就職ストーリー
金澤範幸さん

パプアニューギニア/コンピュータ技術/
2016年度2次隊・大阪府出身

就職先 日本ミシュランタイヤ株式会社
事業概要 乗用車や二輪車、建設機械、農耕機械、航空機などの各種タイヤの開発・販売を手がけるほか、タイヤ点検やトラブル対応などタイヤに関連したサービスも展開する。
略歴 1990年    大阪府生まれ
2012年3月    大学卒業
2012年4月~16年5月    SEとして一般企業に勤務
2016年10月    協力隊員としてパプアニューギニアに赴任
2018年10月    帰国
2019年1月    日本ミシュランタイヤ株式会社入社

ICTの知識と技術を活用し
ビジネスを通して途上国に貢献したい

   高校時代にオーストラリアに留学したのを機に海外への関心が強くなり、将来は協力隊で開発途上国の人の役に立ちたいと考えるようになった金澤範幸さん。ICT分野の知識は必ず途上国で求められるだろうと、大学卒業後はシステムエンジニア(以下、SE)として一般企業に就職。知識と技術を身につけてから、コンピュータ技術隊員として協力隊に参加した。

   配属先はイーストニューブリテン州の州都ココポにある公立高校。経済・社会的な発展度の高い同州内でも特に学力の高い進学校で、学内のICT化・ペーパーレス化を目指しており、金澤さんにはインターネット引き込みやコンピュータルームの移設・増設、学内の無線LAN環境の構築、カウンターパートの知識向上が期待されていた。3代目隊員ということもあり学校側の受け入れもスムーズだったが、教員らのセキュリティ意識が低いためにコンピュータウイルスがまん延していたことから、要請内容に加えてセキュリティに関するワークショップを実施するなど、ICT分野のリテラシー教育にも力を入れた。

就職ストーリー
配属先の教え子たちと共に着飾った独立記念日の様子

   帰国後の進路を考え始めたのは、任期の後半に差しかかった頃。任地での活動を続けていく中で、ICT4D(※)を学ぶためにイギリスの大学院に留学したいと思うようになっていった。ところが任期が終わるタイミングで、利用を検討していたJETRO(日本貿易振興機構)の大学院進学のサポート事業が終了。帰国後しばらくは留学か就職か決められずにいたが、最終的に大学院進学のハードルについて見直し、進路を就職活動に切り替えた。

   採用情報を探すにあたり、金澤さんは2つの軸を決めた。一つは自身の経験を生かせるICT分野であること、そしてもう一つは、“自動車に関わる仕事”であることだった。「協力隊を経験して途上国では自動車が必要不可欠なライフラインであることを実感し、その業界に、強みであるICTを通じて関わりたいと考えました」。

   そこからの行動は速かった。すぐに転職支援サイトに登録し、紹介される企業に次々エントリーをしていった。日本ミシュランタイヤ株式会社もその一つ。海外経験を生かせる外資系グローバル企業であることと、面接で社内の雰囲気に好感を抱いたことなどが決め手となり、採用の通知を受けると、エントリーした他社の結果を待たずに入社を決めた。

   「当社は途上国にもタイヤの供給を行っていますので、個人的な夢としては、ビジネスを通じて途上国に貢献していけたらと思っています」

   入社から6年余り。協力隊時代に目指していた思いは、今も変わらない。


   ※ICT4D…ICT for Developmentの略で、ICTを活用した社会経済開発のこと。

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帰国2018年10月

帰国1カ月後くらいから就職活動を開始しました。転職支援サイトに登録し、ICTと自動車という2つの条件を満たす採用情報をエージェントに紹介してもらうというやり方です。エントリー先はおよそ60社に上ったと思います。

2

書類提出2018年11月上旬

エージェントからの紹介に日本ミシュランタイヤのSE募集の情報があり、履歴書と職務経歴書、英文のレジュメ(経歴書)を提出しました。自己PRでは、自ら課題を見つけて対応する行動力をポイントに挙げました。協力隊の活動において、自身の知識を生かしながら、インターネットの引き込みを住民も巻き込んでプロジェクトの形で行ったこと、SE時代に培ったインフラネットワークの知識を生かして学内ICTの改善を行ったことなど、具体例を挙げながら記載しました。

3

1次面接2018年12月上旬

1次は人事担当者との電話面接の形式でした。私が仕事をする上で大切にしていることは何か、協力隊でどんな活動を頑張ってきたかなどを聞かれました。やりとりでは、協力隊時代にプロジェクトを進める中で人と人との信頼関係を築くことの大切さを認識した経験を挙げ、その経験がグローバル企業である日本ミシュランタイヤでも生きるはずだと話したことを覚えています。

4

最終面接2018年12月中旬

最終面接の日はそれぞれ40分くらいの面談が3回行われました。1回目では、人材開発担当者から私が会社でどのようなキャリアを望んでいるのかを聞かれました。2回目は情報システム部の実務担当者、3回目は同部のマネージャーとの面談で、これまでの実務経験から得た私の強み、経験と募集職種がマッチしているかの確認など、より実務に近い内容でした。英語力を確認するため、英語による質疑応答もありました。

採用決定2018年12月下旬

現在の仕事

今はマーケティング部でICTを活用したマーケティングに携わっています。当社は、卸業者や小売店をクライアントとするB to B(Business to Business)事業が主となるため、業者向け販売ポータルサイトの運用や、卸業者からタイヤを仕入れて販売する業者への拡販支援といったことを、デジタルの側面から行うのが私の業務です。外資系ということもあって社員一人ひとりが自らの業務の専属担当者となっており、同じ社内でもそれぞれが個人事業主のような働き方ですが、そこが面白くもあり、やりがいを感じています。

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国内で開催された展示会のブースにて

後輩へメッセージ

協力隊時代は、大学院を経て国際機関に就職し、国際協力の世界で活躍する未来図を思い描いていました。結果的に就職の道を選んだのですが、その選択を面接でどう説明するか考えた時、ビジネスの視点でいうグローバルな成長と、社会発展を支援する国際協力のゴールは実は同じで、就職と進学のどちらを選んでも自分が目指すキャリアに通じている、という見方に至りました。選択肢は一つではないという視点を持った上で、帰国後の進路を考えてほしいと思います。

JICA 海外協力隊ウェブサイト 「進路開拓支援のご案内」

https://www.jica.go.jp/volunteer/obog/career_support/index.html

JICA 海外協力隊ウェブサイト

Text=油科真弓 写真提供=金澤範幸さん