クロストーク 訓練期間の振り返り

7月1日、2026年度1次隊の修了式が駒ヶ根・二本松の両訓練所で執り行われた。
このたび、来賓として出席した一般社団法人 協力隊を育てる会の明石要一会長と、訓練を修了した隊員との懇談を実施。
訓練所を訪ねるのが初めてという明石会長に、隊員たちが訓練の様子や各自の意気込みを語った。

クロストーク 訓練期間の振り返り

参加した隊員

滝口ひおさんホンジュラス/環境教育
筒井愛紗さんベナン/コミュニティ開発
安里佳憲さんボリビア/小学校教育

左から、明石会長、滝口さん、筒井さん、安里さん

─それぞれの“きっかけ”で協力隊に参加した面々

滝口私は高校卒業時にコロナ禍が始まり、大学時代はやりたいことが何もできない状況でした。一度は地元で就職しましたが、“人生なんて きっかけひとつ”という協力隊の広告がまさにきっかけとなり、仕事をすっぱり辞めて応募しました。

明石ずいぶん思い切りましたね(笑)。

安里私は沖縄県出身で、糸満市の特別支援学校から現職教員として参加しました。20代前半の時、ボリビアに沖縄系移民がつくった“コロニアオキナワ”という町があると知って興味を持ち、県から同地に派遣されたOVの例を参考に、まずは沖縄の特別支援学校で経験を積むことに。“沖縄とコロニアオキナワの懸け橋”になりたいという気持ちを10年来持ち続けてきました。

明石今、日本では特別支援教育が見直され始めているので、その現場で働く方が活躍するのはうれしいことです。

安里発語のできない子や教室を飛び出してしまう子もいることから楽しく飽きずに学べる教育環境づくりを意識してきましたが、これはいわば教育の原点だと思います。

明石いいですね。きっとその視点が、言葉や文化の違う派遣国の現場でも役に立ちますよ。

筒井私は幼少期から外国語に興味があり、滝口さんと同じく大学でコロナ禍に大きく影響を受けました。1年間休学してカナダとフランスに留学し、農業に魅せられたことをきっかけに、農業と気候変動の関わりを学んできました。新卒でまっさらだからこそ見えるものがあると信じて頑張りたいです。

─「グローカルプログラム(派遣前型)」(以下、GP)を経た派遣前訓練について

明石筒井さんには佐賀県でのGP期間中に現地でお会いしましたが、2カ月間を経てどうでしたか?

筒井本当に貴重な体験でした。佐賀の皆さんとは今も連絡を取り合っていて、訓練でつらい時は励まされたりと、第二の家族ができたかのようです。訓練所は語学などのインプットが多いですが、GPは自ら働き掛けて人と協働する体験だったので、赴任後の活動にも生きそうだと改めて感じています。

滝口私は手芸が得意なんですが、それがGPで活動した岩手県遠野市の方々に好評で、5回ほど関連イベントをさせてもらいました。単に趣味だと思っていたものを生かす体験は、自分にできる事柄から発想を広げることの学びになりました。
ホンジュラスでの活動はごみのポイ捨て防止などですが、訓練中にごみで楽器を作ってみると語学の先生にも同期たちにもウケたので、まず自分自身が面白いと思えることを通じて働き掛けるのもいいのかなと考えています。

明石楽しげなことに転換する発想がいいですね。そういう思考の仕方はどこで身に付けたんですか?

滝口ずっと赴任後はどう活動しようかと考えていたんですが、私は駒ヶ根でもずっとギターを弾いていたほど楽器が好きで、特に子どもは楽しければ参加してくれるとも思ったので、このアイデアに至りました。

安里私は現職教員なのでGPという選択肢はなかったですが、沖縄にいた期間が長いので、そういった日本の他地域を知る経験はしてみたかったですね。ただ、この駒ヶ根に日本各地から集まった同期たちといろいろな話をすることも、本当に楽しい時間でした。

─73日間の訓練所生活を振り返って…

滝口私、実は訓練所生活が結構しんどかったです(笑)。語学の勉強は楽しかったんですが、134人もいると人間関係がいろいろあって大変でした。ただ、さまざまな人と関わることで、自分の世界が少し広がったとも思います。

筒井私も滝口さんに似て、訓練所生活のストレスは感じました。特にGPと訓練所の環境のギャップを強く感じ、かつ人が多くてストレスフルでもある中で、どうすれば自分が極力ストレスを少なくして過ごせるのか知る機会になりました。

安里私は門限が厳しい!と思っていました(笑)。それで少し鬱屈していた時、関西出身の同期がよく話し掛けてくれたんですが、彼のように人の気分を察して声を掛けたりする力は学ばなければと感じました。
それから、訓練期間中に三線を練習して、語学クラスで「島人ぬ宝」を披露できたのは思い出深いです。沖縄を離れて、改めて地元文化を見つめ直す機会にもなりました。

明石これから任地へ行った時、三線も含めて日本の良い文化を伝えてもらえるといいですね。

安里コロニアオキナワには日系1世の方がまだいて、三線やエイサーなども根付いているんです。私は若年世代への日本語教育や教室の掃除などについても教えることを求められているので、道徳も取り入れつつ日本の良さを伝えていきたいです。
帰国後に復職する特別支援学校では、授業中の生徒の集中力が続きにくいので、音楽やダンスで盛り上げる工夫が大切です。ボリビアはカーニバルなどダンス文化が盛んなので、日本の子たちに体で異文化を感じてもらえるような何かを持ち帰りたいと思っています。

明石滝口さんのごみを使った楽器の活動とコラボレーションしたりすると面白いですよね。

滝口そうですね、缶から三線も作れるはずです。

安里訓練所生活を振り返って印象的なのが、訓練生間ではやっていたドッジボールです。さまざまな年齢層の面々が一様に童心に帰り、夢中でプレーしている姿を見て「ああ、これが協力隊なんだな」と感じ入りました。

筒井一人一人を見ると年代もバックグラウンドも多様でバラバラな印象もありますが、国際協力を志して来たという共通点が皆にあって、一つの目標にベクトルがそろっていることが結束感を強めているんだと感じます。

明石一見バラバラでも、同じミッションの下で自然にお互いが集まってくるという関係性は素晴らしいですね。
これから任地へ行く皆さんには、「健康と安全」を意識しながら「平和の種まき」をしてほしい。かつ、ぜひ人を育ててほしいですね。すぐに成果が出なくても種をまいていれば、それがいつか発芽するかもしれない──そして、皆さんのことを覚えている誰かが現地に根を張ってくれるでしょう。良い人間関係があってこそ国同士の付き合いが長く続きますから、それをお願いしたいと思います。

クロストーク

Text&Photo=飯渕一樹(本誌)