今月のお悩み現状の改善などを提案しても
周りの共感や支援が得られません
(アフリカ/体育)

   教育省に配属され、地域の学校を巡回して体育の授業実践や教員への指導をするという要請で活動しています。特に実技指導や授業計画に関する知見がまだまだ普及していないため、積極的に現場の教員たちを巻き込んで、子どもたちが適切な運動をできるようにしようと意気込んでいます。

   そうした話を配属先の同僚や学校関係者たちにすると否定こそされないものの、あまり共感や関心を得られず、結局は私が巡回して授業をするばかりになっています。どうしたら皆にもっと興味を持って積極的に参加してもらえるのか悩んでいます。

柿沼先生からのアドバイス青写真を描き、周囲に思いを語る。
半径3mで働いている仲間から始めましょう

   やりたいことが理解されない原因はさまざまです。私の隊員時代の場合、「有機農業の普及を通じ、女性や若者から成る農民グループの生活向上を目指す」という要望に沿って活動を始めたものの、当の女性も若者も、農業に取り組みたい様子がありませんでした。話が違うじゃないかと思いつつも、考えを切り替えて課題・関心を探ってみると、短期間で現金収入を得られる方法を欲している。そこで、洋裁で収入を増やすのはどうか?というところから始めました。そして、これから何をしようとしていて何を目指しているのか“青写真”を自分の中に持ち、それを現地の人にも共有するステップを踏むようにしていました。

   今、私が認定ファンドレイザー(※)として取り組む場面でも、青写真を明確化して人に伝えるのはとても大切。例えば、青年海外協力隊山口県OB会の活動の一環で、外国につながる子どもたちの日本語教室などの運営や、地域の方と共に行う子ども食堂を発展させた地域食堂に携わる中でもそうです。寄付やサポーターを募る際、「外国人住民と挨拶の言葉だけでも交わせる町のほうが互いに安心で気持ちよく暮らせますよね?」「皆で食堂というよりどころをつくれば、老後に困った時の助けになるかもしれませんよ?」などと“私たちは山口をこんな地域にしたい”という思いを具体的なイメージで伝えるわけです。前提を明確にしたほうが共感や支援を得やすいですし、「お金のある人が食堂を利用しているのは許せない」などのクレームがあっても「その人はつながりを欲しているのかもしれないので、もう少し様子を見ましょう」と方向性を見失わず判断することもできます。

    “思い”への共感を得る上で、まず配属先の同僚など半径3mの範囲にいる仲間には、自分が目指すことを理解してもらえるよう努めるのがよいと思います。身近な1人や2人を説得できないようでは何十人もの人を巻き込むことなどできませんし、できない時は何か計画に無理があるのかもしれません。ただ、隊員活動に絶対の正解はないので、その時に協力してくれる人たちを頼って取り組んでもよいでしょう。青写真を示して思いを語れば、必ず誰かが応援してくれるはずです。


※認定ファンドレイザー…日本ファンドレイジング協会が設けている資格で、NPOなどの非営利団体の資金調達を担う「ファンドレイジング」について、有償での3年以上の実務経験を含む包括的な知識・経験が求められる。

今月の先生
柿沼瑞穂さん
柿沼瑞穂さん

ザンビア/村落開発普及員/1997年度2次隊・群馬県出身

大学院卒業後、協力隊でザンビアへ赴任。手芸品の販売による現金収入向上に取り組んだ。帰国後はJICA東京での勤務を経て、公益財団法人オイスカで四国研修センター所長として勤務しながら、「認定ファンドレイザー」の資格を取得。2018年より夫の故郷の山口県に移住し、フリーのファンドレイザーとして活動。青年海外協力隊山口県OB会のメンバーとして、子ども食堂や外国にルーツを持つ子どものための日本語教室にも携わる。


Text=池田純子 写真提供=柿沼瑞穂さん