

フィリピン/養殖/1983年度4次隊・千葉県出身
私はフィリピンのパナイ島に養殖隊員として赴任しました。当時はホテルもアパートもなく、いくつかの民家を訪ねて回ったところ、精米所を営む一家が私を2年間受け入れてくれました。
そこは家畜がたくさんいて、ブタ60匹、イヌ20匹、ニワトリ100羽、ガチョウ50羽、七面鳥10羽くらいが飼育場に暮らしていました。
その中でも記憶に残っているのが七面鳥の強さ。私が群れに近づいたところ、テリトリーを侵しに来たと思ったのか、群れで一番大きい1羽が、普段は薄ピンク色の顔と首の肌を真っ赤に染め、「オホッホッホ~」と低く不気味な鳴き声を響かせながら私をにらみ、敵意むき出しのとても恐ろしい姿を見せました。
私が踵を返して一目散に逃げると、予想以上の速さで、羽をバタバタさせながら不気味な鳴き声で追いかけてくる七面鳥。あっという間に追いつき、ジャンプして羽で私の首筋を思い切りたたいてきました。大きな輪ゴムでしっぺされたような鋭い痛みを今でも思い出します。
一方で、相思相愛の関係になった家畜もいました。犬のシャロンです。食用犬ですが、他の犬が茶色い毛をしている中で、シャロンだけは白い毛で頭はグレー、目の色がブルーでした。そのすてきな見た目とおとなしい性格が愛らしく、活動が終わると会いに行き、「シャロン!」と呼ぶと尻尾を振って走ってきます。私は「僕がいる間だけでも、シャロンを食べないで」とご夫婦にお願いしていました。
娯楽のない島で、温かく受け入れてくれた家主夫婦や動物たちの存在は、活動や生活の励みになりました。

Illustration=牧野良幸 Text=阿部純一(本誌)