JICA海外協力隊起業支援プロジェクト(BLUE)2期が始動!
協力隊で培った経験を社会課題解決のためのビジネスに
ザンビア/村落開発普及員/2011(平成23)年度4次隊・静岡県出身
静岡県掛川市にある観光農園キウイフルーツカントリーJapanの代表。東京農業大学短期大学部卒業後、
派米農業研修生としてアメリカで学び、2012年に協力隊参加。帰国後は大学院で農業マーケティングを学び、農家や行政、大学、企業を巻き込んだ農業を行っている。JICA BLUE Academyに1期生として参加。
平野耕志さんが協力隊員としてザンビアに赴任したのは2012年。首都ルサカ市の低所得層が密集居住している地区で、農業を通じた収入向上や栄養指導に携わった。
「ところが農業ではどうしても収入が上げられず、現金収入獲得のために、農地の一部で駐車場経営を試すなどしましたが、複雑な気持ちでした。また当時、現地の医師から、『良い農家が良い食糧(栄養価の高い食糧)を作らないと、豊かな国にならない』と聞き、その言葉も胸に残っていました」
帰国後は、父が興したキウイ農園を継ぎながら、認定NPO法人の事業で国内外の農業技術普及にも携わってきた。農業を通じた地域活性化を模索しながら10年ほどがたち、日本の農家として積極的なアクションを起こしていきたいと考えていたところにJICA BLUEの募集情報をOV会からのメールで知って応募、3カ月間の社会起業家育成伴走プログラム(JICA BLUE Academy)に参加した。

「当初は日本の農家の収入を増やして活性化させたい、そのために光熱費を削減できるソーラー事業を始めようと思い描いていました。ですがメンターから、『あなたが本当に助けたい人は誰?』と言われて、何も返せませんでした」
メンターと議論を重ねた平野さんが改めて気づいたのは、高い技術を持ってビジネスや社会課題に挑む“格好良く社会的に意義のある農家”の姿を示したいという理想である。そして、そのフィールドとして思い至ったのはザンビアだった。
「かつて協力隊で取り組んだザンビアの農業への思いが残っていましたし、ザンビアで新たな農家像を示して発信していくことが、いずれ日本の農家の活性化にもつながるのではないかと考えました」
平野さんは結果、ブルーベリー事業を通じた農家の収入向上プランを練り上げた。ブルーベリーを選んだのは、一度実をつけるまで育てれば10年以上、収入基盤が得られること、現在の農地を削らなくても育苗用容器での栽培が可能といったメリットがあるからだ。
BLUEの最終報告会を終えた後は、一般社団法人協力隊を育てる会の帰国隊員支援プロジェクトで資金面のサポートを受け、25年2月にザンビアに渡航し、事業の一歩を踏み出した。
「最初の壁は日本から苗木を持ち込むことでした。前例がないことや、より栄養価が高く、ザンビアの環境に適した品種が現地で手に入ることを知り、そちらに変更しました。また、実証実験に賛同してくれる農家の選定は、協力隊員時代に出会った農業省の知人たちが手伝ってくれて、ありがたかったです」
平野さんは事業を「2回目の協力隊」のようなものだという。
「BLUEのおかげで、またチャンスがもらえました。JICAのサポートがある協力隊とは違い、今回はすべて自分の責任でやることになりますが、半面、自由にできる良さもあります。まずは成功事例をつくり、それを広げていくことが目標です」
Text=池田純子 写真提供=平野耕志さん