只野杏奈さん

広島出身OVが日系移住地からの千羽鶴を奉納
パラグアイと日本で平和の環流を

只野杏奈さん

パラグアイ/青少年活動/2022年度4次隊・広島県出身

JICA Volunteers’ Reports
平和記念公園の「原爆の子の像」の前での黙とう後、奉納を実施。中央2人がトヨトシ大使夫妻、右端が只野杏奈さん、左端はJICA中国の菅原美奈子所長

   8月5日(水)、JICA中国主催の式典、「環ぐる平和の想い~つなぐ未来~」で、パラグアイの日系移住地の方々が折った千羽鶴を、広島市の平和記念公園に奉納しました。これは私が隊員時代に任地のピラポ市を含む4つの町で「平和展」を実施した際に折ってもらったもので、その数は実に合計5,000羽。うち4,000羽を奉納する運びとなり、当日は日系2世でもあるマリオ・マサユキ・トヨトシ駐日パラグアイ共和国特命全権大使のご臨席の下、直々に千羽鶴を手に取って奉納していただきました。

   ピラポ市は戦後に日系移民が開拓した町で、近隣には広島県人が中心となって造ったラパス市(スペイン語で平和の意)もあります。日本との関わりも深いこの地で、必ずや平和展を行いたいと考えていました。ただ、日本語学校や幼稚園での活動に試行錯誤する中で時間はどんどん過ぎ、同僚らと話す中で平和展開催にこぎ着けたのは、着任から1年余りたった2024年8月。初めは学校の授業で平和教育をするイメージだったのですが、町の方々がもっと地域を巻き込んだイベントにしようと言ってくれて、3日間にわたるパネル展示や原爆に関する講演、ビデオ放映などを含む一大イベントになりました。折り鶴コーナーのほか、寄せ書きやディスカッションなど、来場者が主体的に参加できる工夫もしました。

JICA Volunteers’ Reports
上:千羽鶴を納めるトヨトシ大使。「私も90年前に海を渡った日本人の子孫として、この場で皆様と平和への祈りをささげられることを名誉に思います。この折り鶴は先人たちの感謝であり、平和を願う子どもたちの祈りであり、未来への希望そのものです」と語った。下:平和展で折り鶴を折る子どもたち。非日系パラグアイ人の子も参加していて、日系の子らが折り方を教えた

   ピラポでは、まだ存命の1世の世代でも「幼少期に日本を離れたので“ヒロシマ”のことをよく知らない」というケースが少なくありません。平和展で改めて衝撃を受けて涙ぐむ人や、学びになったとのコメントをくださる人もいて、開催してよかったと思います。

   任地での平和展が成功裏に終わって「やり遂げた!」と感じていたところ、配属先の校長先生からの薦めでラパス市でも開催することになり、同じく近隣にあるエンカルナシオン市や首都アスンシオン市の日本人会からも声掛けを頂きました。最後の第4回は帰国1週間前にギリギリで開催。配属先の理解とご縁で念願の活動に全力で取り組めて、本当にありがたかったです。

   また、一連の開催の中、広島をルーツとする日系人の方々から、広島での被爆後に海外へ移住し、移住先で白血病などにより亡くなった方もいると伺いました。「在外被爆者」として苦労した方々のことを私は知らなかったので、新たな学びを得る機会にもなりました。

   今回、パラグアイからの千羽鶴をJICA中国などのサポートで奉納できて感無量です。平和展の活動が1つの区切りを迎えたことでうれしい半面、寂しさも感じますが、「皆が平和への願いを込めて一羽一羽折ってくれた千羽鶴を無事届けたよ!」と現地に伝えたいです。広島から平和への思いがパラグアイに届き、パラグアイの人々の祈りがこもった千羽鶴の形で広島へと環流する…そんな活動に関わってくれた方々に感謝するとともに、このつながりが途切れず未来へと受け継がれていくことを願っています。


Text & Photo=飯渕一樹(本誌)  写真提供=只野杏奈さん