2011年に当時のJICAオフィシャルサポーターに就任し、これまで14カ国を訪れ協力隊員の活動に触れてきましたが、どの隊員からもとても大きなパワーを感じました。
あるケニア隊員の任地は、水不足のため川からの水くみが欠かせないところでした。隊員に誘われて私も水くみを体験したところ、「こんな不便なところで暮らしていけるのかな?」と心配になるほどでした。ところが本人は現地に溶け込んで楽しそうに生活していて、その頼もしい姿が印象的でした。
ミャンマーでJICAプロジェクトのワークショップを視察した時には、参加していた住民から、「かつて協力隊員が井戸を整備してくれて、安全できれいな水が手に入り、生活が楽になった。この井戸を後世に残していくことが私たちの役目だ」と伺い、活動の成果が本人の帰国後も“足跡”としてしっかり残っていることに感動しました。
これまでに会った隊員の中にはスポーツ分野の方も大勢います。
途上国の学校では体育の授業が十分に行われておらず、体力水準が低い子どもが多く見られます。今もさまざまな派遣国で隊員が基本的な運動を教えていますが、子どもの頃からしっかりと基礎体力をつけていくことは大切です。
また、「時間やルールを守ること、チームメンバーやコーチら皆と協調性をもって取り組むことなど、競技以前のことから指導している」という話も隊員からよく聞きます。そういった人間性を育てる指導は、子どもたちが大きくなった時に、必ずプラスになることです。ブータンで陸上競技の教室を行った時も、「僕は陸上競技をとても真剣にやってきたけれど、それがなかったら、きっと良くない道に入っていたと思う」と選手の男の子が話してくれて、スポーツには、人を本気にさせる力、更生させる力があるのだと感じました。
私は、隊員の方々に対しては尊敬の気持ちでいっぱいです。皆さん、自分に何が求められていて、どう動けばよいか、置かれた環境で工夫しながら達成していく力に長けていると思います。
今、活動中の隊員の方の中には、活動が思うようにいかず、悩まれている方もいるかもしれません。しかし、小さな一歩も必ず誰かの人生を照らす光になります。自信を持って、活動に取り組んでほしい。そして、任期終了後は、培った対応力やコミュニケーション能力を生かして、国際協力や途上国に関する見識を一層広げてほしいです。
協力隊発足から60年間にわたり活躍してきた約5万7,000人の隊員たちの足跡は、世界のいたるところに残っています。それは私たち日本人の誇りでもあります。