岩塚善哉さん

ナミビア/小学校教育/2018年度1次隊・愛知県出身

塀に並んだ謎の物体…?
ナミビア人との暮らしは驚きの連続

   小学校教育隊員としてナミビア北部の町で活動した2年間、私は教職員宿舎でナミビア人の先生たちと男3人の共同生活をしていました。そのうち1人は30代と若いながらも高校の校長を務める人だったのですが、ナミビア人としても奔放な性格で、何かにつけて驚かされることばかりでした。

   ある日、彼が急に持ち込んできたのは何羽ものウズラのひな。学校の仕事と別に牧畜も営んでいた関係で飼い始めたそうで、それを郊外にある自分の牧場ではなく、共同の住まいで飼育しようというのです。納戸の床におがくずを直接敷いて半ば放し飼い状態な上に、そのスペースが私の個室の隣だったのでずっとピヨピヨと鳴き声が…。

   さらに別の日、私が外から帰ってくると、宿舎の塀の上に何やら土の塊のようなものが並べられ、天日干しになっていたことも。これは何?と校長に尋ねると、返ってきた答えは「ゾウのふん」。聞けば、ふんを乾かして焚いた煙には、鼻の通りを良くしたり蚊を追い払ったりする効果があるのだとか。後に彼の牧場で、野生のゾウがボトボト落として回ったモノを拾い集めたこともあるのですが、ほとんど臭わず、本当にただの土くれを持っているような感じだったのは意外でした。

   振り返ると、常に動物の存在が身近だったナミビア生活。放牧されているヤギにいつも家庭ごみを荒らされてヤギが嫌いになったり、誰かが絞めた家畜の血抜きに私の鍋を使っている(!)のを見つけて怒ったりと、エピソードは切りがありません。どれも日本ではまず体験できないことばかりで、つくづく貴重な日々だったと思っています。

あの日の、地球の、あの場所で。

Illustration=牧野良幸 Text=飯渕一樹(本誌)