就職ストーリー
田邉一馬さん

エチオピア/体育/2017年度1次隊・福岡県出身

就職先 TSK株式会社
事業概要 本社は富山県。物流デザインのコーディネーターとして、
包装資材の企画・設計・提案、物流効率を最適化する改善提案などを行う。
略歴 1992年    福岡県生まれ
2017年3月    大学卒業
2017年7月    協力隊員としてエチオピアに赴任
2019年7月    帰国
2019年10月    TSK株式会社入社

自分で考え、自由に働きたい
業種よりも重視した“働き方”

就職ストーリー
グラウンドで生徒たちにサッカーの指導をする田邉さん

   日本で体育教師になることを目指して教育学部に通っていた田邉一馬さんが海外を志向する転機となったのは、オーストラリアに留学している友人に会いに行って海外に興味を持ったこと。自身も大学を休学してワーキングホリデーでオーストラリアに行き、海外で活動したいという思いが一層強くなっていく中で思い出したのが、先の友人との会話に出てきた協力隊のことだった。復学した大学4年の春にさっそく応募し、卒業後すぐに体育隊員としてエチオピアに赴任した。

   配属されたのは、州都から150㎞ほど離れたコルムという小さな町の小学校。外国人自体が珍しいような地方で、高学年担当の教員に体育の指導法を助言し、授業の改善を支援することが要請内容だった。先生が学校に出勤しないなど、活動が思うように進まないことも多々あったが、活動の中で田邉さんが意識していたのは、先生自身に考えてもらうこと。「日本で学んだことが絶対で
はないので、日本のやり方を例に挙げながら、エチオピアではどうするのがいいのか、話し合うようにしていました」。印象に残っているのは、1人の先生にマット運動の前転の教え方を伝えた時のこと。「まずは先生ができるようになり、それを子どもに教え、成功したら同僚の先生にも共有してくれました。子どもが前転に成功すると先生たちはとても喜んでいて、私も嬉しかったです」と振り返る。

   赴任中から、帰国後の進路は企業に絞った田邉さん。重視していたのは「自由に働けること」と「海外で働けること」の2つだった。大企業でそれを求めるのは難しいと考え、帰国すると業種は問わず中小企業の採用情報を探した。そして転職エージェントから送られてきたのが、梱包材を製造するTSK株式会社(以下、TSK)の情報だった。同社は海外唯一の子会社であるTSKベトナムで現地採用の日本人社員が退職してしまい、すぐにでもベトナムに赴任できる営業人材を探していた。複数の会社にエントリーしていた田邉さんは他に6社から内定をもらっていたが、最終的に社長の人柄とアットホームな会社の雰囲気に引かれ、同社への入社を決めた。

   それから6年。入社当時は田邉さん1人だったグローバル事業推進部は、社員5人に増員。メキシコ進出が決まると田邉さんはその責任者に抜てきされた。現在はベトナム、メキシコ、日本を忙しく飛び回る日々を送っており、まさに就職活動で重視した2つを体現している。

「梱包材というコストダウンの対象となりがちな商材で勝負をするには、信頼関係が大切です。だからこそ、お客さまとパートナーシップを築いていくところに、一番のやりがいを感じています」

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就職活動2019年8月

帰国後、JICAの帰国隊員向けの説明会で知った就職支援セミナーに参加したり、進路相談カウンセラーに相談したりしました。同時に、転職エージェントに登録したのですが、登録の際には、駐在や出張で海外に行けること、また自分で考えて自由に行動できる中小企業を希望。自己PRには、コミュニケーション能力と行動力があることをアピールしたと記憶しています。

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エントリー2019年9月

転職エージェントから何日かに1回、希望に合った会社のリストが送られてきていたのですが、その中にあったのがTSKです。ベトナム駐在員を募集していたことが決め手となりエントリーしました。いいと思った会社には並行して次々とエントリーしていたので、この時点では、TSKの事業概要はまだ詳しく調べていませんでした。

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1次面接2019年9月

エントリーしてすぐに面接をしたいと連絡があり、その翌日、社長(当時)の上京に合わせて東京のホテルで一対一の面接をすることになりました。社長から会社の概要やベトナムでの事業について説明を受けた後、私のエントリーシートを見ながら、コミュニケーション能力や行動力について具体的なエピソードを聞かれました。面接の後は食事にも誘われ、トータル2時間くらい話をしました。入社後に聞いた話では、この面接の直後、社長から取締役に「絶対に採用するように」とメールが入っていたらしいです。

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2次面接2019年9月

1次面接の翌週、富山県の本社で取締役との2次面接がありました。工場見学では従業員のアットホームな雰囲気が伝わってきて「いい会社だな」と感じました。その日のうちに内定通知が来たのですが、他に6社からも内定をもらっており、少し待ってほしいと伝えました。条件面などで悩みましたが、「仕事で結果を出したら希望に応える」という社長の言葉と人柄が決め手となり、入社を決めました。

入社2019年10月

現在の仕事

入社当時、TSKベトナムには日本人が駐在しておらず現場が混乱していたため、着任当初は顧客である日系企業を回って状況を整理するところから始め、2年ほどかけて体制づくりに取り組みました。今ではベトナム人スタッフだけで業務を進められる仕組みが整い、経営も赤字から黒字に転じました。ベトナムでの実績を評価され、昨年からはメキシコ進出も任せてもらっています。現在は、日本の本社においてはグローバル事業推進部部長・執行役員として企画経営に、TSKベトナムではシニアセールスマネージャーとして営業や社員の育成に、TSKメキシコでは社長として事業立ち上げに関わっています。

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TSKベトナムで社員の指導に当たる田邉さん

後輩へメッセージ

海外で働いていると、思いどおりにいかないことが多々ありますが、「仕方ない」と受け入れるようにしています。これは異文化の中で現地の人たちと関わって悪戦苦闘した協力隊経験を通じて、自分自身の許容範囲が広がったおかげだと感じています。私にとって、それほど協力隊での経験は意味あるものでした。後輩の皆さんもそうした力を身につけているはずですから、その上で、自分が楽しいと思えること、やりがいを感じられること、時間を費やす意味があると思えるフィールドに挑戦してほしいと思います。

JICA 海外協力隊ウェブサイト 「進路開拓支援のご案内」

https://www.jica.go.jp/volunteer/obog/career_support/index.html

JICA 海外協力隊ウェブサイト

Text=油科真弓 写真提供=田邉一馬さん