりたいと考えていた石川栄貴さんは、拓殖大学がJICAとの連携プロジェクトを計画していることを知り、同校の国際学部農業総合コースに進学。ネパールでの研修、ラオスへの短期派遣ボランティアなどを経験し、大学卒業後は、IT企業の営業職に就き社会人経験を積んだ後、農業の技術をさらに身につけるため故郷の伊豆大島で新規就農し、協力隊に参加するタイミングを考えていた。2017年にJICAとの連携で「ネパール・農業を通じた農村地域活性化プロジェクト」が発足すると、大学の推薦を受け第1号隊員としてネパールに赴任した。

   任地はネパール中部のゴルカで、地域の農家を巡回し有機栽培の技術指導や研修を行うことが要請内容だった。現地には読み書きや計算ができない人が多かったことから、石川さんは栽培や害虫駆除のマニュアルを動画で作成し、文字がわからなくても内容がわかるように工夫した。コロナ禍で帰国した後も動画のアップを続け、現地から「うまくいった」という声が多く寄せられた。ネパールの農家の支援を続けながら、石川さんはマネジメント能力とIT技術を身につけられる仕事に就きたいと考えるようになっていった。

就職ストーリー
1年余りとはいえ、現地の農家の人々と良好な関係を築いて活動していた

「協力隊員として活動する中で、プロジェクトを計画し運営する能力が自分には圧倒的に足りていないと感じたこと、そしてネパールでも2時間かけて学校に通っていた村の子どもたちが、コロナ禍の影響でリモート授業を受けるようになるなど、ITによるさまざまなイノベーションが起きていることを目にしたことが大きかったです」

   実は石川さんには高校時代からの夢がある。いずれは生まれ故郷の大島町の町長になり、伊豆大島を活性化させることだ。それを実現させるためにはマネジメント能力とIT技術が欠かせないという考えが、進路を決める際の指針となった。

   任期を終えたらすぐに仕事に就きたいと考えていた石川さんは、任期終了の半年ほど前から就職活動を開始。転職エージェントに登録したり、インターネットで“IT”“マネジメント”といったキーワードで検索したりしながら、自分が希望する会社を探した。AKKODiSコンサルティング株式会社への応募は、現場に入って課題を発見し、解決策を提案する方法が、協力隊経験を生かせる上、自分がやりたいことにマッチしていると感じたことが決め手となった。

「経験を積めば積むほど、見えてくるものがあります。いろいろな経験を積み、しっかりと吸収してから、新たなステップに踏み出したいと思います」

1

新型コロナウイルスの
感染拡大による一斉帰国 2020年3月

帰国してから任期終了の2021年1月まで、リモートでネパールの農家に対し有機栽培の技術指導を行うなどの支援をしました。自分の進路については、20年夏ごろに転職エージェントに登録し、IT技術とマネジメントを学べる企業の紹介を希望しました。

2

採用試験にエントリー2020年11月

転職エージェントからの紹介を受け、AKKODiSコンサルティング株式会社の採用試験にエントリーし、履歴書と職務経歴書を提出しました。アピールポイントでは協力隊の活動を説明し、ネパールの標高3,000mの山岳地帯で毎日歩いて活動を続ける体力があること、言葉が通じない現場で現地の人と活動するコミュニケーション能力があることなどを書きました。一方、IT技術などの専門性については私からはまったく書きませんでした。転職エージェントの担当者は困惑していたようですが、自分の目的意思やバイタリティを評価してくれる会社に入りたいという思いもあり、あえてそうしました。

3

カジュアル面談2020年11月

エントリーから1~2週間後に、社員とのカジュアル面談が行われました。社員の方から会社の説明を受けた後、私からは会社の方向性、給与や待遇面、一社員として楽しく働ける環境なのかを、ざっくばらんに聞きました。

4

面談2020年12月

ウェブでの適性テストの後、面談が3回ありました。3回目の面談相手は取締役だったと入社後に知りました。いずれの面談もIT技術など専門性を確認する質問はなく、将来何がしたいかを問うものが多かったと記憶しています。それに対して、将来は故郷・伊豆大島の町長になりたいと答えました。高校時代から島を良くしたいという思いがあり、協力隊に参加したのも、コミュニティ開発や地域創生という活動が行政に生かせると考えたからです。面接でも会社で身につけたIT技術やマネジメント能力を島に還元したいと話しました。

入社2021年2月

現在の仕事

入社から3年は、顧客の企業に常駐派遣され、課題の発見から解決方法の提案までのコンサルティングを行いました。現在は顧客から請け負ったプロジェクトのマネジメントを行っています。私が担当しているのは、3~4社のIT分野のプロジェクトで、例えばホスティングサービスの企画・管理・運営などに関わる業務です。各プロジェクトと並行して、障害者雇用にも携わっています。2026年7月に障害者の法定雇用率が2.7%に引き上げられますが、そこに向けて障害のある人材をエンジニアとして育成し、プロジェクトに参画してもらうことが今の目標です。

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多くの人や部署と連携してプロジェクトを推進するのと並行して障害者雇用の促進に取り組むなど幅広い分野の業務を行っている

後輩へメッセージ

IT企業ではバイタリティやコミュニケーション能力がある人材が重宝されます。IT関係が未経験の人も、協力隊での活動がITとはまったく関係のないコミュニティ開発や野菜栽培だった人も、IT企業で働くのは無理だとは思わないでください。協力隊での経験、そこで身につけたバイタリティ、コミュニケーション能力、どんな環境にも負けない体力は、IT企業でも評価されます。たとえ自覚がなくても、そこは必ず伸びているはずなので、自分のアピールポイントになることを知っておいてほしいです。

JICA 海外協力隊ウェブサイト 「進路開拓支援のご案内」

https://www.jica.go.jp/volunteer/obog/career_support/index.html

JICA 海外協力隊ウェブサイト

Text=油科真弓 写真提供=石川栄貴さん