就職ストーリー
大河原沙織さん

ペルー/環境教育/2018年度4次隊・山形県出身

就職先 旭川市旭山動物園
事業概要 「行動展示」で知られる動物園。動物の飼育のほか、野外観察会や出張授業などを通じた環境教育、環境保全活動、調査・研究も行う。
略歴 1994年    山形県生まれ
2018年3月    酪農学園大学卒業
2019年4月    協力隊員としてペルーに赴任
2020年4月    コロナ禍により一斉帰国
2020年4月~2021年3月    日本からオンラインで配属先を支援
2021年3月    任期満了
2021年4月    旭川市旭山動物園に入職

野生動物を取り巻く環境を伝えることで
動物と人間の共存の懸け橋になりたい

就職ストーリー
パラカス自然保護区で動物観察ワークショップを行う大河原さん

   子どもの頃から動物が好きだった大河原沙織さんは、北海道の酪農学園大学で環境学を専攻し、野生動物管理学などを学んだ。大学の教員や先輩に協力隊経験者がいたこともあり、協力隊に参加したいと思うようになっていった。授業で旭山動物園がマレーシアのサバ州で行っている環境保全活動「ボルネオへの恩返しプロジェクト」を現地で見学したこと、フィジー留学やオーストラリアでのワーキングホリデーで海外生活を経験したことでその思いはさらに強くなり、卒業後に環境教育隊員として協力隊に参加した。

   任地はペルーの沿岸部にあるパラカス自然保護区。約33万5,000haのエリアに海と砂漠が広がっており、オタリア(南米に分布するアシカ科の動物)やフンボルトペンギン、フラミンゴなど多様な野生動物が生息している。この区域の生物多様性を守るための環境教育や啓発活動を地域住民に対して行うことが要請内容だった。

「子どもたちは保護区にどんな動物がいるのか知らず、目にする機会もほとんどありません。まずは地域にどんな動物がいるのかを知り、生物多様性に興味を持ち、自然環境保全の大切さを感じてもらうことが私の任務でした」

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大河原さんは環境教育を行う小中学校を増やすことにも取り組んだ

   3代目隊員だった大河原さんは、前任者が訪れていた小中学校の他にも巡回先を増やすと共に、1年間のカリキュラムを作り、観光客を対象にした動物の解説やごみ分別などのワークショップも企画。また隊員に任せ切りになりがちな住民への環境教育を配属先の職員も行えるような仕組み作りも行った。

   コロナ禍により帰国してからは、環境教育のための人形劇を動画にしてオンラインで発信するなど、配属先への支援活動を継続した。また、地元である山形の小中学校からの依頼で、ペルーでの活動について生徒たちに紹介するなど、国内での社会還元にも取り組んだ。

   就職先である旭山動物園については、任期中から「働けたらいいな」と漠然と思っていたという。

「動物を見る機会が少ないペルーの子どもたちを見て、世界の動物を間近に見られる日本の動物園に大きなポテンシャルを感じたのが一番の理由です。学生時代に旭山動物園のプロジェクトを見学していたことも大きかったと思います」

   現在は飼育員として働きながら、恩返しプロジェクトを含むマレーシア・サバ州の生物多様性保全プロジェクトを担当。同プロジェクトがJICA草の根技術協力事業に採択されてからは動物園とJICA間の調整役も担うなど、活躍の場を広げている。

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求人情報をチェック2020年秋~

帰国後しばらくしてから、環境教育に関わる企業や動物園の求人情報をインターネットで探し始めました。その流れで旭川市のハローワークのウェブサイトをのぞいた時、旭山動物園が飼育員を求人しているのを見つけました。旭山動物園のサイトにはハローワークの指示に従うよう書かれていたのですが、当時は山形県在住で旭川まで行くことは難しかったため、山形県内のハローワークに相談しました。

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書類提出2021年1月

山形のハローワーク経由で履歴書を旭山動物園に郵送しました。履歴書には、協力隊の活動を通じて、野生動物を直接見ることができる動物園のポテンシャルを感じたこと、さらに動物園の生き物を通して、その動物が本来生息している自然環境について伝えられる飼育員になりたいと考えていることなどを書きました。

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オンライン面接2021年4月上旬

旭山動物園からは2カ月以上連絡がなく不採用だろうと諦めていたのですが、3月末にオンライン面接をしたいとの連絡があり、その1週間後に副園長2人とオンライン面接を行いました。面接では、どんな飼育員を目指しているのか、動物園でどんなことをやりたいのかを聞かれました。それに対して、学生時代に旭山動物園によるマレーシアでのプロジェクトを見学したり、協力隊員としてペルーの自然保護区で活動をしたりしていた経験から、野生動物と人間のあつれきから生じる問題はどの国にもあると実感していること、そうした動物と人間を取り巻く問題を伝えることで環境教育につなげ、動物や自然と人間の懸け橋になるような飼育員になりたいと話しました。

採用決定2021年4月

現在の仕事

最初に担当したのはモルモット、去年からはアヒルとニワトリの飼育員を務めると共に、環境教育担当として小学校への出前講座、動物との「ふれあいガイド」などを行っています。コロナ禍で活動が停滞してしまったマレーシアでの恩返しプロジェクトに付随する新たなプロジェクトが始まり、私も担当しています。新プロジェクトは2023年3月にJICA草の根技術協力事業に採択され、畑や人里に現れたゾウを一時的に保護して森に帰すための保護施設での飼育技術向上と環境教育活動のレベルアップを目的としています。計画では今年7月から現地で動き始める予定です。

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飼育員として来園者に動物と親しんでもらう大河原さん

後輩へメッセージ

私自身は帰国後にJICA PARTNERのキャリア相談を利用しました。その際、現場で働きたいのか、マネジメントをする側になりたいのか聞かれたことで、自分は現場に出て、そこにいる人たちと一緒に仕事をしたいのだと気持ちを整理することができました。また、学生時代から野生動物の保護に関わる人たちは憧れの存在であり、そうなりたいという思いも進路を考える上での指針になりました。協力隊での経験は自分の大きなベースとなるはずです。それを踏まえて自分がやりたいことは何なのか、見つけていってほしいです。

JICA 海外協力隊ウェブサイト 「進路開拓支援のご案内」

https://www.jica.go.jp/volunteer/obog/career_support/index.html

JICA 海外協力隊ウェブサイト

Text=油科真弓 写真提供=大河原沙織さん