山口愛花さん
山口愛花さん

環境教育/2024年度3次隊・神奈川県出身

中学生の頃から国際開発分野や開発途上国で働くことに興味を持つ。2021年4月、立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部入学。JICA海外協力隊に参加するため一時退学(帰国後に復学予定)し、25年5月より環境教育隊員としてバヌアツで活動中。帰国後は、大学院に進学して国際機関で働くのが目標。

協力隊参加のきっかけ

中学2年生の時、住んでいた市の姉妹都市プログラムで韓国に行き、現地学生との交流や、平和についてのスピーチなどを経験した。将来は海外で働き人の役に立ちたいと思うようになり、大学では環境・開発を専攻。卒業前に、自分のその気持ちが本物かどうかを確かめるため、協力隊への参加を決意した。大学で休学可能な期間が最長2年間までで、訓練期間を含めると超過してしまうため大学4年生で一旦退学したが、帰国後は復学を予定している。

公開! 私の派遣国生活〈拡大版〉バヌアツ共和国[大洋州]
①島内の道路はほぼ未舗装で、バスなどもなく、現地の住民はトラックに乗り合って移動するのが一般的 ②ラカトロ市の市場には取れたてのココナッツや野菜などが並ぶ

住んでいるのはどんな町?

83の島から成るバヌアツで、私が赴任しているのは面積が2,041㎢と東京都に匹敵する広さを誇るマレクラ島です。国内2番目の大きな島ですが、まだ多くの地域で電気やガス、水道といったインフラが未整備のため、昔ながらの暮らしをしている人も多くいると聞きます。私の家や配属先があるラカトロ市は島内最大の町ですが、ここもごく小さな村という雰囲気。数軒の店や市場がある“商業の中心地”なので平日は島内各地から来る人々でにぎわうものの、土日には店なども閉まって人影が消えます。同僚や友人・知人ももっぱら郊外の村々にある自宅で過ごしているため、私はよく泊まりに行き、一緒に料理をしたり海水浴を楽しんだりと、現地の暮らしを満喫しています。

人々はとても優しく親切で、かつ自分たちの伝統を大切にして暮らしています。今も黒魔術や呪いといった慣習を信じている人が多くいることも印象的です。

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ラカトロ市の中心地。多くの店が集まり、トラックの発着場でもあることから、島中の人々が訪れる
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休日はリフレッシュのため、海に行くことが多い
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国連パブリック・サービス・デー(※)にちなんだイベントで廃棄物問題について啓発する山口さん

どんな活動をしている?

ラカトロ市は、国内6つの州の一つであるマランパ州の州都に定められていて、行政全般を担う州政府事務所が置かれています。私は廃棄物管理を担当するメンバーの一人として、廃棄物管理計画の策定や、学校や地域コミュニティに向けた環境啓発活動に携わってきました。

現在、マレクラ島ではごく一部の地域でしか行政によるごみ回収が行われておらず、分別もされていません。今後できる予定の新たな最終処分場を長期的に活用していくためにも、分別を導入できればと考えています。今はまだ同僚などと制度基盤を話し合っている段階ですが、うまく進めば残りの任期でごみ拾いキャンペーンなどを含む啓発活動を積極的に展開していきたいです。赴任前に想像していたよりも責任の大きな業務だと思いますが、同時にとてもやりがいを感じています。

※国連パブリック・サービス・デー…国際連合が毎年6月23日に定めている国際デーの一つで、公共サービスが地域に対して有する価値や役割をたたえる日。

平日のスケジュール

                
7:45起床
朝食は自炊かパン
8:00出勤
8:30祈りの時間
バヌアツ人はキリスト教徒が大多数で、始業前には配属先の規則で祈りをささげたり、賛美歌を歌ったりする
11:30ランチタイム
家に帰って昼食と洗濯を済ます。弁当を買って同僚と食べることも
17:00活動終了・帰宅
時間があれば近くの広場で運動したり、同僚らとカヴァを飲みにいったりする
20:30夕食・シャワー
自室で友人との電話や一人の時間を楽しむ
24:00就寝
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同僚らと共に実施したごみ拾いキャンペーンの様子
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冠婚葬祭などで食べられるラップラップは、みんなでバナナの葉の大皿を囲み、大ざっぱに切り分けて手で食べる

どんな食べ物がある?

バヌアツは豊かな自然に恵まれていて、大抵の民家の裏庭には主食となるイモ類や果物が実り、海では魚介類がたくさん取れます。そのため、マレクラ島でもあまり現金を使わず自給自足で暮らす人がかなり多いようです。特別な日には鶏や豚を締めて振る舞う習慣もあり、そうした場に居合わせる中で、命をいただくことの重みを強く意識するようになりました。

現地でよく食べられる伝統料理は「ラップラップ」。すりおろしたイモやバナナ、野菜などをバナナの葉で包み、熱した石と共に地面の穴に入れて蒸し焼きにしたもので、ココナッツミルクをかけて食べます。また、「カヴァ(※)」という伝統的な飲み物があり、泥水のような見た目ですが、リラックス効果があって現地の人がよく飲む嗜好品。その場でカヴァを作って飲ませてくれる“カヴァバー”に同僚と飲みに行くこともあります。

※カヴァ…同名のコショウ科の植物の根を粉砕・水濾しして作る飲み物。鎮静作用があり、日常の嗜好品としての消費のほか、儀礼の際にも飲まれる。


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カヴァはメラネシアからポリネシアにかけて広く飲まれており、バヌアツのものは良質でリラックス効果が強いといわれるが、「何度飲んでも味に慣れません」と山口さん
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ラカトロ市内で地域の女性たちが売っている、通称「お母さん弁当」。蒸しバナナと米、魚などをバナナの葉で包んだ手作り弁当で、山口さんの好物でもある
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弁当売りの女性はパパイヤやバナナなどを切って混ぜたフルーツジュースも売っていて、こちらも山口さんのお気に入り
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自室はワンルームで、扇風機や小型冷蔵庫、キッチンも完備されている。トイレとシャワーは奥の仕切られた小部屋にある

どんな家に住んでいる?

配属先から徒歩2分の場所にある、州政府職員の宿舎に住んでいます。着任初日に大きなゴキブリが6匹出た時は驚愕しましたが、今ではもう慣れました。この建物は、島内では珍しく電気や水道が通っていて水洗トイレとシャワーもありますが、停電や断水は日常茶飯事。最近は1カ月弱にわたって、ラカトロ市周辺の全域で停電が続いたこともありました。水道もいつ止まるかわからないので、戸外の雨水タンクから水をくんできて、バスルームに常にためています。宿舎が高台にあるため、水平線から昇る朝日や満天の星空を望むことができ、自然の美しさを実感する毎日です。

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室内にシャワーはあるが、水しか出ない。「島内にお湯の出る場所はありませんし、週末に訪ねる現地の人の家には水道さえなく、バケツ1杯の水でシャワーを済ませられるようになりました」
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山口さんが利用している自宅近くの雨水タンク

写真提供=山口愛花さん Text=秋山真由美