チュニジア/卓球/2022年度1次隊・長崎県出身
「このまま先生になるより、一回海外に行ったほうが絶対に面白い先生になれる!」。大学卒業後の進路として教員を志望していた牧山祐大さんは、新卒で卓球隊員としてチュニジアヘ。任地では卓球協会に配属され、主に青少年に対して卓球指導を行った。自身の卓球経験は、小学校から大学まで。大学では、全国大会に出るほどの実力の持ち主だった。そんな牧山さんが最初にぶつかった壁が、言語だという。
「隊員としてチュニジアへ行ったのが初の海外経験で、外国人と外国語を話すことも初めてでした。任地はアラビア語がメインでしたが、チュニジア独特のなまりもあって最初は本当にわからず。それでも聞いてしゃべることを繰り返しているうちに、簡単な単語と表情、ジェスチャーを組み合わせた意思疎通が上達してきました」
言語の壁を乗り越えて“外国語でのコミュニーション能力”がついてきたわけだ。とはいえ卓球の試合中、セット間のアドバイス時間は、たった1分。この時は、ホワイトボードでの図示も交えながらアドバイスを与えたという。
実はチュニジアは、シーズン中は毎週のように大会があるほど卓球が盛んな国。牧山さんが指導した子どもたちの能力もぐんぐん伸びていき、その中の一人、9歳の女の子が、なんと全国1位に輝いた。目に見えて成果が出ると、牧山さんの活動にも力が入った。
「頑張ろうという気持ちが強すぎて体調を崩すことが多く、一度は腹痛で動けなくなったことも。病院に行くと、ストレスと疲れのせいだと言われました。ストレス源は気候や食べ物、それに人間関係もあったのかもしれません。同僚はとてもいい人なんですが、とにかく朝出勤してこない。さらに、子どもたちの中には真面目に取り組む子がいる一方、自転車で体育館に入ったり、卓球台の上に乗ったりとやりたい放題の子も。柄にもなく『帰れ!』と怒鳴ることも多く、いつの間にかストレスをためていたのかなと思います」
しかし、そんな生活を送る中で、だんだんと“ストレスコントロール力”も身についてきた。
「うまくいかないことがあったら、1~2分ぐらい、その原因に対してとことん向き合うんです。あれこれ振り返って、今日の自分のベストは出せたと納得できたら、それ以降は考えない。あいまいに流さず、きちんと向き合うようになってから、ストレスをうまくコントロールできるようになった気がします」
そんな日々を経て定着した “へこたれない力”は、日本に帰国してから長崎県で教員として働く中で、実感しているという。
「やんちゃといわれる生徒と関わったり、授業の準備や部活動の指導をしたり、大変な場面がありますが、全くへこたれる気がしません。いくらやんちゃな生徒でも、靴はそろえるし、ごみをごみ箱に捨てる、もうそれだけで感動です(笑)」
チュニジアで過ごした2年間で会話時のリアクションが大きくなり、赴任前よりも、根が明るくなった気がすると話す牧山さん。生徒たちにとっても、きっと面白い先生になっているはずだ。
Text=池田純子 写真提供=牧山祐大さん