
ルワンダ/マーケティング/2019年度2次隊・神奈川県出身
就職先 | 株式会社スノーピーク |
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事業概要 | アウトドア製品およびアパレル製品の開発・製造・販売のほか、住空間アウトドア、キャンピングオフィス、地方創生、グランピングなどの事業を展開 |
略歴 | 1994年 | 神奈川県生まれ |
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2016年3月 | 大学卒業 | |
2016年4月~2019年7月 | 一般企業に勤務 | |
2020年1月 | 協力隊員としてルワンダに赴任 | |
2020年3月 | コロナ禍による一斉帰国 | |
2021年3月 | ルワンダに再赴任 | |
2022年2月 | 帰国 | |
2022年3月 | 株式会社スノーピークに入社 |
会社員時代、新しいことに挑戦したいと考えた大石祐助さんが会社の先輩に相談したところ、「未知の世界を見て視野を広げてから、改めて自分が何をしたいのか考えては」と教えてもらったのが協力隊だった。先輩の言葉を聞いて感銘を受けた大石さんは協力隊に応募した。
合格して赴任したのは首都に近いルワマガナ郡の郡庁。共同組合や農民組織など地域の小規模グループの状況を把握し、運営をサポートするのが要請内容だった。しかし、コロナ禍により赴任1カ月で一斉帰国となり、約1年間の待機期間を過ごした。
再赴任後はグループを巡回することから始めたが、訪問しても「お金をくれ」「物をくれ」と言われるだけで、心が折れそうになることもあった。しかし諦めずに何回も顔を出し、現地語で積極的にコミュニケーションを取ったところ、「徐々に心を開いてくれて、実はこんなことで困っている、と本音を話してくれることが増えていきました」と振り返る。
印象に残っているのは、大学進学を目指して炭の販売をしている男性に、毎日帳簿をつけるように促し、頻繁に会いに行くなどして、継続できるようサポートしたこと。男性からは帰国後に「あなたのおかげで進学できた」と嬉しい連絡がきた。
任期終了後の進路について考え始めたのは1年間の待機期間中で、目標は“恩送り”を実践できる会社で働くこと。恩送りとは、恩を与えてくれた人に返すのではなく、別の人、次の人に送るという意味だ。協力隊参加以前、会社員とし
てがむしゃらに働き、何のために生きているのかと悩んでいた時に支えとなった言葉だ。任期終了を前にして、自分らしい恩送りについて考えていた時に読んだのが、現在勤務している株式会社スノーピークの社長の著書だった。
「『地球上の全てのものに良い影響を与える』という理念を大切にして実践していることに共感しました。ここなら自分が思う恩送りを実践できる、この会社で働きたいと思いました」
実は同社の求人に、大石さんは2回エントリーしている。1回目は任期終了の少し前。このときは採用に至らなかったが諦めきれず、帰国直後に再度エントリーした。そこから採用決定までは早く、帰国の翌月に入社となった。
そんな大石さんの夢は、世界中の人と焚火を囲むこと。「焚火の前では、性別も国籍も役職も関係なく、人対人として本音で話せるんです。いつか、そんなグローバルなイベントを実現させたいです」。
任期終了の3~4カ月前に株式会社スノーピークの求人に応募しましたが採用されませんでした。そこからは、JICAのPARTNERや転職サイトをチェックし、業種は問わず“恩送り”を実践できると思える会社を探しました。具体的には、国際協力、人材教育、出版などの分野をチェックし、3社ほど採用試験を受けました。
他社の採用試験を受けるのと同時進行で、スノーピークのホームページで採用情報を再度確認したところ、「キャンプのイベント」という前回とは違う職種の募集が出ていたのですぐにエントリーし、履歴書と職務経歴書を提出しました。志望動機には、社長の著書を読み、社長の考え方や会社の理念に共感したこと、この会社であれば自分が思い描いている恩送りを実践できると考えたことを書きました。アピールポイントには、協力隊の活動を通じて学んだこととして、諦めない粘り強さと、自分にできることを考え行動し続ける力を挙げました。
コロナ禍のため帰国後約2週間はホテルで隔離されていて、1次面接はホテルからオンライン面接となりました。面接の担当者は現場マネージャーで、志望動機や協力隊の活動で苦労したことなどを聞かれました。
2次面接は自宅からオンラインで、応募した部署の本部長らとの面接でしたが、聞かれたのは志望動機だけでした。会社の理念への共感や恩送りの思い、協力隊での経験を熱く語ったところ「もう大丈夫です」と、あっさりと面接を打ち切られてしまったので、これは落ちたと思ったのですが、まさかの採用でした。後で聞いたところ、採用してもよいと判断したため、すぐに終わらせたということでした。
プロモーション課に所属し、キャンプのイベントを企画・運営しています。イベントは参加者に自然の中に身を置いていただき、その環境を感じてもらうことが目的です。織物や染め物など自然素材から生まれた日本の伝統文化を体験しながらキャンプを楽しんでもらうイベントなども実施しています。自然を体感してもらうため、キャンプは悪天候でも実施しています。夜中に大雨に見舞われることもありましたが、テントを補強して安全を確保したところ、翌朝、参加者から、私たちスタッフがいるから安心できたと言っていただけた時など、やりがいの多い仕事です。
最初は難しいと思うのですが、自分の生きる意味、人生の理念を、仮でいいので持って欲しいと思います。「違うな」と感じたら変えてもかまいません。それを繰り返していくうちに、自分はこのために生きているのだと感じる時がきます。それを基準にして、その後の人生を考えていけば、間違った選択にはならないと思いますし、未来は広がっていくと私は信じています。途上国での協力隊の活動は、それを考える上で非常にいい環境だと思いますし、時間も十分にあります。ぜひ考えてみてください。
https://www.jica.go.jp/volunteer/obog/career_support/index.html
Text=油科真弓 写真提供=大石祐助さん