今月のお悩み住民向けに環境関連のワークショップを催していますが、
興味を持って集まってもらうことが難しいです
(アジア/環境教育)

   環境教育隊員として、任地の人たちにごみ分別や生ごみコンポストのことを伝えようと、コミュニティや学校にアプローチしています。以前から役場やNGOなどが環境配慮の重要性について広報を続けているので、住民の理解も一定程度あるはずなのですが、ワークショップを実施すると、同僚や知り合いがわずかに来てくれるだけです。町の住民に広く働きかけるにはどう声がけをすればよいのか、困っています。

若尾先生からのアドバイス現地の人はメリットをシビアに見ているので、
どんな良いことがあるのか具体化するように意識しましょう

   私は隊員時代、グアテマラの農山村で有機肥料の普及や廃油せっけん作りなどに取り組んだので、活動当初からよく人を集めようと試みていました。その時に人が来てくれたのは、同僚の農業普及員が根回しをしてくれていたことに加え、日本人が来るという“物珍しさ”もあったのでしょう。それは活動序盤のスタートダッシュとしては利用するとよいと思うのですが、時間がたてば飽きられて、「またあの日本人が来たけれど、特にメリットはないから参加しなくていいや」となってしまいます。

   本当に関心を持って集まってもらうには、彼らにとってどれだけメリットがあるのか――端的に言えば生活がどれだけ潤うのか、ということをしっかり伝える必要があります。いくら有機肥料を作ろうと呼び掛けても、農民からすれば、化学肥料で野菜が早く育って多く売れたほうが好ましいですから、有機肥料に転換していくら儲かるのか?コストがどの程度浮くのか?といったことを具体的な数字で伝える必要があるわけです。

   実は私も隊員時代にはそうしたアプローチをしておらず、そのせいで人が思うように集まらなかったのだと反省していますが、廃油せっけんは主婦たちに市場価値がわかりやすく、興味を持たれやすかった印象です。具体的なメリットを訴えるために有効なやり方の一つが、住民の日々の暮らしについても数字などの形で“見える化”することです。そして、例えば毎月10ドルの支出のある人に対して「このやり方を取り入れると支出が8ドルに抑えられます」と言えば関心を持ってもらえますよね。

   より短期的・直接的なメリットの提案としては、ワークショップや集会の場で昼食を提供するなど、“ニンジンをぶら下げる”こともよいでしょう。私は現在、日本で地域づくりに関わっていますが、真面目な勉強会では住民は集まりにくいので、やはり参加すること自体が面白そうだと思われるような仕掛けづくりや広報を意識しています。食事まで出すのはお金の力で釣っているようで抵抗を覚えたり、住民の自主性を損なうのではないかと危惧したりするかもしれませんが、イベントで食事を提供したりするのは途上国ではよくある習慣なので、懸念は一旦横に置いておきましょう。そこからスタートして実績を重ねていくことが大切なので、柔軟に考えてみるとよいかと思います。

今月の先生
若尾健太郎さん
若尾健太郎さん

グアテマラ/村落開発普及員/2004年度3次隊・東京都出身

大学卒業後、IT企業を経て協力隊に参加。グアテマラの農山村で活動し、当時発生したハリケーン被害に際しては復興支援のため植林プロジェクトを主導した。帰国後の2008年から群馬県のNPO法人自然塾寺子屋に3年間勤務し、国際協力や農業の分野で経験を積む。また、高崎経済大学大学院の修士課程で地域政策を学び、12年に地元の東京都西東京市で株式会社ユニココを起業。地域づくりの支援やコーディネートなどに取り組む。


Text&Photo=飯渕一樹(本誌)