水野美加さん

コロンビア/皮革工芸/2018年度2次隊・山口県出身(山口県JICAデスク)

距離の取り方が意外とシビア?
一筋縄でいかないボゴタの人間関係

   私が活動したコロンビアの首都ボゴタの住民は音楽や踊りが大好きで、基本的に明るいキャラクターの人たちばかりでした。しかし、すぐに親しい友人として深い関係をつくれるかというと、そうでもないのがボゴタっ子の気質なのです。

   まだ赴任したばかりの頃のこと、誰もが気軽に話しかけてきて冗談交じりの会話も盛り上がるのに、話題が決して深いところまでいかないことにふと気づきました。職場のことや社会情勢一般などの表層的な話ばかりで、相手のことをつかめたようでつかめないのです。

   私の見たところでは、ボゴタには地方から来て成功しようと忙しく動き回っている人が多く、人間関係がその場限りになりがちな傾向が強くありました。さらに社会階層制度などの影響か、人との距離感に段階的な線引きが厳然として横たわっている印象も。そのため、食事や踊りなどで一緒の時間を何度も過ごし、徐々に距離を縮めていかなければ、なかなか内側に入り込めません。会話内容が家族などのことに及ぶようになると、段階が一つ進んだ!といった具合ですね。

   そんな人間関係の勘どころをつかむまでに時間がかかったのですが、考えてみれば、日本人同士の距離感も似たようなものでしょう。実際、私も任期の終わり頃には、コロンビアにいながら、人間関係の面ではまるで日本にいるかのような錯覚を感じていました。仲良くなるためのやり方や取っかかりが文化ごとにまちまちで、一見全く違う人々のように思えてしまっても、根本は同じ人間なのだな、と今振り返って改めて感じています。

あの日の、地球の、あの場所で。

Illustration=牧野良幸 Text=飯渕一樹(本誌)