任期の終盤に備えよう
中田里穂さん
中田里穂さん

マダガスカル/コミュニティ開発/2021年度1次隊・静岡県出身

中田さんのポイントは…

・自分なりの基準を明確にして荷物を仕分ける
・最後のプレゼントも計算に入れておく
・普段から物を買う時に、帰国時のことをイメージする

荷物はコンパクトに!と整理を徹底
すべてにおいて“割り切り”も肝心

任期の終盤に備えよう
中田さんが普及に取り組んだバイオガス設備の設置工事。離任の3日前に2基目の完成にこぎ着け、セレモニーを行うことができた

   マダガスカル中部で地域住民の生活改善に取り組んだ中田里穂さん。2023年9月の離任を控えた時期には、農家へのバイオガス設備の普及活動が軌道に乗ったことで忙しい日々を送っていた。その傍ら、生活面での身辺整理を意識し始めたのは離任の2カ月前ごろだったと振り返る。

「私の赴任時はまだコロナ禍の影響で任国外旅行ができなかったのですが、任期が終わりに近づいた時期にようやく解禁されたことから23年7月に旅行へ行き、帰ってきたタイミングで身の回りの片づけを意識しました」
もっとも、中田さんの場合は赴任当初から2年間という限られた任期を考えて、できるだけ家財道具を増やさないように気をつけていたという。

「いつかは帰るのだから、とは常に考えていましたし、そもそも居室にあまり収納スペースがなかったので、ものすごく物があふれている状態ではありませんでした」

   現地で調達した調理道具の類いはかさばるので、そもそも日本へ持ち帰るのではなく周囲の人に譲渡するつもりだった。また、人々との交流ツールとして日本からバイオリンを持参していたが、壊れても構わないように安価なものを選んでおり、こちらも帰国時には誰かに譲ることにしていたという。

   赴任時から使っていた衣類は2年間でだいぶ傷んでいたので、帰国を機に捨てようと思っていた中田さん。ただ、現地の人が捨てられている衣類を洗って再使用したりしているのを見かけたことから、欲しい人を募り、自由に持っていってもらうようにした。

   極端にはかさばらないが重たい物としては、JICA支給の書籍やテキスト、コミュニティ開発隊員向けの生活改善キットの資料、勉強に使ったノートといった紙類があった。これらについては最低限必要だと思う箇所だけ切り取って整理し、かなり減量することができた。

「とにかくコンパクトに!というテーマを意識して荷物をまとめたところ、当初思っていたよりもきっちりスーツケースに収まり、重量的にも余裕のあるパッキングができました」

土壇場のプレゼントにはご注意
物にこだわらず思い出を持ち帰るという意識も

任期の終盤に備えよう
中田さんの居室の様子。収納スペースが限られていたこともあり、元々物をあまり置いていなかった

   だが、思いがけず荷物になった物もあった。例えば、日本からの赴任時に持参した厚手の服がそうだった。
「任地が冷涼な気候だと聞いていたので念のため持っていったのですが、ほとんど使う機会がなかったので、きれいな状態で持ち帰ることにしました」

   日本から持ち込んだ普通の衣類は現地の人に託していくことにした一方、マダガスカルで購入したり仕立ててもらったりした衣類は思い出として日本に持ち帰りたいと思っていた。ただ、「さほど買ったりしたつもりはありませんでしたが、服好きなこともあっていつの間にか増えていて、改めて荷造りをしてみると意外に多かったです」。帰国後、イベントや出前講座などで着用することをイメージし、そこで着たいと思うものを吟味して4着まで絞った。

   さらに、帰国目前になって加わったのが、現地の友人・知人からのプレゼントだった。腰巻などとして使う民族柄の布や、ラフィアと呼ばれる植物の繊維でできた小物類などの比較的コンパクトな物はスーツケースに余裕があって問題なく荷物に加えられたが、中には扱いに困る物もあった。

「ありがたいことに、ガラス箱に岩石標本の入った大きな飾りをくれた知人もいたのですが、大きさや重量、強度を考慮すると、持ち帰るのは断念せざるを得ませんでした。居室の壁に過去の隊員たちが残した装飾品がいくつもかかっていたので、くれた人には申し訳なく思いつつ、その一つに加えて残してきました。そうして最後にプレゼントをもらってから、最終的な荷物の重量・容量の調整を検討するという流れでした」

   任期終盤の行動全般について、“割り切り”をできる精神が大切だったという中田さん。「できることはできる、できないことはできない、と決めて動いていたので、むやみにバタバタすることはありませんでした。時間が限られているだけに、する事を自分でコントロールできる範囲を絞ったのがよかったと思います」。身の回り品を仕分ける上でも同様で、①帰国後に使うかどうか、②思い出として取っておきたいか、③そもそも持ち帰れるのか、などと自分なりの基準を持って、時には潔く諦めたことが、スムーズに荷物を整理することにつながった。

「“無形の思い出を持ち帰る”という意識で物に執着していなかったので、周りの隊員と比べてもコンパクトにまとまりました。こうした終盤の時期になる前の任期中からできる注意としては、現地で物を買う時、最後に日本に持って帰るか、現地の人にあげるかなど、処分の仕方を先に考えておくことが大切ではないかと思います」

中田さんの仕分けルール

日本で使う?使わない?

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中田さんが現地で仕立てたドレス。丈が長くかさばったが、帰国後にも使うイメージがあったことから持ち帰ることにした

思い出として取っておきたいか?

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現地の人たちからプレゼントされた品々。なお、中田さんは逆に、一人ひとりの似顔絵を手渡しながら離任の挨拶回りをしたという

そもそも持って帰れるのか?

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大きさなどを考慮して持ち帰りを断念したプレゼント。サイズ以外に、飛行機に乗せられない、日本や経由国に持ち込めないといった物もあり得るので要注意

Text=飯渕一樹(本誌) 写真提供=中田里穂さん