今月のお悩み私が配属されている自治体ではごみ収集をしていますが、
それでも街にごみが飛散していて、きれいになりません
(環境教育)

   配属先の自治体には、型式は古いもののごみ収集車があり、週に3回ほどごみ収集をしています。街を掃除する清掃員も働いていますが、それでも街にはごみが飛散していて、一向にきれいになりません。配属先は、予算不足でごみ収集車や清掃員が足りないので仕方がないと諦めています。改善することは無理でしょうか?

土井先生からのアドバイスハード面の対策の前に、ソフト面での工夫を考えよう
街の状況にごみ収集システムはマッチしていますか?

   私が環境コンサルタントとして活動してきた中で、よく見てきた失敗事例があります。立派なごみ収集車を援助でもらって使っているが、街にはごみが飛散していて一向にきれいになっていない状況です。その原因は一般的に、ごみ収集日が決まっていないため、ごみが何日も収集場所に置いてあることです。そして、途上国の街には野良犬やサル、カラス、ヤギが多く、ごみを食い散らかしてしまうのです。

   東京はクリーンな街として世界で有名です。しかし東京でも、出したごみをカラスが散らかすという問題があります。それを防ぐため、自治体は住民に、ごみを収集日の朝に出すことと、ごみにネットをかけることを要請しています。住民がそれに協力し、収集車が予定通りに回収することで、街はきれいに保たれています。

   私がモンゴルのウランバートル市のごみ収集改善計画を作成した時には、まずどんな排出ルールなら機能するかを検討するため、住民のライフスタイルや、ウランバートルで一般的なアパートの構造を調べました。すると多くのアパートがオートロックで、1階に管理人が常駐していました。たくさんの住民と意見交換をし、さらに限定された地域で試した結果、私は次のルールを提案しました。

   ①住民は決められたごみ収集日にごみを1階ドア近くに置くこと、②ごみ収集車は収集時に『おうま(お馬の親子)』の音楽を流すこと、③管理人は音楽が聞こえたら、1階のドアロックを解除すること、の3つです。

   ごみの排出ルールを明確にし、収集車が来たことを音楽で知らせることで、排出と収集のタイミングを合わせ、街にごみが飛散することを防ぎました。

   実は『おうま』を流すアイデアは、昔の日本で行われていたものです。「ベル収集」といって、鐘を鳴らしたり、音楽を流したりして、収集時間を知らせていました。それを現代のウランバートル社会に適用させたのです。

   このように、収集車や清掃員といったハード面の対策以上に重要なことは、現地の人々に協力してもらうというソフト面の対策です。協力を得るにはルールを明確にすることです。小さい地区に限定して調査し、排出ルールを決め、試行させてもらってはどうでしょうか?ソフト対策だけで、街をきれいにできるかもしれません。

今月の先生
土井 章さん
土井 章さん

サモア/土木施工/1980年度4次隊・千葉県出身

工業大学を卒業後、建設会社に勤務。海外でインフラ整備に携わる希望をかなえるため、協力隊に参加しサモアの公共事業省土木課で活動した。帰国後の1990年に総合コンサルタントの国際航業株式会社に就職し、環境コンサルタントとして活動。一方で、一般社団法人日本防災プラットフォームの事務局長、一般社団法人協力隊を育てる会常任理事などを兼任し、企業と民間団体の立場から社会貢献を続けている。


Text=阿部純一(本誌) 写真提供=土井 章さん