地域活性化賞

庄田清人さん
庄田清人さん

マラウイ/コミュニティ開発/2014年度2次隊・福岡県出身

一般財団法人ちくご川コミュニティ財団 副理事長 九州北部を東西に流れる筑後川の周辺地域を対象に、社会課題解決に取り組む市民団体などをサポートする組織。個人や企業からの資金・技術・情報などを、活動団体へと提供する立場で取り組んでおり、休眠預金等活用事業の資金分配団体でもある。2024年には民間財団としては九州初の奨学金事業を開始。不登校児童のフリースクール利用料などを補助している。

現役隊員へのメッセージ

協力隊では、これは放っておけない!と思う場面が頻繁にありますが、帰国後はそうした社会課題に直面する機会が減り、何かをする原動力が弱まりがちです。そうならないよう、例えば会社勤務の傍らでNPOに参加するなどして、隊員時代の感覚を持ち続けてほしいですね

協力隊経験をローカルに生かす
地域の社会課題解決のための伴走支援

   不登校、引きこもり、貧困、虐待、発達障害、外国にルーツを持つことなど、日本で生きづらさを抱える子どもや若者は増え続けている。彼らに光を届けるのが「ちくご川コミュニティ財団」副理事長の庄田清人さんだ。休眠預金等活用事業における「プログラム・オフィサー(以下、PO)」として、これまでに子どもの学習と食の支援を行う無料塾、不登校児を支える団体、若者の自立を支援する団体などを伴走支援してきた。

   POは、助成を受ける団体と共に活動しながら、事業が適切に実施されるように見守る役割を担う。事業計画の立案から資金管理、事業監査、広報・渉外まで、高度なスキルと知識が求められるが、「その基礎は協力隊時代に培った」という。2014年にコミュニティ開発隊員としてマラウイに渡り、低栄養の子どもと家族に寄り添い、栄養教育やヘルスパスポート(母子手帳)の改訂に奔走した庄田さん。その中でPCM(プロジェクト・サイクル・マネジメント)手法などを実地に学んだことはもちろん、“社会課題を見つけて解決する活動”への思いが深く刻み込まれた。

「物資的には貧しかったけれど、マラウイの子どもたちは毎日楽しそうで目が輝いていました。一方で帰国後、地元の福岡県飯塚市でまちづくり事業やSDGs教育などに関わる中で、不登校のような日本の子どもたちの現状を知り『どうにかせな、放っておけん』という気持ちが強くなりました」

   そんな当時に出会ったのが、19年に設立されたちくご川コミュニティ財団だった。福岡県で初めて市民が立ち上げたコミュニティ財団(※)で、筑後川が流れる地域で社会課題の解決に取り組むNPOなどに対して資金面・非資金面で支援活動を行っていた。20年、財団が休眠預金等活用事業の資金分配団体として選出されたタイミングで、庄田さんは本格的に参加することになった。

第3回社会還元表彰   受賞者たちが今に至る道
ちくご川コミュニティ財団で育成しているPO人材たちと庄田さん

「最初は未経験の業務の連続で、やることも多岐にわたってきつかった。隊員時代と比べてより多くの人と関わり、1億円規模のプロジェクトを動かすということの難しさを痛感しました」

   10年以上入出金などの取引のない休眠預金を活動資金とすることから、外部からの厳しい意見や批判にさらされることもある。それでも、「何のためにやっているのか、目的を再確認しながら、関わる相手と信頼関係を築いていくことが大事です」と力を込める。「目の前の課題は尽きませんが、立ち返るパワーをくれるのはマラウイでの原体験。現場で子どもや若者たちの姿を見ることが原動力になっています」。

   現在、庄田さん一人だったPO人材は協力隊経験者も含めて8人に増え、それぞれの強みを生かしながら活動ができる体制になった。今年6月に副理事長となった庄田さんは彼らのマネジメントをしながら、今後はPOの育成にも力を入れ、「人材の環流」を起こしたいと意気込む。

「協力隊経験を日本で生かし、日本での経験を海外で生かす。グローカルという言葉を実践していきたいと思います」

   差し出す手を結び合う手にして、庄田さんの挑戦は続く。

※コミュニティ財団…事業対象の地域・コミュニティを特定して社会課題解決などの慈善的・公益的な活動を行う非営利団体のこと。

Text=秋山真由美  写真提供=庄田清人さん