工藤知子さん
お話しいただいたのは
工藤知子さん

マラウイ/臨床検査技師/1987年度3次隊・新潟県出身

臨床検査技師として5年間勤務した後、協力隊員としてマラウイで活動。帰国後は大学・大学院で開発学と感染症について研究し、2003年からザンビアのHIV・結核対策プロジェクトにJICA専門家として参加。07年に新潟市で「ナミテテ」を開業して取締役・マネージャーを務める。

OB・OGショップファイル
上:定番商品として作り続けているマンダジ。元アフリカ隊員らにも喜ばれるという一品。下:アフリカパンは、定期的に従業員全員でアイデア出しと社内コンテストをして新作を加えている。26年にはバオバブの実の粉末を練り込んだ「バオバブパン」シリーズも発売。実の酸味を感じられる商品で、注目を浴びている

国際協力の道から地元・新潟でのパン作りへ―
パンを通じて“アフリカ”を伝えたい

   工藤知子さんが、同じくOVでパン職人となった夫の工藤 智さん(マラウイ/SE/1988年度3次隊)と開いたベーカリーカフェ。店名は2人が出会ったマラウイの小さな村の名前に由来し、2007年の開業から来年で20周年を迎える。常時100種類余りのパンを販売しており、パンや自家栽培野菜のサラダ・ランチなどを楽しめるカフェを併設している。看板商品はマラウイ時代の同僚に教わったレシピで作る「マンダジ」だ。東アフリカでおやつとして親しまれている揚げパンで、全粒粉を使用しているため栄養価が高く食べ応えもあり、香辛料が利いてスパイシー。「アフリカの“本物”を届けたい」と開店当初から提供している。また、50種類ほどある「アフリカパン」はアフリカをイメージした創作パンで、ドライフルーツやナッツをふんだんに使った力強い味わいが特徴。現地の風物に関連付けた「キリンのおやつ」「カメレオンの涙」「酋長のパン」などの商品名も心をくすぐる。

   協力隊を経てJICA専門家として活動していた工藤さんは、元々は店舗の立ち上げが終わったら国際協力の現場へ戻るつもりでいた。ところが、店で自閉症の子どもと出会い、障害のある人の社会参加の困難さを目の当たりにしたことで、日本における課題に目が向いた。「身近な場所で困っている人に寄り添いたい」との思いから、長らく障害者の雇用を続けており、現在は西アフリカ・トーゴ出身の男性もパン職人として雇っている。「パンを通じてアフリカへの関心を高めてアフリカ的な寛容性や共生の精神を伝えたい。また、利潤追求に偏らず人を主体とする経営の在り方も、世に訴えていきたいです」

   工藤さんの国際協力は、場所と形を変えて今も続いている。

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協力隊時代に知り合い、共に店を切り盛りする工藤さん夫妻
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店舗全体が工藤さん夫妻のデザインによるもので、動物の絵を描いた外壁は遠くからでもよく目立つ。近所の子どもには「キリンのパン屋さん」として知られているという
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店の内装はアフリカの住居をイメージしたこだわりの空間。いつも多種類のパンが並んでいる

Text=油科真弓 写真提供=工藤知子さん