ボツワナ/コンピュータ技術/2022年度2次隊・兵庫県出身
職業訓練校の学生や教員に対するIT技術指導やシステム環境整備のため、ボツワナに派遣された原 志朗さん。2年間で身についた力として、まず“現場力”を挙げる。
「配属された学校内のIT環境はボロボロ。修理して新しいシステムを入れながら、配属先の同僚にスキル移転しようとしましたが、タスクをお願いしてもなかなか期日どおりに実施してくれず、早々に壁に直面しました」
日本人とは仕事の姿勢や考え方が全く異なるボツワナ人に、日本での考え方で進めようとしても、うまくいくはずはないと改めて実感した原さん。
「そこで、一気に相手のやり方すべてを変えようと試みるのではなく、その場ごとに終わる短いタスクの中で少しずつ新しいやり方を伝えていき、だんだんと良い方向に変化させるのがよいと気づいたんです」
現地の事情に即した取り組み方に変えてからは徐々に仕事が進み始めた。そして、同僚たちと日々の密なやりとりのおかげで、半年も経たないうちに“外国語でのコミュニケーション能力”もアップしたという。
「海外経験が乏しかったので英語力には不安がありましたが、実際に行ってみると意外に通じるなと。ただ最初の頃は、話しかけられてもすぐに返せず、会話がスムーズに進まないことがよくありました。だんだん慣れてくると、英語で考えて会話する、いわば“英語脳”に切り替えられるようになりました」
活動の序盤から現地ならではの苦労に見舞われながらも、前向きに活動に取り組んでいた原さんだったが、赴任1年後、夜中に突然の激痛に襲われる。
「病院で尿管結石と診断されました。痛みは1、2日で収まったのですが、JICAの手配で治療のために2カ月間ほど帰国。その後、無事にボツワナに戻ることができましたが、私の留守中に起こった配属先のシステムトラブルを別の隊員が対応してくれたと聞いて、とてもありがたく思いました。困難があっても、そのように助けてくれる人がいて、何とかなるんだと実感できたという意味では、“へこたれない力”がついたような気がします」
帰国後はIT企業に就職し、システムエンジニアとして働き始めたが、協力隊で身についた力は、早くも発揮できているという。
「今の会社では管理職的な立場になりましたが、部下にお願いする時に、自分のスタイルではなく、その人が持っている能力や目指す方向に合わせるように心がけられるようになりました。また、へこたれない力という点でいうと、へこたれること自体は、まだありませんが、お互いに助け合うことは新しい職場でも意識しています。ドライな対応ではなく、お互いのことを視野に入れて働きながら信頼関係をつくる、それがへこたれない力の原動力になって、この先何かあったら助け合えるのだろうと思っています」
Text=池田純子 写真提供=原 志朗さん