稲垣将也さん

自分にできることを模索し続けた結果、
配属先から「頑張っている」とサプライズ表彰!

稲垣将也さん

ガーナ/コミュニティ開発/2024年度1次隊・奈良県出身

   ガーナの首都アクラの北西約300㎞に位置するアハフォ・アノ・ノース郡の農業局に所属し、農村支援の活動を始めてから1年4カ月がたった昨年12月、赴任後2度目となる「Farmers’ Day(農民の日)」を迎えました。これは例年12月の第1金曜日に設定されている祝日で、この日にちなみ配属先では優秀な農家を表彰するイベントを毎年開催しています。私は主催者側として参加していましたが、400人ほどの参加者の前で突然名前を呼ばれ、「協力隊員としての奮闘と貢献に感謝する」と表彰されたのです!完全なサプライズだったので、少し気恥ずかしさを感じながらも、皆の前で表彰を受けました。翌日のネットニュースでも取り上げられ、街を歩くといろいろな人から「おめでとう!」と声をかけられるので嬉しいやら照れくさいやらで大変でした。

JICA Volunteers’ Reports
表彰を受ける稲垣さん。写真内左は農業局のトップ、右は郡の市町村調整局長

   赴任当初は英語力が不十分で、農業に関しても素人なので配属先の人たちが何をしているのかもわからず、質問することすらできませんでした。要請内容は農家の販路開拓や生産性向上を支援することでしたが、私にあるのはかつて営業職で身につけた交渉スキルのみ。そこで最初はとにかく配属先の初代隊員として人間関係の土台作りと、現地のやり方を学ぶために、同僚たちの仕事にとことん同行しました。「来なくていい」と言われることもありましたが、それでも同行し、どんなにささやかでも役に立てることを探しました。文房具などの道具を常に携帯してすぐに出せるようにしておいたり、化学肥料の荷運びなどの力仕事は率先して行いました。同時に、農家の人々の状況を知るために、チュイ語を猛勉強してアンケートを作り、同僚と一緒に訪ねる先々の農家にチュイ語で聞いて回ることを地道に続けました。その結果「困っていることは?」の回答で一番多かったのが、「肥料代が高過ぎる」ことでした。肥料が買えずに本来3回まくところを1回減らした結果、収量が減るといったことが現場で起きていて、現地で入手できる素材で安価に有機肥料を作れないかと調べ始めたのが、赴任から1年後でした。

   寝る間も惜しんで情報を集めた結果、現地で調達できそうな素材は、鶏ふん、米ぬか、そしてパームヤシの枝を燃やして灰にしたパームアッシュだとわかりました。これらを農家に分けてもらおうと考えたのですが、鶏ふんなどは売り物にもなるため、協力を得るには苦労しました。何軒か訪ねて回った末、可能性のありそうな3軒に粘り強く交渉を重ねるさなかにあったのが、冒頭の嬉しいサプライズ。カウンターパートからは「誰でも表彰するわけではない。これは特別なことだよ」と言われ、この有機肥料を地域の人たちに役立つ形に仕上げようと身が引き締まる思いでした。

JICA Volunteers’ Reports
有機肥料作りを試す稲垣さん。定期的に中身をかき混ぜ微生物を活性化させる「切り返し」作業の様子

   半年間の交渉の後、この3軒の農家が素材の無償提供に協力してくれて有機肥料作りに着手できました。その後、園芸作物分野のJICA専門家としてガーナでSHEP(市場志向型農業振興プロジェクト)に携わる髙林 透さんからもアドバイスを受けながら、試行錯誤の末、完成にこぎ着けました。配属先の試験圃場で近くトウモロコシを育て始めるので、その時にこの肥料を試す予定です。また、私が去った後も有機肥料作りの方法が引き継がれるようマニュアルも作成し、誰でも見られるように配属先の壁に張り出しています。

   最初は何もかもがゼロからのスタートでしたが、任地のガーナ人たち、JICAの専門家やJICA事務所のスタッフは、私が動いた分だけ応えてくれました。自ら積み上げた努力が表彰として返ってきて、私への信頼を象徴してくれている気がします。応援してくれる人たちのためにも、やり残しがないように最後まで頑張りたいと考えています。



Text=池田純子 写真提供=稲垣将也さん