

タンザニア/コミュニティ開発/2018年度3次隊・奈良県出身
| 就職先 | 株式会社ディスカバリー |
|---|---|
| 事業概要 | クライアントの依頼に基づき、運用型広告(※1)の設計・運用によるデジタルマーケティング支援や、ウェブ広告の制作・運用、通販支援などを広く手がける。 ※1 運用型広告…ウェブ広告の一種で、広告主が予算や配信内容を効果分析して自由に運用し、掲載内容を変えながら消費者に情報を届ける仕組みの広告。 |
| 略歴 | 1993年 | 奈良県生まれ |
|---|---|---|
| 2016年3月 | 大学卒業 | |
| 2016年4月~18年8月 | メーカー勤務 | |
| 2019年1月 | 協力隊員としてタンザニアに赴任 | |
| 2020年3月 | 帰国 | |
| 2021年3月 | 株式会社ディスカバリー入社 |
大学の授業をきっかけに国際協力に関心を持ち、学生時代はフィリピンの貧困問題に取り組むNGOの活動に参加していた森井英樹さん。卒業後は一般企業に就職したが、物足りなさを感じると共に、海外で自分を試したいという思いを持ち続けていた。そんな時、NGOで共に活動していた大学時代の先輩から協力隊を勧められ、「挑戦するなら20代の今しかない」と応募。応募に際しては、自分自身の力をより試せると考え、前任者がいない新規要請を希望した。
赴任したのは、タンザニア南東部ムトワラ県にある、水道も電気も通っていない小さな村。配属先は県庁コミュニティ開発課のムバワラ郡事務所で、要請内容は住民の生活向上支援だった。ただ、配属先で初めての隊員ということもあり、上長から活動についての具体的な指示は一切なかった。さらに、村の住民は日本人を見るのが初めてだったので、「まずは彼らに自分のことを知ってもらおう」といろいろなことに取り組んだ。小学校の校長に頼み込み、授業の時間を月1時間もらって日本の映画や折り紙を紹介したり、住民から成る組合の寄り合いにも積極的に顔を出して交流を図ったりした。
「組合は地域に46あり、メンバーから集めたお金を管理して、メンバーに緊急事態があった時には出資します」。この寄り合いに行けば生活の問題点なども見えてくるはずと参加を繰り返すうち、住民のほうから意見を求められたりすることも多くなっていったという。「手探りでの情報収集に努めた結果、組合の運営サポートや生活向上支援などの活動につながっていきました」。
だが、治安の悪化による任地の変更、さらにコロナ禍の影響で赴任から1年2カ月、任期途中での帰国となった。その後はさまざまなイベントにサポーターやボランティアとして携わり、その傍ら転職サイトに登録し、就職活動もスタートさせた。
企業選びで重視したのは、いかに短期間でキャリアアップできる企業であるかどうか。「協力隊の活動では何の成果も出せず、力不足を痛感したため、就職では自分が成長し実力をつけられること、を目標としました。社会人としては2年間の空白もあったため、厳しい環境に身を置いて急速に経験を積んでいこうと思いました」と森井さん。そして選んだのが2015年創業のベンチャー企業、株式会社ディスカバリーだった。
入社から4年。現在はウェブ広告の運用チームのサブリーダーとして忙しい日々を送る毎日。国際協力の現場からは離れたため、今もその分野に関わっている同期隊員の話を聞くと、うらやましいと感じることもあるという。しかし、森井さんの信念はぶれない。
「将来は、タンザニアの人をはじめ私が関わってきた人たちのため、何か問題解決や生活の向上につながるような貢献をしたい、というのが目標です。そのためにはまず、今の居場所でもっと成長したいと思います」
短期間にキャリアアップするためには、自分を追い込み、がむしゃらに働ける環境がよいと考えました。具体的には、将来性があるといわれているSaaS(※2)などのIT業界、かつ従業員数が少ない会社です。少人数のほうが1人の守備範囲が広くなり、学べることが多いと考えたからです。転職サイトに登録する際も、そう希望を書いたところ、キャリアコンサルタントから紹介されたのが、ディスカバリーでした。
※2 SaaS…「Software as a Service」の略称で、クラウド上にシステムを展開しユーザーに提供するサービス。
ウェブ広告の業界は未経験でしたが、当初から希望していた業界でもあったのですぐにエントリーを決め、履歴書と職務経歴書を提出しました。自己PRでは、日本人を知らないタンザニアの小さな村で、自主的に地域の組合に飛び込んで活動した協力隊経験についても紹介し、負けん気があり逆境に強いこと、困難な環境でも課題に立ち向かう情熱があることをアピールしたと記憶しています。
共同代表2人とのオンライン面接で、「成し遂げたことはあるか」「ここは負けないという部分は何か」と聞かれ、タンザニアの村で組合の運営への助言や改善に関わってきたこと、活動の中で村人に何度も反発されもしたが、最後まで諦めずに関係性を築いたことなどを挙げました。「業務ではかなり頑張らないといけない部分もあるが、耐えられるか」と聞かれ、協力隊で得た根性で必ず成し遂げると答えました。
営業部のマネージャーとのオンライン面接で、「ウェブ広告をどう思うか」「ウェブで生かせることは何か」など、業務に関することを聞かれましたが、最終的には、協力隊経験を非常にポジティブに評価してくれて、私の熱量を「頑張ってくれそう」と感じてもらえたようです。
入社後3カ月は、マーケティング手法や数値の見方、レポートの作成方法など、ウェブ広告運用の研修を受けました。その後、営業部署に配属され、今はアカウントプランナー(広告戦略を企画提案・運営する営業職)としてGoogleやYahoo!、各種SNSへの広告配信のディレクションをしています。具体的には、企業や広告代理店などのクライアントからウェブ広告案件の依頼を受け、見積もり作成から使用する媒体、ターゲティング、配信スケジュールなどを決めていきます。社内、社外とも関わる人が非常に多く調整力が求められますが、人の間を取り持つことが好きなので楽しさを感じています。また最近、サブリーダーという役職となり、営業の他メンバーの業務フロー改善などにも携わり、ますますやりがいを感じています。
協力隊での活動は、日本では経験できないアクシデントやトラブルの連続です。現地の人に理解してもらえずに心が折れそうになることもありますが、それが逆に自分自身を強くするのだと思います。私自身、活動中は毎日、未経験の苦しみや葛藤の連続でしたが、これが知らず知らずのうちに「チャレンジ精神」や「度胸」に転じて自分のものになったのだと感じています。協力隊の任期を全うすること自体が、「諦めずに進む力」を根づかせてくれるのだと思います。
https://www.jica.go.jp/volunteer/obog/career_support/index.html
Text=油科真弓 写真提供=森井英樹さん