椎葉一勲さん

「日本のプロ野球でプレーしたい!」という
ベリーズの若者の夢が実現できるよう支援しました

椎葉一勲さん

ベリーズ/野球/2024年度1次隊・京都府出身

   野球を愛するベリーズの若者たちを支援し、その中の1人が日本のプロ野球でプレーするという夢を実現しました。2024年の赴任当初、配属先である野球連盟は代表者1人のみとまだ小規模で、国内には野球チームや練習場、さらには野球道具を購入できる所もないことがわかりました。そのような環境で、私は何から手をつければよいのか分からず、戸惑いを感じていました。

   ベリーズでは野球は普及していませんが、ソフトボールは盛ん。そこで、私は最大都市ベリーズシティにあるソフトボール場を見に行きました。そこで思いがけず、球場の隅の使われていないスペースで10人ほどの若者たちが野球の練習をしている姿を目にしたのです。うち何人かははだしで、道具はかなり傷んでいました。彼らはテレビなどで見たメジャーリーグ選手などに憧れ、チームも専用の練習場もないのに、毎日、練習しているそうで、私が野球の指導者だと知ると大喜びしてくれました。それからは彼らのサポートが私の主な活動になりました。

JICA Volunteers’ Reports
野球に打ち込んでいる仲間たち。椎葉さんは練習の“サポート”に徹している。「彼らは野球が楽しいから、自主的に練習し上達していきます。それこそスポーツが本来あるべき姿だと思います」

   彼らの中でずば抜けていたのが、デルバート・ハインズ選手です。左投げピッチャーで投球にパワーがあり、体もしなやかで将来性を感じました。漁師として家族を支えている19歳の青年で、毎日、漁の後に潮まみれのTシャツ姿で球場へやって来ます。メディアで見た日本人メジャーリーガーの“礼儀正しい振る舞い”に感銘を受け、「いつか日本でプレーしたい!」という夢を持っていました。

   彼のプレー動画を撮影し、高校球児時代からの親友である元中日ドラゴンズ選手の石川 駿さんに送ったところ、彼も「この子はモノになる!」と確信。私たちはデルバート選手を日本に送るために動き始めました。私は彼の動画をSNSで発信し、石川さんは知人を通じてプロ野球チーム「旭川BeːStars」(※)へ打診してくれました。

   しかし、最大の壁は日本への渡航と滞在に必要な資金でした。私はベリーズのテレビに出演して寄付を呼びかけたり、クラウドファンディングを試そうとしましたが、うまくいきませんでした。そんな中、在ベリーズ日本国大使館主催のパーティーに出席した際、同席していたベリーズの女性に話したところ、「ベリーズの若者のために頑張ってくれてありがとう!私が支援する」と言われました。彼女は企業経営者で、とても幸運な出会いでした。

   25年5月、デルバート選手は旭川BeːStarsに入団し、プロ野球選手として試合出場を果たしました。我流で野球をしてきた彼にとって、日本のプロ野球のレベルは桁違いに高度で、初めは困惑したようです。ともあれ、私もベリーズから試合の様子をテレビ中継で観戦することができましたが、彼が日本の球場に立つ姿を見た瞬間は、胸に迫るものがありました。

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デルバート・ハインズ選手(右)は2026年のシーズンも旭川BeːStarsとの契約が決まり、4月から9月まで日本国内でプレーする予定

   3カ月間の契約期間を満了し、ベリーズに戻った彼は、若者たちに「夢はかなう」というメッセージを伝える存在となり、野球を始める子どもも増えています。デルバート選手が日本でプレーできるよう私が支援したのも、彼にベリーズの野球をリードしていく存在になってほしいからです。

   ベリーズでは貧困など経済的な課題も多くあり、野球を軸として若者たちの“居場所”が生まれることで、非行に走ることなく、彼らの未来が健全で望ましい方向に変わっていくことを願っています。 



※旭川BeːStars…日本野球機構(NPB)に所属しない独立リーグ「北海道ベースボールリーグ(HBL)」に所属するプロ野球チーム。北海道旭川市を拠点とし、地域密着型の野球チームとして活動している。海外から来日した選手が多数プレーしていて、同チームから埼玉西武ライオンズに入団した外国人選手もいる。


Text=新海美保 写真提供=椎葉一勲さん