「第3回 JICA海外協力隊 帰国隊員社会還元表彰」をはじめ、
2024~25年に表彰を受けた協力隊OVを一部ご紹介します。

第3回 JICA海外協力隊 帰国隊員社会還元表彰

JICA海外協力隊経験者で国内外・公私を問わず社会課題の解決に
取り組んでいる人を表彰する主旨で、2023年に開始されました。

大賞・多文化共生賞

青木由香さん

日系/ブラジル/日系日本語学校教師/2005(平成17)年度0次隊・富山県出身
NPO法人アレッセ高岡 代表

協力隊としてブラジルの日系人コミュニティで活動中、出稼ぎで日本へ渡った親子が抱える課題を知り、帰国後に地元・富山県高岡市の学校で外国人相談員として勤務。外国にルーツを持つ子どもたちへの支援を開始し、多言語資料の作成や高校進学説明会など情報発信にも力を入れてきた。地域の人と課題を共有し、共に考える講座やイベントの開催、知事への提言書提出、JICA北陸との連携などにも取り組み、周囲を巻き込みながらの多文化共生社会の実現に貢献している。

青木由香さん

受賞理由

日本語での学習が難しい子どもたちへの支援を行い、多文化共生社会の実現に貢献した。

青木さんからのコメント

協力隊としての日々が、今の私の活動をダイレクトに方向づけ、そして支えてくれています。今回の受賞によって、この歩みを続ける勇気と新たな決意を頂きました。これまで関わったすべての子どもたちや関係者の皆さまに感謝の気持ちを伝えたいです。

アントレプレナーシップ賞

星野達郎さん
星野達郎さん

グアテマラ/小学校教育/2013(平成25)年度3次隊・神奈川県出身
株式会社NIJIN 代表取締役

不登校問題の解決を目指し、2023年に小中一貫のオルタナティブスクール「NIJIN アカデミー」を開設。メタバース本校舎と全国33キャンパスをあわせ持つハイブリッド型教育機関で500人以上が学ぶ。多様性・主体性・選択性をキーワードに公教育を“持ち運び可能”にする独自モデルにより、53 の企業・機関と連携し学校の時間帯に新しい教育・市場を創出している。

受賞理由

企業や自治体などと協力して社会全体を学びの場にする“教育共創モデル”を確立。多様な教育の在り方を示し、子どもの自己肯定感を育む取り組みが評価された。

星野さんからのコメント

協力隊での挑戦が原点です。現場で学んだ「行動する力」を、これからも大切にしていきます。

地域活性化賞

庄田清人さん
庄田清人さん

マラウイ/コミュニティ開発/2014(平成26)年度2次隊・福岡県出身
公益財団法人ちくご川コミュニティ財団 副理事長

マラウイ北部の村で乳幼児の栄養改善などに取り組み、帰国後、起業を経て、2020年からちくご川コミュニティ財団に入職。「子ども若者応援助成」などの独自プログラムや休眠預金活用事業の統括を担い、協力隊派遣中の経験を生かし、周囲と連携して地域の社会課題解決を目指す包括的なプログラムの企画・運営を行っている。

受賞理由

社会課題解決に取り組むNPOなどをサポートする組織として、個人や企業からの資金・技術・情報などを提供する立場で尽力。支援する側・される側ではなく、対等なパートナーとして活動する姿勢が評価された。

庄田さんからのコメント

協力隊で学んだ「現場重視」の姿勢を胸に。「誰かのために」が形になり、継続する地域社会を築いていきます!

