グアテマラ/小学校教育/2016年度1次隊・愛知県出身
NPO法人 幸縁 代表理事 「支援から幸縁へ」という理念の下、グアテマラの子どもたちの教育向上を目的に活動を展開。現地での学習塾運営やオンラインの英語学習プログラムのほか、経済的理由で進学に困難がある子どものために奨学金や資金サポーター制度を通じた支援も行う。また、日本とグアテマラの学校のオンライン交流による国際理解教育の推進にも取り組む。NPOとしての法人化は2022年。
中学校教員として5年の経験を積んで協力隊員としてグアテマラへ赴任した近藤さん。「思いついたことはすべてトライしたけれど、芽が出たものは少ない2年間だったと思います。一方でかけがえのない出会いもあり、小さな幸せを喜べるような時間でもありました」と振り返る。
帰国後は教職に復帰して多忙な日々を過ごす中、グアテマラでの時間が幻だったかのように消えていくのを切なく感じたという。
「週に1回、現地で知り合った女の子の日本語学習をオンラインで続けていたのですが、その時は職務に忙殺されて乾いた心が潤うのです。揺るぎない感覚だったので、グアテマラとつながっていたほうが私自身が豊かな人生を過ごせるのだと確信しました」
近藤さんがグアテマラを再訪したのは2019年9月。帰国から約1年後のことだった。協力隊時代に親交があった教員と再会し、その教え子の中から、優秀でありながらも家庭の事情で進学できそうにない小学6年生の児童を1人紹介してもらって個人資金で学費のサポートを始めた。「現地に信頼できる大人がいて、確実に資金を学費に充ててくれれば、日本からグアテマラの子どもの支援ができる。これは事業としてやっていけるに違いない、と感じました」。
21年8月からは7カ月間現地に滞在し、オンラインでの英語交流レッスンを行い、奨学金事業で選んだ子ども8人にも英語学習プログラムを提供した。
「学費・インターネット費用を出してくれたり、英語をボランティアで指導してくれる日本人サポーターは、当初は私の知り合いの中から募りました。さらにその人たちの知り合いといったコネクションで広がったことに加え、SNSでボランティア募集もしています」
サポーターとして名乗りを上げてくれた人には近藤さんがオンラインで面会して丁寧に事業を説明している。サポーターは子どもと一対一で直接関わるため、どんな人物かを見極めることは大切な役割となっている。
さらに、日本の学校ともつながっていくためには社会的な信用が必要と考え、サポーターの中から10人ほどの方に正会員になってもらいNPO法人 幸縁を立ち上げたのが22年の6月。
近藤さんはその間も日本で教員として働いていたが、早朝からNPOに関する打ち合わせと授業の準備を行い、夜は英語のレッスンを見る毎日だった。
「NPOの業務は団体代表として正解がない中で決断することが多くて精神力を要します。24年3月に疲労で動けなくなり生徒に迷惑をかけてしまったこともあります」
そのため、いったんは教職から離れ、しばらくはNPOの基盤づくりに集中してきた。「常に自信はありませんが、相談できる仲間が増えた今、気持ちの面では大いに楽になりました」。
Text=大宮冬洋 写真提供=近藤 咲さん