パプアニューギニア/環境教育/2017年度4次隊・東京都出身
大学1年時、カンボジアへのスタディツアーで貧困下の子どもたちを見たことから途上国に関心を持ち、新卒で協力隊に参加。帰国後は廃棄物処理などを行う企業に2年余り、JICA地球ひろばに1年ほど勤務後、2024年にイギリスの大学院に留学。25年末から国内外の建設コンサルティングを行う企業に勤務。
途上国への思いが熱いうちに新卒参加
同僚たちに支えられつつ環境教育に取り組み、
帰国後は廃棄物管理分野で活躍中
新卒で参加した髙橋震峰さんの場合
大学1年生の夏、スタディツアーで訪れたカンボジアで子どもたちまでもが貧困にあえぐ姿を見て、日本との格差に衝撃を受けたという髙橋さん。それをきっかけに「途上国の現場で活動したい」という思いを募らせていき、新卒で協力隊に参加しようと考えた。
専門性や経験が十分ではないことは自身も感じており、「社会人を経験してからでもいいのでは」という周りからの声もあった。しかし、「思いが熱いうちこそ力を出せるし、結果として現地に貢献できるはず」と考え、就職活動と並行して応募。1度目は不合格になったものの、思いは冷めず、独自に協力隊OVの話を聞きに行き、環境教育職種を紹介されると、国内外で環境教育を行うNGOで在学中から1年ほどインターンをした。その上で再度応募し、合格となった。
受けた派遣前訓練は駒ヶ根青年海外協力隊訓練所での合宿形式。
「語学に集中できる環境で、活動に入る“土台”としての英語力が身についたと思います。また、OVの話を聞く講座では派遣国の文化や生活について聞くことができ、不安が解消されました」
訓練所でさまざまな経験を持つ訓練生たちと生活することは、新卒の髙橋さんにとって、良い刺激になったという。
「派遣を前にして不安を感じることもありましたが、『同期の仲間たちもそれぞれの国で活動するのだから、自分も頑張ろう』と心の準備ができました」
2018年3月にパプアニューギニアに赴任し、ニューギニア本島東端のミルンベイ州アロタウ市役所に配属された。同市は美しい海に面した人口2万人ほどの港町で、髙橋さんはごみ収集や公衆衛生を担う部署で活動した。当時、市はボランティア受け入れをきっかけに環境教育事業を開始したい意向で、髙橋さんには市内の学校や市民を対象にした環境教育推進が求められた。
しかし、「社会人としての実務経験がないため、何をしたらいいのか、誰に確認すればいいのか、わからないことばかりで全てが手探りでした」。その戸惑いは配属先の同僚にも伝わり、助けてくれるようになったという。
「着任から間もない頃、一人で町のごみの様子を視察しに行こうとしたら、外国人が珍しい地域ということもあり、同僚と一緒に行くべきだとたしなめられました。そしてつき添ってくれて、これから市役所の一員として働く私を町の人々に紹介するなど、親身に支えてくれました」
新卒だからこそのメリットもあったと髙橋さんは振り返る。「上司や同僚のみならず他部署の職員も相談に乗ってくれて、尋ねると何でも教えてくれました。私の中にも“日本でのやり方はこうだ”といった固定観念がないだけに、何でも受け入れることができました」。
髙橋さんは、学校を巡回して子どもたちに環境教育を行う一方で、大人が正しいごみの捨て方をしなければ子どももそれをまねてしまうと考え、同僚と共に人が集まるマーケットやバス停に行き、ごみ問題の啓発を行った。
アロタウのごみ処分方法は、収集したごみをただ投棄するだけのオープンダンプ方式。分別もされておらず、そこではアルミ缶など現金化できるものを拾って生計を立てる人が数世帯暮らしていた。「危険な廃棄物に触れてけがをしたり病気になったりする人がいる。ごみ問題は命に関わる問題なのだということを目の当たりにしました」。活動中にJICAの廃棄物管理プロジェクトに触れる機会もあり、髙橋さんは将来、開発途上国の廃棄物処理問題の解決に携わりたいと考えるようになった。
帰国後は、JICAが運営する国際キャリア総合情報サイト「PARTNER」で、廃棄物処理分野の企業を見つけて就職。広報や、企業がSDGsを推進できるようにするコンサルティング業務などに当たった。
「同社ではJICAの研修員の受け入れなど国際協力にも関わったのですが、さらに専門性を高め、国際協力の現場で働きたいと思うようになりました」
髙橋さんは会社を退職し、24年にイギリスのサセックス大学へ留学。環境・開発・政策コースで修士号を取得し、25年に帰国。同年12月から国内外に事業を展開している総合建設コンサルティング会社で廃棄物管理分野のコンサルタントとして働き始めたところだ。
「振り返ると、さまざまな人に囲まれて幸せな2年間でした。協力隊参加にいつがベストという正解はなく、タイミングは人それぞれ。私は新卒参加して本当に良かったと思っています」
派遣国に来て、生まれて初めての一人暮らしをした髙橋さん。備えつけの二槽式洗濯機の使い方がわからなかったり、部屋に侵入した白アリに書籍類を食べられたりと、ちょっとしたトラブルも経験した。一方で、自炊を始めたところ、特にカレーと親子丼作りにはまり、帰国後も続けているそうだ。また、隣の家屋に他の隊員も住んでいて心強い面もあり、生活はしやすかったという。
比較的治安の良い地域ではあったが、敷地内にはガードマンの一家も住んでいて、夕食をごちそうになるなどの交流があった。町中の銀行やスーパーの前にもガードマンがいて、毎日の通勤で挨拶を交わすうちに仲良くなっていった。「現地の人たちとの交流が広がることによって、安全面でも守られているように感じていました」。
行政機関、自然公園などに配属され、教材・プログラム開発、イベントの企画、指導者層への助言、廃棄物処理の現状調査やごみ処理・収集ルートの分析・モニタリング、エコツーリズムの提案など、多様な活動を行う。髙橋さんは市役所に配属され、環境教育の啓発・広報ツールの制作や、子どもたちや地域住民への環境意識の啓発活動を行った。
Text=工藤美和 写真提供=髙橋震峰さん