
ヨルダン/障害児・者支援/2014年度1次隊・広島県出身(広島県JICAデスク)
ヨルダンの首都アンマンでは、運賃の安い乗り合いバスが日常の足となっています。私も普段から利用していましたが、イスラム圏では女性が男性の隣に座ることが良しとされないため、私も女性の隣にしか座らないように心がけていました。
そんなある日、乗り込んだバスが混んでいて適当な席が見当たらず、立ったままでいたところ、車掌から「なぜ立っているんだ!」と強めの口調で言われてびっくり。そして座っていた男性客が声を聞きつけるとすぐ立ち上がって席を譲ってくれたのでさらに面食らいました。これもムスリムの文化で、女性や年長者を大切にする道徳観が深く根差しているため、女性の私を立たせている状況など言語道断!という一種の親切だったのです。
この体験は意外な驚きとして印象的でしたが、日々の暮らしの中でも、親切や気遣いをよく受けました。私が道に迷った時など、尋ねもしないのに人が集まりあれこれと道順を教えてくれたり…。知らないのに何かしら教えて助けてくれようとする人もいて、余計に時間がかかる時もありましたが、それもまた彼らのサービス精神なのでしょう。
そんな環境に完全になじんで帰国してJICAの帰国時プログラムで東京に滞在していた時、慣れない都内の路上でキョロキョロしながら、無意識に誰かが声をかけてくれるのを待っていた私。しばらくして「ハッ、日本では自分から道を聞かなきゃいけないんだった!」と気づきました。その半面、聞けば正しい情報を教えてもらえるのが日本の良いところではありますが、何だか寂しいなあ…とも感じてしまう“逆カルチャーショック”体験でした。
Illustration=牧野良幸 Text=飯渕一樹(本誌)