晴れて任期を全うして日本へ帰ると、多くの人が経験する“逆カルチャーショック”。
赴任前には思いも寄らなかった違和感に直面することも多々あり、
日本に戻ってみて初めて感じるような、不思議な体験ができるかもしれません。
日本社会は完璧主義で人に冷たいという印象を受けたが、半面で理性・倫理観がしっかりしている側面も強く感じた
(アフリカ/コミュニティ開発)
知らず知らずのうちに派遣国の時間感覚が自分の中に浸透していて、日本に帰ってきたばかりのころは、意図せず約束に遅刻してしまうことがあった
(アジア/理科教育)
走っているバスを止めようと手を上げかけて、寸前でハッと思いとどまった
(中南米/環境教育)
日本の街中で、看板などの文字情報が多すぎて脳がパニックに。そして夜の新宿のネオンがまぶし過ぎて目が痛かった
(アフリカ/青少年活動)
無料の公衆トイレにトイレットペーパーがあることが信じられず、帰国後しばらくはトイレットペーパーを持ち歩いていた
(中南米/環境教育)
現地では道端に生えているマンゴーなどの実が取り放題だったので、日本で木の実を勝手に取ってはいけないことにむしろ違和感を覚えた
(大洋州/環境教育)
豚肉や生卵を食べる習慣のない国で2年間過ごしたので、日本でそれらが食卓に並んでいるだけでもカルチャーショックを感じた
(中東/環境教育)
派遣国の学校と違って、日本の学校現場では午前中の軽食の時間がないため、復職したばかりの頃はおなかがすいてつらかった
(中南米/小学校教育)
帰国後、ホテルでシャワーの水が自由に使えることに罪悪感を覚えた
(アフリカ/環境教育)
青年海外協力隊事務局より
任期終盤の皆さんへのメッセージ
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増古恵都子
次長(海外業務担当)
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池上恵美
海外業務第一課長
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飯島大輔
海外業務第二課長
(タイ/体操競技/1993年度2次隊
・茨城県出身)
各国に赴任中の隊員の皆さん、日々のご活動お疲れさまです。任期満了が近づいている方々は、帰国に向けて活動のまとめや身辺整理、現地でできた友人・知人への挨拶などで忙しい時期を過ごしているかと思います。そうした中でふと気が緩んでしまうと、事件や事故に巻き込まれるリスクがぐっと上がりますので、改めて注意を促したいと思います。
任期終盤に限ったことではありませんが、何よりも重要なのは皆さんの心身の健康だと考えています。疲れて頭が働かないと、危機予測ができない。また、何か起きてもとっさに体が動かず、行動ができない。特に任期の終わりで忙しくしている時は疲れがたまりやすいので、そうした危険が伴いやすいのだと再度意識していただきたいと思います。
また、自身の任地にいる時よりも、主要都市へ出かけている時やその移動中などのほうが事件・事故に遭遇しやすい傾向にありますが、これも帰国前で忙しく動き回っている方が直面しやすいリスクでしょう。合わせて、クリスマスや年末年始、その他のイベントの時期には世間一般での犯罪が増えますので、普段以上に注意しましょう。
着任時の気持ちを忘れずに!
良い思い出を持ち帰れるように
忙しさのほか、任期終盤に起きがちなのは、派遣国への慣れからくる油断でしょう。私たち自身の在外経験からも、街中を歩く時や家の戸締まりをする時など、「これくらいなら大丈夫」という経験の積み重ねが隙につながるものです。周囲の同僚や住民は一番身近なところで皆さんを支えて守ってくれる存在ですが、一方、信頼を積み重ねた安心感から基本的な戸締まりなどの注意が緩むことが多々あります。草の根で活動する協力隊員としてはバランス感覚の難しい部分かと思いますが、着任したばかりの時期に周囲のいろいろなことに注意していた気持ちを思い出し、改めて気を引き締めていただければと思います。
任期の終わりに事件・事故が起こることで、任地で過ごしたすてきな記憶や派遣国のイメージに傷がついてしまうのは非常にもったいないことです。最後だからこそぜひ良い思い出をたくさん持って、元気に帰国していただきたいと思います。
任期終盤はここを見直そう!
●多忙さに流され注意散漫になっていないか?
●生活に慣れてしまって油断していないか?
●イベントや年末年始の時期は特に注意!
Text&Photo=飯渕一樹(本誌) 写真提供=青年海外協力隊事務局