
(ミクロネシア/料理/2004年度1次隊・北海道出身)
今年1月4日、5日の2日間にわたって、能登半島地震で被災した石川県輪島市にて復興支援プロジェクト「ラーメンで心も身体も温めよう」を行い、被災から1年になる輪島の皆さんにラーメン約1,000食を無料提供することができました。
きっかけは、昨年6月に2004年度1次隊/駒ヶ根訓練所OVの同窓会を催し、そのつながりから同期に誘われて8月に輪島で復興支援ボランティアを経験したことです。
私は、協力隊での活動後にヨーロッパ各国で料理人として働き、10年ほど前にオランダでラーメンチェーンを起業。それからは経営一筋で、ボランティア活動に関わったのは協力隊以来でした。ただ、輪島で避難所運営の補助や仮設住宅の見守りに携わることを通して復興の遅れに大きな衝撃を受け、「もっと何かしなくては」と思ったのです。そして、被災地の方々が冷たいお弁当を食べる姿を見て心に浮かんだのは“食の力”でした。私は料理人として「どんな人種でも、宗教でも、民族でも、おいしいものを食べている時はみんな幸せを感じる」と信じていて、このプロジェクトの着想に至りました。
いったんオランダに戻って計画を練り始めたものの、一人では資金集めも実施も困難なので、一緒に復興支援に参加したOVを中心に実行委員会を発足。メンバーの友人関係を軸に、日本全国から18名がボランティアとして参加してくれました。プロジェクトのウェブサイトを作って著名な方にサポーターを、日
本やオランダの企業に資金や食材の協賛をお願いし、SNSで広報しました。こうした段取りをきちんと踏むことで、広く個人の方にも安心して寄付をしていただけるようになったと思います。
炊き出しには1,000食分の材料や容器、キッチン、ガス、机、イスなどのほか、大量の物資の輸送とその保管、全国から集まるボランティアの宿泊場所の確保など膨大な準備が必要となります。被災地では情報が少なく、問い合わせ手段が電話に限られることも多い中、オランダから段取りを続けました。
 ところが、昨年9月21日に能登で豪雨災害が発生。被災地が再び深刻な被害を受けました。目の前の災害対応に当たる輪島市の支援調整窓口との連絡を控えるしかなく、イベントの開催も危ぶまれる状況に。11月に入ってようやく実施の見込みが立ったものの、直前まで会場が決まらず、地元の皆さんへの広報や設営準備には非常に苦労しました。
12月中旬に私が現地へ入って最終調整を行い、1月3日にボランティアも現地入り。資材運搬や会場設営を行い、無事、開催にこぎ着けました。寒い中で待たせては申し訳ないため、その場で食べていただくだけでなく、持ち帰り用も準備したところ、98%の方が持ち帰りを選んだのは予想外でした。中には、近所の足腰の弱い人たちのために一人で10セットを運んで帰る優しい方も。「本当においしかった」「寒い時にラーメンを食べると体が温まって力が出る」「日本中から来てくれて嬉しい」といった声を頂き、本当にやってよかったと思っています。
今回はたくさんの寄付を頂いたおかげで余剰金も出たので、第2回以降の開催や継続的な支援が可能な体制づくりをしていきたいと考えています。このプロジェクトは大がかりなものでしたが、被災地での炊き出しは、例えばキッチンカーを安くレンタルして短時間でも行うことができます。皆さんそれぞれ、自分のできるやり方で取り組んでみてはどうでしょうか。
Text=工藤美和 写真提供=藤田 心さん