今月のお悩み語学力不足でうまく意図を伝えられず、
指導の仕方に悩んでいます
(中南米/ソフトボール)

   小学校を巡回して、ソフトボールを教えています。私の派遣国ではソフトボールが普及途上にあるため、まずはどんなスポーツなのか体験してもらうことから始めていますが、まだ赴任したばかりで現地の言葉が拙いこともあり、基礎の基礎から伝えていく上でどうアプローチすればいいのか悩んでいます。

小林先生からのアドバイス言語に依存しないよう、指導の仕方を工夫してみましょう
活動の現場では言葉が多過ぎないことも大切

   海外で活動するにあたって、言葉が伝わらない状況はとても不安でしょう。ですが、スポーツは言語を介さなくても意図を伝えやすい強みがあるので、深刻に悩み過ぎる必要はないように思います。大前提として語学力があるに越したことはありませんが、「走る」「投げる」「跳ぶ」などの基本動作は言語以前の概念ですし、「勝って嬉しい」「負けて悔しい」といった感情も言葉を超えて伝わります。私もサッカー隊員として活動していた当時は「Like this!」「Let’s go!」を連発して動作を見せながら教えていたものですが、赴任したばかりの時期は、デモンストレーション中心に取り組むのは一つの手です。

   また、会話に頼り切らない指導設計をするという考え方もあります。例えば、信州大学の体育科教員を養成する課程の先生の手法で、小学生にボール投げを指導する際、まず紙飛行機を飛ばす遊びから始めるというものを見たことがあります。飛ばす時の動きが投げる動作の土台になるのですが、そうした方法であれば複雑な説明は必要ありませんよね。私が指導したバヌアツのナショナルチームの選手は、シュート練習の時にいくら技術を説明してもドカンドカンとむやみに蹴って満足しているので閉口したのですが、ペットボトルを的にして2チームの対抗戦形式にしたところ、本気で狙って打つようになりました。

   そのように、現地の人が普段している動作などとひも付けたり、特定のスキルに焦点を当ててゲーム化したりすると、言語や文化を超えて理解されやすいわけです。これができる人は途上国の現場では強いと思います。

   そもそも、たとえ語学がよくできたとしても、指導対象の人たちに長々と説明すること自体、考えものでもあります。面と向かってあれこれ言われても頭に残りませんから、短く簡単な言葉でポイントだけ伝えることが肝要なのです。実際、世界レベルのスポーツ指導者は選手とミーティングをする前に、その日は何をどういう順序で選手に話すのかスタッフ間でしっかり検討し、最低限の言葉で伝えるそうです。もちろん端的に話すにも語学力は必要ですが、同時に、語学ができれば万事解決というものでもないのですから、ぜひ自分に適したやり方を見いだせるように試行錯誤してみてください。

今月の先生
小林 勉さん
小林 勉さん

バヌアツ/サッカー/1995年度1次隊・福島県出身

筑波大学卒業後、同大学大学院修士課程修了。協力隊員としてバヌアツで活動し、帰国後は名古屋大学大学院にて国際開発学で博士号取得。信州大学教育学部専任講師、中央大学総合政策学部准教授を経て、2014年より同学部教授。研究と実践の両面から、スポーツを地域・政策・若者・国際協力と結びつけるアプローチを展開。専門は国際協力論、スポーツ社会学、スポーツ政策論。著書に『スポーツで挑む社会貢献』(創文企画)ほか多数。


Text=飯渕一樹(本誌) 写真提供=中央大学広報室