開発協力実践賞

近藤咲さん
近藤 咲さん

グアテマラ/小学校教育/2016(平成28)年度1次隊・愛知県出身
NPO法人幸縁 代表理事

グアテマラの子どもたちに中学3年間の学費を支援する奨学金事業や、オンラインの英語学習プログラムを実施。基礎学力の向上とリーダーシップ育成を目指す現地学習塾も開校し、教員としての知見や協力隊の経験を生かしつつ地域に根差した学びの場を提供している。学業継続をサポートする里親制度なども行い、グアテマラの子どもの教育向上を通して、互いに分け合い支え合ってそれぞれの人生が豊かになる関係づくりを「幸縁」と呼んで、活動に取り組んでいる。

受賞理由

貧困などで進学が難しいグアテマラの子どもたちに向けて、奨学金事業や学業継続をサポートする里親制度や、日本の子どもたちとの交流事業などを展開し、多様な人が共に成長し合える場を生み出した。

近藤さんからのコメント

ここまでグアテマラの子どもたちのために共に幸縁を広め、深めてくださった皆さまにこの賞をお送りしたいです。

審査員特別賞(共生社会)

安田一貴さん
安田一貴さん

ウズベキスタン/青少年活動/2011(平成23)年度1次隊・福島県出身
笑顔の向こうに繋がる未来プロジェクト
PLAY&PHOTO Studio 共同代表

ウズベキスタンの血液学小児病院で活動中に、患者や家族にとって写真を撮ってもらう体験が重要な意味を持つと知り、帰国後は理学療法士として働く傍らで、写真家に師事。カメラマンとして重い病気や障がいがある子どもとその家族のもとへ出張し、特性やニーズに寄り添った写真撮影を提供する活動を始めた。協力隊の経験や理学療法士の知見を基に、医療的ケアやリスク管理に配慮しつつ遊びの要素を取り入れた撮影プログラムを展開している。美容師や服飾デザイナーと協力してバリアフリー仕様の衣装も手がける。

受賞理由

病気や障がいのある子どものもとへ出張撮影し“心に残る撮影体験”を創出、その子らしさや家族らしさを感じられる特別な瞬間を届け続けていることが評価された。

安田さんからのコメント

協力隊での出会いが原点です。これからも写真の力を信じて、たくさんの子どもたちへ心に残る体験を届け続けます。

審査員特別賞(災害支援)

山路健造さん
山路健造さん

フィリピン/コミュニティ開発/2014(平成26)年度2次隊・大分県出身
一般社団法人多文化人材活躍支援センター 代表理事

フィリピンから帰国後、佐賀県の認定NPO法人地球市民の会の一員として、在留外国人の支援や災害時の多言語情報発信などに尽力。官民連携のウクライナ避難民支援プロジェクトの事務局を務めたほか、多文化人材活躍支援センターを立ち上げ、2024年の能登半島地震・奥能登豪雨では被災した石川県輪島市へ。輪島市に移住し、支援の輪から取り残された外国人のサポートや日本人との交流イベントなどを企画すると共に、外国人たちも安心して生活して日本人住民と支え合える環境の整備を進めている。

受賞理由

能登半島地震・奥能登豪雨で被災した外国人住民の居場所づくりに取り組み、支援する・される側を超えて相互に助け合える場をつくり上げた。

山路さんからのコメント

OVは誰もが現地で「外国人」を経験し、文化の違いや心細さを経験したはずです。日本に住む外国人も住みやすい社会を共につくりましょう。

審査員特別賞(スポーツと開発)

糸井 紀さん
糸井 紀さん

エクアドル/水泳/2013(平成25)年度1次隊・岐阜県出身
国際審判員(水泳)/岐阜県水泳連盟 副理事長

協力隊時代、エクアドルの水泳ナショナルチームをワールドカップ出場に導く一方、途上国で行われた国際大会で審判員の技術に課題を感じ、帰国後に国際審判員の資格を取得し途上国の審判員の育成にも関わるようになる。教員として働きながら、パラリンピックの東京2020大会やパリ2024大会で水泳の審判員を務める。岐阜県水泳連盟の副理事長として、日本で開催される国際大会の運営サポートや選手団のケアにも力を尽くしている。

受賞理由

パラリンピックなどの水泳国際審判員として、多文化共生社会づくりに取り組み、国を超えたスポーツ界の発展に寄与した。

糸井さんからのコメント

パラリンピックでは戦争や難民問題に直面した選手たちを目の当たりにしました。彼らが笑顔でスポーツをできる日まで私は支え続けます。

Text=新海美保 写真提供=ご協力いただいた各位