今月のお悩み協力隊の任期終了後も国際協力に関わりたいですが、
何から手を付けるべきでしょうか
(中南米/看護師)

   日本の医療現場での経験を生かして看護師隊員として協力隊に参加し、地方の町で地域医療の改善に取り組んでいます。異文化の中での活動は面白く、漠然と、今後も国際協力の世界に身を置きたいと思っています。ただ、これまで国際系の分野で働いてきたわけでもないので、どのようにキャリアを積んでいけばいいのか悩んでいます。

原田先生からのアドバイス国際業界はプレーヤーが多彩なので、
情報収集を徹底して自分だけの“業界地図”を作りましょう

   国際協力の世界を目指す上で、何より重要なのは情報収集です。簡単に思えますが、意外にそうではありません。例えば大学生の就職活動であれば、すでに就活本がいろいろあって分析しやすい。ところが国際協力業界ではそうした情報がまとまっておらず、能動的に知識を集めなければならないのです。

   その際、そもそもどんなプレーヤーが存在するのかを把握する必要があります。私がアフリカ圏で取り組んできた農業分野を例に取ると、まず欧州などに本部があるような国際NGOと、各国のローカルNGOがあります。農業関連といっても、栄養改善から気候変動まで、NGOによって重点分野も異なるでしょう。公的な国際機関なら、研究や統計に特化したFAO(国連食糧農業機関)、難民など緊急性の高い対象に人道支援を行うWFP(世界食糧計画)、農業金融とそれに伴う開発プログラムを策定するIFAD(国際農業開発基金)などが挙げられます。

   他にも、JICAや金融ファンド、各種開発コンサルティング会社と、「農業に関する国際協力」と一口に言っても実に多くの主体があり、それぞれ特色が異なるわけです。自分がやりたい事はもちろんのこと、各機関・団体の性格もよく理解していなければ、入職してからミスマッチに気付く…という恐れもあります。

   国際協力全般となれば実に多くの関係機関などがありますから、情報を集めて自分用にまとめることは本当に重要なのです。私の場合、実は協力隊に行く前から、いろいろなポストの任期および席が空くタイミングを一覧化し、ライフプランの参考にしていました。そこまでマニアックにやらないとしても、せっかく途上国にいるのですから、業界の現場で働く人に直接話を聞いたりして、泥臭く情報収集するといいと思います。

   作り上げた“業界地図”が役立つのは、帰国後の頃ばかりではありません。人生の中では結婚など大きな変化が起きますし、歳を重ねるうちに、体力面などの条件が変わることもあります。私自身も父になったことを機に、従来とは違う形で途上国の農家支援に関わる道を考えるようになりました。現在は、日本を拠点に海外農家を支援する企業とご縁があり、短期出張をベースに民間の立場で農業や気候変動に携わることで、経験を生かしつつ、ライフステージに合った形でキャリアの可能性を広げられています。その時々の自身に適した進路へ転換する際も、自らしっかり作った地図を携えていれば、迷うことはないはずです。

今月の先生
原田拓朗さん
原田拓朗さん

セネガル/コミュニティ開発/2014年度3次隊・
静岡県出身

大学で経済学を学び、日本国内のメーカーに就職。その後、協力隊員としてセネガルに赴任し、手工業の職人などに向けた能力向上・所得向上のための活動を行う。帰国後はJICAの業務で仏語圏アフリカでの業務を経験したほか、パリ政治学院で修士号取得。2020年にJPO派遣制度でIFAD職員として再びセネガルへ。その後、JICA専門家や開発コンサルティング会社の起業などを経て、現在は自然由来のカーボンクレジット生成と農家支援を行う民間企業に勤務中。


Text=飯渕一樹(本誌) 写真提供=原田拓朗さん