
中華人民共和国/日本語教育/2014年度1次隊・愛知県出身
中華人民共和国の中部、湖北省の省都である武漢市は、他の地域の人がしばしば「武漢の人間は気が荒い」と言うほど、激しい気風のイメージがあります。隊員として暮らすと、周りの皆の接し方はなるほど荒々しく、暑苦しくさえありましたが、同時に情熱的で人情味があり、異国から来た私を身内同然に受け入れてくれる温かい人たちでした。
特に配属先の職業訓練校で仲良くなった同僚の先生たちとのつき合いは文字どおりの家族ぐるみ。私も含め、持ち回りで誰かが自宅に人を呼んで夕食会をするのが日常の光景でした。みんな家族総出でやってきて、火鍋をつついたりしながら大量のお酒でうたげを繰り広げるという、本当に楽しい日々を満喫させてもらいました。
中国の宴席や酒席で定番の習慣は「干(ガン)」、すなわち乾杯で、本当に杯を乾かす一気飲み!私は赴任後初めての旧正月の時、祝宴で張り切って配属先の上長らに敬意を示そうと強い酒を「干」してひっくり返る体験をしました。そんな時に「無理せず楽しい酒を飲もうな?」と気づかってくれると共に、果敢に挑んだ私を一層受け入れてくれた様子でもあった先生たち。任期終了から1年余りたった頃、中国の別の地域で職に就いていた私が休暇で武漢へ“帰って”先生の一人に連絡すると、本人は学校で仕事中だったのですが、自宅で待つようにと言われました。そして彼のお母さんとテレビを見ながら昼食を取り、ゴロゴロして待つという、実家に帰ったような時間を過ごすことに。
まさに第二の故郷というべき武漢のことが今でも大好きで、私にとって特別な愛着のある土地です。
Illustration=牧野良幸 Text=飯渕一樹(本誌)